The Novembersが語る、セルフタイトルの「新章」とこの4人でバンドをやることの意味

Photo by Daiki Miura

 
The Novembersの約3年半ぶりのアルバム『The Novembers』はアルバムリリース前に行ったツアー会場で先行販売された。その形態には、メンバーの「初めて曲を体験してもらうなら、目の前でバンドそのものを感じてほしい」という思いが込められている。ライブはアルバムと同様、バンドのルーツのひとつである90年代オルタナティブロック色の強い「BOY」からスタートし、オーディエンスはいち早くThe Novembersの新章を体験した。

アルバムには他に、シンセポップナンバー「Morning Sun」やファニーなギターフレーズが軽やかなグルーヴを宿す「James Dean」、1種類のリフを多用するセッションを展開させて作った「GAME」などが収められ、新たな試みがふんだんに聴こえる。アンサンブルとメロディと言葉が完璧に手を取り合い、美しく高め合う瞬間に何度も息を呑むセルフタイトルに相応しい作品だ。メンバー全員インタビューをお届けする。


左から吉木諒祐(Dr)、小林祐介(Vo, Gt)、ケンゴマツモト(Gt)、高松浩史(Ba) Photo by Daiki Miura

ーまず、先日ファイナルを迎えたツアーが素晴らしかったです。ニューアルバム「The Novembers」のリリース前にツアーをやって、そこでアルバムを先行販売する試みにはどんな思いがあったんでしょう?

小林祐介(Vo, Gt):11月にツアーをやることが決まった時点で、次のアルバムが完成するのかどうかわからなかったんですよね。でも、「作れるかわからないじゃなくて、作るんだよ」っていうムードがバンドにあって、「ツアーまでにアルバムができているはず」って決めて、リリースツアーっていう立てつけで発表してしまいました。イレギュラーな形だし、今後同じことをやるかどうか悩んでしまうぐらいハードルは高かったんですが、ツアーのチケットを買って知らない曲に対してベットしてくれるファンからの信頼感みたいなものを感じましたし、ファンとの絆が可視化されたようなツアーでした。


ニューアルバム『The Novembers』のダイジェスト動画には12月1日に東京・Spotify O-EASTにて行われたワンマンツアー「Tour - The Novembers -」ファイナル公演の映像が使用されている

ー小林さんが終盤のMCで「いつも『いい未来に行こう』って言ってたけど、良い未来に連れてきてもらった。一緒に良い景色を見ましょう」と言っていたのがすごく印象的でした。

小林:そう、本来だったら僕らがみんなをいい未来に導いていきたい立場なわけですが、コロナ禍を経て、アルバムがずっと作れなくて、「自分たちはこれでいいんだろうか?」って思ったり、いまいち突き抜けられない時間を過ごして、そのまま何も作れずにツアーで新曲が演奏できなかった未来もあったんですよね。でも、「久しぶりの新曲だ」って盛り上がってるファンがいる景色を想像すると、その都度手の動かし方や思考がどんどん変わっていきました。「ただ自分たちの表現したいものを作ろう」っていうモチベーションだけだったら、アルバムは絶対完成しなかったなと思うんですよ。永遠に理想を求め続けてしまうので。締め切りがあることとファンの存在によって、こっちの時間軸というか、世界線に連れてきてもらえた。

ーライブの手応えがあったからこそ、あの言葉を言えたところもありますよね。

小林:そうですね。何にせよ、いい未来に来れたと思ったので感謝を伝えたかったんです。僕たちが同じ時代を生きているっていうことはこんなにもホットで、自己完結せずに実りの多いものなんだなっていう感動がありました。ここに来れなかった自分たちのことを思い浮かべると怖くなります。

ー他の皆さんはライブをやってみて、どんなことを思いましたか?

高松浩史(Ba):ファンの皆さんが今この瞬間を楽しもうとしてくれていることがすごく感じ取れて嬉しかったです。一緒にライブを作ってる感覚がありました。

吉木諒祐(Dr):曲作りする時も、ライブを意識するところはありました。そして、出来上がった音源に対して僕はすごく手ごたえがありました。やっぱりライブでやってる姿が想像がついたし。でも実際、ツアー初日の名古屋公演が始まるまでは不安もあったんですが、演奏が始まった時のお客さんの反応を見て、「大丈夫だった」って思いました。

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