エヴァネッセンスが語る『Fallen』20年目の真実、女性がロックに参加するための闘い

 
ニューメタル再評価に思うこと

―「My Immortal」はストリングスバージョンが収録されていますね。これは、いつ頃レコーディングされたものなのでしょうか。

エイミー:「My Immortal」のレコーディング過程にはちょっと面白いストーリーがあって。あれはすごく古い曲で、書いた時の私たちはまだティーンエイジャーだった。使われたギアも安物で、深夜にレコーディングした。私の父親が当時レコーディングスタジオで働いていて、彼はラジオDJだったから、誰もいない深夜に彼の職場を1時間だけ使わせてもらえたの。でもピアノも本物じゃなかったし、サウンド的にはあまり良いものではなかった。私は17歳とか18歳だったからボーカルも良く言えば純粋だったけど、質はそこまで高くなかったということ。私のベストじゃなかったことは確か。でもレーベルは、あの曲をすごく気に入ってくれた。あの曲がレコード契約のきっかけになったと言っても良いくらい。それで、アルバムリリースの際に私たちはまたレコーディングしなおしたの。デヴィッド・キャンベル(オーケストラ・アレンジャー)のストリングスを入れて、ちゃんとしたスタジオで、もっと美しいバージョンをレコーディングした。私の声も成長していたし、結果、すごく良いものが出来上がった。で、その最後にバンドが入ってくるのが “バンドバージョン”で、私が好きなのはこっち。でもレーベルはデモにしがみついて、アルバムに収録するのはデモの方がいいって言い始めた。私は、それは絶対にやめて! この美しいスタジオレコーディングをアルバムから外すわけにはいかない!って言ったの。でも彼らは、“デモにはマジックがあるから”って言ってきて、また私たちはぶつかったというわけ。そして、妥協案として「My Immortal」を2つのバージョンでリリースすることになって、そのデモの方がメインバージョンとしてアルバムに収録された。それに私は、本当に美しいストリングスと本物のピアノ、そしてより良いボーカルだけのバージョンも作りたくて。そして数年前についにそれを制作した、ということ。ぜひみんなとシェアしたくて、今回収録することにしたの。

―『SYNTHESIS』で大きく取り入れた例もある通り、エヴァネッセンスの音楽にストリングスは欠かせない要素ですよね。あなたは普段プライベートでも、ストリングスが使われているクラシカルな音楽がお好きなのでしょうか。

エイミー:私は幼少期からずっとビョークが好きで憧れていたの。デビュー作からずっとファンだけど、2ndアルバム(『Post』)ではストリングスやオーケストラの要素が増え、『Homogenic』は私がそれまでに聴いたアルバムの中で一番のお気に入りのレコードになった。というのも、私はコンテンポラリーな音楽を好きになる前、モーツァルトやベートーヴェン、映画音楽の作曲家たちに影響を受けていたから。私が一番最初に音楽に熱くなったのは、映画『アマデウス』を見た時だった。あれを見て、私も狂気的な音楽の天才になりたい!って思った。あの作品の中のモーツァルトは、すごくドラマチックで熱意に溢れてたから。私はその時12歳で、その後すぐにピアノとクラシック音楽のレッスンを受け始め、それが私の核になった。だからある意味、エヴァネッセンスはそういった音楽が進化した形ということ。そしてその後、私はヘヴィミュージックやオルタナロックにハマり始めたの。メタリカ、サウンドガーデン、スマッシング・パンプキンズといった、そういう90年代の素晴らしい音楽。私たちは、この2つの極端に異なるものの調和を発見していくような感じで音楽を作ってきた。意識したというよりは、自然の流れでそういう音楽を作るようになって、私たちにとってはそれが理にかなっていた。もちろん今は、他にもそういった音楽を作っているバンドが世界中に存在していることは知ってる。でも当時の私たちにとっては、それが完全にオリジナルな音楽に感じられたから。




―それから20年が経ち、今また世の中でニューメタルがリバイバルしている印象です。今年の「Rock Am Ring」では、パパ・ローチのジャコビー・シャディックスと共演する一幕もあり話題になりましたね。

エイミー:あの共演は特別な体験だった。すごく長いフェスティバルで、私たちのパフォーマンスは真夜中の2時だったの。フェスだったからかなり時間が押していて、しかも「Bring Me To Life」は最後に演奏する曲だったからかなり待ち時間が長かったんだけど、ジャコビーは夜遅くまで残ってくれて、エネルギー全開で参加してくれた。

ニューメタルっていう言葉の定義が、私にはよくわからなくて。私たちがその枠の中に収められてしまっているような気がして、その言葉に関しては苦労した。私たちはニューメタルの枠を超えていると思いたい。でも、今の質問であなたが言いたいことはわかる。それは、ノスタルジアの要素と少し関係があるのかもしれないね。今の時代、皆あのアグレッシブで駆り立てられるような音楽を懐かしんでるんだと思う。今って、エンターテインメントの消費がかなり個人的なものになっていて、皆自分が追いかけたいものを手に入れることができるじゃない? 世の中にはパーソナライズされたものが散らばっているでしょ? 皆が同じMTVにチャンネルを合わせて、一緒にバラエティに富んだ音楽を見て楽しむという時代じゃない。ポップが好きな人はポップだけ、ラップが好きな人はラップだけ、ロックが好きな人はロックだけを追い、それだけを見つける。それはそれでいいんだけど、多分今、こっちから追わなくても向こうからロックやメタルが攻めてくるような時代を皆が恋しがってるんじゃないかな? この前も誰かと『TRL』っていうMTVの番組の話をしてたんだけど、バックストリート・ボーイズとKornが同じ番組に出るって今では想像できないでしょ? 信じられないよね? 今、皆があの頃を思い出すような気持ちでいるんだと思う。



―昨年、「Bring Me To Life」がアメリカのiTunesチャートで突如1位に浮上しましたよね。様々な憶測が飛び交いましたが、実際はどういった背景があったのでしょうか?

エイミー:それは私にも全然わからなくて(笑)。私たちがやってきたツアーが理由なんじゃないかって言ってる人がいて、それが本当だったらいいんだけど。ここ数年は、バンド結成直後の時みたいにずっとツアーを続けてきたから。つい2週間前も南米でパフォーマンスしたばかりだし、2年間ずっと世界中をハードに回ってきたの。その最中にそれが起こったから、もしかしたらライブの成果なのかもしれない。

―なぜ「Bring Me To Life」はそこまでの普遍性を獲得できたのでしょうね。

エイミー:その理由は、私だけじゃなく誰にもわからないでしょう。私たちの最初の曲であり、かつリリース当時のインパクトが強かったことは確か。初めて何か美味しいものを食べた時の感動ってあるじゃない?そして、人はまたその初めての味に戻りたくなる。「Bring Me To Life」はそんな感じなのかも。それに、この曲は完璧なフェス向けの曲でもある。みんなこの曲を知っているから。

Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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