安田レイが新作で描いた「愛の形」、10周年を経て刻んだ新たなスタート

─「Turn the Page」は唯一、安田さんが作詞作曲されていますが、他の2曲とずいぶんイメージが違いますね。まずキーが低いし。

たしかに。このキーがたぶんいちばんナチュラルに何も考えずに出てくる、自分の中で響きやすいエリアなのかなと思います。

─すごくそう感じました。全然頑張っていない……と言うと語弊がありますけど(笑)。

まさにそうです。「歌うぞ! ファイティングポーズ!」じゃなくて、力を抜いて部屋で鼻歌を口ずさんでいたら曲になっちゃったみたいな、そんなテンションで歌いたかったので。

─ビートもR&Bっぽい、まさにレイドバックした感じで、僕は個人的な好みで言うと3曲の中でこれがいちばん好きでした。

本当ですか? ありがとうございます。この曲は去年の7月にBillboard Live TOKYOでやった10周年記念ライブで初披露した曲で、いつもサポートしてくれいてるクレハリュウイチさん(以下、くれぴょん)と一緒に作ったんですよ。コーラスをいっぱい足して足して、フェイクも何パターンも録って選んでいたら、「これ、重ねたら面白いんじゃない?」って話になって、重ねる予定がなかったフェイクを重ねてみたら「あ~! ぶつかって(不協和音になって)ない! すごい! まんま使える!」みたいな。そういう感じで実験をしつつ、遊びながらやったので、いろんな発見がありました。

─個人的に “そんな似たもの同士が/出会うのがまた面白いね” のメロディが面白かったです。自由にフロウしている感じ。

ここはくれぴょんも「いやー、俺には絶対浮かばないメロだわ」って言ってくれたりして、すごく楽しかったです。

─くれぴょんさんのアレンジは、ずっと一緒にライブをやっていることもあるのか、お互い理解が深い感じがしますね。

すごいです。天才です。ライブのときもずっとわたしの呼吸を見てくれているんですよ。いつもライブだとけっこう自由にやっちゃうんですけど、ちょっとした動きとかを絶対に見逃さないんですよ。後で映像を見返すと、鍵盤じゃなくてずっとわたしを見て「どこ? どこ? あ、ここ!」みたいなのをずっとやってくれていて(笑)。だからストレスフリーすぎて、すごいです。天才って呼んでますね、くれぴょんのことは。

─あえて比較はしませんけども、とても歌いやすい……。

もう一番です(笑)。「最近これを聴いてるんだよね」「これめっちゃよくない?」みたいな音楽の情報交換を常にしているので、わたしがどういうサウンドが好きかも全部把握してくれているんです。あと、わたしの伝わりづらい説明を全部キャッチしてくれるんですよね。この曲、間奏で雰囲気がガラッと変わるじゃないですか。けっこう神秘的なゾーンがあるんですけど、そこも「人生いろんなことあって苦しいけどさ、たまにどっか旅したときに、崖の上から山とか朝日とか見て涙が出るくらい感動するときあるじゃん。それを音にしてみたい」って言って(笑)、「えーっ! が、頑張ってみるわ」って言って生み出してくれたんですよ。すごくないですか? ほんと天才です、彼は。

─たまに他のアーティストからもそういうお話を聞きますが、彼のように抽象的なイメージを具体的な音に置き換えるのが得意な人は、リクエストが抽象的であればあるほどむしろ燃えるのかも。

まさにそれを言われました。「そういうリクエストいっぱいほしい。イメージとか雰囲気とか、なんでもいいから」みたいな。それであんなきれいな音ができたので、すごいです。ライブのリハとかでも、バンドメンバーのみんなにけっこう抽象的なことを言ってしまうんですよ。「ギターソロ? 海の底にゆ~っくり時間をかけて落ちていく石みたいな」とか言って、絶対に誰も「ちょっとよくわかんない」とか言わないで全部キャッチしてやってくれるんですよ(笑)。本当、みんな天才です!

Rolling Stone Japan 編集部

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