モトリー・クルー/デフ・レパードが示した「未来」の可能性 増田勇一が考察

グレイテスト・ヒッツ的な演奏メニューにとどまらないショウ

ただ、そんな中でもデフ・レパードが最新作から計3曲を披露していたこと、モトリー・クルーがビートルズからビースティ・ボーイズに至るまでのカバーで構成されたロックンロール・メドレーを盛り込みながら、いわゆるグレイテスト・ヒッツ的な演奏メニューにとどまらないショウを展開していたことは、付け加えておきたい。もちろんモトリー・クルーの側も、新作発表を経ていたならばそこからの楽曲を演奏していたことだろう。彼らの場合は、オリジナル・ギタリストであるミック・マーズを欠き、二代目ギタリストとしてジョン5を迎えた現体制での日本初上陸となったわけだが、ロブ・ゾンビやマリリン・マンソンなどとの活動歴で知られる彼のプレイは、あくまで各々の原曲のイメージを重視しながらも硬質なスピード感を伴ったもので、楽曲中での過度な自己主張はなく(その代わりギター・ソロの場面では三味線の演奏まで盛り込んでいたが)、ミックの演奏に思い入れの強いファンにも好感を持てるものだったに違いない。この先のモトリー・クルーの動向については不透明な部分も多いが、今回のステージを目撃したオーディエンスの中には、彼を擁する体制での新曲を早く聴いてみたいと感じた人たちも少なくなかったはずだ。そう言い切れるのは、筆者自身もそのひとりだからである。




モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)


モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)


モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)


モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)

考えてみれば、モトリー・クルーは2015年末の時点でひとたび自らの歴史にピリオドを打っているわけで、その時点で彼らの“未来”は閉ざされていた。結果、彼らはその後、綺麗ごとを言ってドラマティックな復活劇を仕立て上げるのではなく、自らの宣言を破棄して何食わぬ顔で活動を続けてきたわけだが、そうした不敵さこそ彼らが「The World’s Most Notorious Rock Band(世界で最も悪名高いロック・バンド)」と称されている所以だろうし(彼らのオフィシャルサイトにはその呼称が記されている)、ある種の大人げなさがその魅力の一部であることは否定しようもない。そして今現在の彼らには、未来がある。オープニング時、LEDスクリーン上にまばゆく映し出されていたのは「The Future Is Ours(未来は俺たちのもの)」という言葉だった。しかもニッキー・シックスのステージ上での発言の中には「これからの10年」という言葉がさりげなく盛り込まれていた。ミック・マーズの不在によりバンド内最年長となった彼は1958年生まれだが、10年後には現在のKISSやエアロスミスくらいの年齢になっている。そして今回のモトリー・クルーのステージを観たならば、彼らに“次のディケイド”があるのは当然のことだと思えてくる。


モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)

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