考えてみれば、モトリー・クルーは2015年末の時点でひとたび自らの歴史にピリオドを打っているわけで、その時点で彼らの“未来”は閉ざされていた。結果、彼らはその後、綺麗ごとを言ってドラマティックな復活劇を仕立て上げるのではなく、自らの宣言を破棄して何食わぬ顔で活動を続けてきたわけだが、そうした不敵さこそ彼らが「The World’s Most Notorious Rock Band(世界で最も悪名高いロック・バンド)」と称されている所以だろうし(彼らのオフィシャルサイトにはその呼称が記されている)、ある種の大人げなさがその魅力の一部であることは否定しようもない。そして今現在の彼らには、未来がある。オープニング時、LEDスクリーン上にまばゆく映し出されていたのは「The Future Is Ours(未来は俺たちのもの)」という言葉だった。しかもニッキー・シックスのステージ上での発言の中には「これからの10年」という言葉がさりげなく盛り込まれていた。ミック・マーズの不在によりバンド内最年長となった彼は1958年生まれだが、10年後には現在のKISSやエアロスミスくらいの年齢になっている。そして今回のモトリー・クルーのステージを観たならば、彼らに“次のディケイド”があるのは当然のことだと思えてくる。