明石在住の19歳MONONOKEが語る「東京」を描いた理由、変化した都会へのイメージ

─MONONOKEさんの高校時代って、コロナ禍ど真ん中でしたよね。そういう時代背景もあのアルバムには反映されている感じがしました。

そうですね。僕の高校3年間はもうずっとコロナ。やりたいことも全然できてない年代なので、そういうのも相まって、常日頃から非常に焦りみたいなものはあったと思いますね。明日何があるかわからない感覚というか、すごく身近な高校生の話題でいうと、総合体育大会(インターハイ)ってあるじゃないですか。それがコロナでなくなったり、一生懸命そのために頑張ってきたのにそれがなくなったりして、でも怒りや不安の矛先を誰に向けたらいいかもわからない。そういうのを身近で感じてきた身ではあるので、表現に出ていることはあるんじゃないのかなと思います。

―そこから世の中も大きく変わって、元に戻ってきた部分もありますけど、そうなったときに未来や生き方に対する考え方は変わりましたか?

変わりましたね。最初、コロナ禍が明けたというか、コロナのムードが落ち着いてきたなと思ったときは、それはそれで迷いがあったんです。自分はそのムードをインプットして作品に昇華していたんですけど、それが落ち着いてきて、インプットしてきたものがなくなったというか底を尽きそうだなって思って、それはそれで違うものをインプットして昇華していかないといけないなと思ったんです。そのときにしかない焦燥感みたいなものをずっと作品にしてきたので。でも逆にいえば、それがなくなったからこそ前向きになったというのもあるかもしれないですね。どこか陰のある曲たちが多かったんですけど、それを振り切るみたいな曲もできてきたりしていますし。

―「トーキョー・ジャーニー」もシビアな曲ではありますけど、でも突破していくパワーやエネルギーが感じられるんですよね。そこがアルバムとの違いかなと思います。

新しい顔を見せるっていうのができたのかなと思います。「トーキョー・ジャーニー」とアルバムのギャップというか。

―ちなみに、あの『Supply/Demand』(需要と供給)というタイトルはどういう意味合いでつけたものなんですか?

それがアルバムの根本的なコンセプトだったんです。僕は本当に音楽が好きだし、音楽のビジネス的な部分にもすごく興味があって、そういうのも調べて勉強していたんです。世の中の音楽シーンを見ていると、リスナーの需要に応える、つまりリスナーが聴きたいというか、いわゆるポップスに振った曲もあれば、供給側、アーティストがやりたい音楽、悪くいうと趣味的な音楽というか、自分のためにあるような音楽っていうものもあって、そのバランスをうまく取ってアルバムにしたいなって思ったんですよね。それで『Supply/Demand』というタイトルにしました。

―作品を聴いていてもそれは強く感じるんですけど、MONONOKEさんは常にそういう視点で物事を見ている感じがしますよね。そもそも10代で曲を作るときって、いわゆる魂の叫びみたいな、「俺はこれがやりたいんだ」という「サプライ」側の思いが先に立つ人が多いように思うんです。でもMONONOKEさんの場合はそこで同時にちゃんと「デマンド」のほうも見ている。そこがユニークだなと思います。

ああ。アルバムを作るときも、まずコンセプトがあって、そこから曲作りを始めていったんです。だから本当にパズルのように、コンセプトに当てはめるようにして曲を作っていったんですよね。だから一連で聴いてもきれいな流れになっていると思うし、需要と供給の共存みたいなものが、アルバムの中で成り立っているのかなとは思います。

―作品作りではもちろんですけど、生きる上でもそうやって俯瞰してバランスを考えるタイプの人なのかなと思ったんですが。

そうですね。先が見通せていないとすごく不安になるタイプで。だからどういう曲が作りたいのか、どういうアルバムを作りたいのかっていうのをまず最初に考えて作るっていうのはありますね。

―資料を拝見したら、すでに4枚目のアルバムまでの構想があると書いてあってびっくりしたんですけど、それもそういうことなんですよね。

ファーストができてからさらにやりたいことがあって、それを叶えるためにはアルバムが3枚分いるなと思ったんです。それを今、着々と準備してる感じなんですけど。そういうことをやろうという自信にもなったのがファーストアルバムだったので、あれがなかったら4枚も考えていなかったと思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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