The Novembersが語る、セルフタイトルの「新章」とこの4人でバンドをやることの意味

 
この4人でロックバンドをやることの意味

ーさっき小林さんは「新しいことをやろうとはあまり意識してなかった」って言ってましたけど、「GAME」はライブでもハンドマイクでラップ的なボーカルを披露するとか、大胆な新しさもある作品だと思ったんですよね。

小林:いろいろな可能性やアイディアを制限しなかったところはあるかもしれないですね。昔は「自分自身のトレンドになってることを詰め込みたい」っていう作家的なエゴが強くあったんですが、それがなくなったのがすごく良かったというか。自分が作ったフレーズやサウンドより、メンバーが目の前で演奏してくれた時の力の宿り方を体験できた。タイパとかコスパが重要な概念になってると言われる世の中で、わざわざ4人が集まってバンドをやることの醍醐味を考えた時に、「俺たちはやっぱり出会って良かったんだな」とか「今日この瞬間にレコーディングをやってやっぱり良かったじゃん」っていう気持ちで日常を満たしていきたいと思いました。それがどんどん拡大していって、「ファンと会えて良かった」とか「こんな仲間がいて良かった」とか「こんな風に取材ができて良かった」という風に、自分たちにまつわる感謝みたいなもの、生きてる醍醐味みたいなものにフォーカスできていったのかもしれない。

ーだからこそセルフタイトルなんでしょうし。

小林:結果そうなりました。今何かを自分たちが宣言する時に、 特定のテーマやスローガンを用意するよりかは、「自分たちはここにいるよ」っていうことをライブとしても作品としても表現したかったんです。


Photo by Daiki Miura

ー「Jamse Dean」も軽やかなノリの良さがあって新しいなと思いました。

小林:この曲調でタイトルが「Jamse Dean」だったら面白いなって思って。でも、そこまで今作は考えて作ってないんですよね。「ノリしかない」みたいな感じもあったかもしれない(笑)。洒落たフレーズだったり、「かっこよくしたい」っていうエゴが見えることをやめようっていうか。

吉木:スタジオでちょっと洒落たことをやると、小林くんから「それだと難しい曲になるからやめ!」ってよく言われてました(笑)。

小林:「俺はこんなこともできるんだぜ」っていうのって表現者にとって大事なモチベーションだと思うんですが、複雑さとか洒落たことが入って一瞬思考が挟まれることがすごくストレスに感じる瞬間があったんです。竹を割ったようなシンプルさや、伝わりやすい口調やフィーリングを求めました。「ノリだけで曲を作っちゃダメ」「自覚的に意味のあるものだけを残したい」っていうのが元々の僕の考え方だったんですけど、「後から意味は生まれるからOK」って思うことが今回多かったかもしれないです。

吉木:「もうやっちゃえ、やっちゃえ」みたいなムードがありましたね。あと、今回メロディと歌詞がすごくハマってる印象があって。

ケンゴ:わかる。

吉木:前の作品は歌詞がメロディから外れたり、少し字余りで詰め込んでる感じがあったけど、今作はそれが全然なくて、メロディと言葉の一体感がすごくあるのも、今小林くんが言ったことと繋がるんだろうなと思いました。

ケンゴ:言葉とメロディが分かれてるんじゃなくて、しっかり合わさってひとつのものになってる感覚がすごくある。

ーそうですよね。「James Dean」の遊び心溢れる歌詞は昔だったら書かなかっただろうなと思いましたし。

ケンゴ:「アッカンベーって単語が来たか!」と思いました(笑)。

小林:(笑)アッカンベーはわかりやすい言葉ですからね。

高松:昔の僕たちって曲をかっこよくしようとしてたんです。それは悪いことじゃないんですけど、今回は趣味性に走るのは良くないよねっていう雰囲気がありました。僕は「James Dean」はシンプル過ぎて作ってる時は不安だったんですが、完成してみたら全然The Novembersぽい曲になっていたので、新しい感覚がありました。


Photo by Daiki Miura

ー先日放送された「関ジャム」で、川谷絵音さんがThe Novembersから多大な影響を受けたと話していましたが、下の世代のアーティストに影響を与えてる実感はありますか?

小林:あれはありがたかったですね。例えば、「コピバンしてました」とか「好きです」って言ってくれるバンドマンはたくさんいるんですが、自分が誰かに影響を与えた実感は正直あまりなくて。だから、絵音くんや米津(玄師)くんが自分たちのいないところでああいうことを言ってくれるのはただのご褒美だと捉えています。期待やリスペクトみたいなものに恥じないような自分たちでいないとダメだなっていう気持ちが強いです。背筋が伸びるというか。

ーでも、The Novembersって恥じることのない道を歩き続けてきたからこそ信頼を集めていて、濃いファンが多くいるんじゃないでしょうか。

小林:そうかもしれないです。さっき高松が言った趣味性みたいなところから、自分自身も解き放たれて、「もっと広い世界を見るべきだ」とか「目の前にいる人の存在をちゃんと感じるべきだ」っていう気持ちが今すごく強いです。おそらくこれまで僕らがやってきたことの一番の良さって、ある種の作為のなさや、ただ純粋に音楽だけを作ってるっていう、その“ただ”っていう部分だと思うんです。誰に何を言われても、自分たちが「こうだ」と思ったものをただ残してきただけというか。それってすごくラッキーなことだと思うんです。スタッフの方とかに「もっとこうしないとダメだよ」とか「こうした方が売れるよ」っていうことを言われて、それに翻弄されたり、壊れてしまうバンドもいるわけで。僕らは自由にやってこれたのでラッキーだと思う一方で、いろいろな人がデビュー前に気付いているであろう当たり前の感情に気付くのにここまで時間がかかってしまったっていう気持ちもあります。

さっき高松が「ライブはみんなで作るもの」って言ってましたけど、昔はそういうことは「綺麗ごと言いやがって!」っていう気持ちがあったんですが、今は「そうだよな」って思う。これまでの自分たちを大事にした上で、どんな風に世界とコミュニケーションを取っていくのかが今の一番の関心ごとというか。それはどんな音楽を作るかっていうことも含めてですけど。行動原理が「どんな風に自分たちは幸せになれるんだろう」とか「目の前の誰かを幸せにできるんだろう」っていうことに変わりつつある気がします。

ーMCが「一緒にいい景色を見ましょう」っていう言葉に言葉に変わったのはまさにそういうことですよね。

小林:そうですね。「もっといい景色を見たいんだよ!」っていう気持ちと、自分たちがそういう存在になった時にファンも喜んでくれるかもしれないから、「みんなで一緒にすごく大きな船で夢みたいな場所に行けたらいいな」っていう気持ちがあるというか。「誰かと一緒に幸せになりたい」という気持ちが強い。


Photo by Daiki Miura

ーケンゴさんは何かマインドの変化はありますか?

ケンゴ:めちゃめちゃかっこよくなりたいんですよね。

ーそれは昔から変わってないですよね(笑)。

ケンゴ:そう。でも今は「あえて」とか「逆に」とかがなく、清々しいぐらいど真ん中の「これは手が届かない!」っていうぐらいかっこよくなりたいんです。

吉木:(笑)。

ケンゴ:今までって、「これをやってるからかっこいい」「これにこだわってるからかっこいい」っていう気持ちがあったんですけど、今は「俺だからかっこいい」っていうマインドでやってます。

高松:僕はライブに対する照れみたいものがなくなりましたね。だから、単純に毎回のライブが楽しいです。僕が好きなアーティストってみんな堂々としてるので、「堂々としなきゃな。だってこんなかっこいいことやってるんだから」って思ったんですよね。

ケンゴ:うん。僕も楽しいですね。

ー吉木さんはどうですか?

吉木:小林くんの言った通りだと思います。アルバムを作る前、小林くんとたまに電話してたんですけど、「ロックバンドがやりたい」「この4人でバンドサウンドがやりたい」って言った記憶があります。この4人でお客さんとたくさんコミュニケーションをとって、もっと大きなところにみんなで行きたいですね。


Photo by Daiki Miura




The Novembers
『The Novembers』
発売中
再生・購入:https://virginmusic.lnk.to/TheNovembers_AL

収録曲
1.BOY
2.Seaside
3.誰も知らない
4.かたちあるもの、ぼくらをたばねて
5.November
6.GAME
7.James Dean
8.Cashmere
9.Morning Sun
10.抱き合うように

FEVER Presents 「UЯA The Novembers」
2023年12月26日(火)
東京・新代田FEVER *Sold Out

「PLAY VOL.140」
出演:The Novembers、betcover!!
2024年3月4日 東京・渋谷クラブクアトロ
詳細:https://eplus.jp/sf/detail/4001530001-P0030001

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