エヴァネッセンスが語る『Fallen』20年目の真実、女性がロックに参加するための闘い

Photo by Frank Veronsky

 
今年のサマーソニックで来日し進化し続けるバンドの姿を提示したエヴァネッセンス(Evanescence)が、デビュー・アルバム『Fallen』発売20周年のデラックス盤をリリースした。エイミー・リーのボーカルのみで録られた「Bring Me to Life」のデモバージョンをはじめ、「My Immortal」のストリングスバージョンも収録している。以前より「Bring Me to Life」はレーベルの意向によって男性ボーカルを入れられたことが明らかにされてきたが、当時のシーンにおける女性ミュージシャンの境遇、その中でエイミー・リーが果たしてきた功績は改めて注目されるべきだろう。ニューメタルのリバイバルも起きる中、メンバーチェンジを経ながらもバンドを牽引し続けているエイミー・リーに話を訊いた。



―今回のデラックス版は『Fallen』リリース20周年を記念しているとのことですが、企画の構想はどのように進められたのでしょうか?

エイミー:この節目を記念して、ファンのために何かしたいと思ったの。私たちはこのクレイジーで素晴らしい20年間の道のりを一緒に歩んできた。そして、その始まりの全ては『Fallen』だったから、何もせずにこの年を越すわけにはいかなかった。でも2017年に『SYNTHESIS』のプロジェクトで既にこれまでの曲をオーケストラ、エレクトロニカにアレンジしたから、そういうのは今回はやりたくなくて。そうではなく、今回は世界中の多くの人たちと繋がっているという事実をもっと称賛して、それを保存し、高揚させるようなことをやりたかった。そこで、とにかく本当に素晴らしいリマスターを作るという方向で行くことにしたの。さらに、インターネットでまだ出回っていないようなボーナストラックも追加することにした。「My Immortal」の美しいバージョンも入っているし、すごくクールで、楽しくて、面白い作品が出来上がったと思う。

―リマスターにあたって過去の自分たちの楽曲、埋もれていた音源を改めて聴き直したと思いますが、いかがでしたか?

エイミー:『Fallen』のデモを聴くのは本当に久しぶりだった。多分あのアルバムが発売されて以来だったと思う。「Bring Me Life」は何度もデモを聴いたから全部覚えているけど、他の曲の一部は“そういえばこんな部分あったな”みたいに、作ったことすら覚えてなかったの(笑)。歌詞もそう。“この歌詞、最初はこうだったけどこんな風に変えたんだった”とか、曲について忘れていたことが結構あった。


Photo by Frank Veronsky

―「Bring Me to Life」のデモバージョンも収録されています。この曲は、当時レーベルが無理やり男性ボーカルを加えたんですよね? なぜレーベルは男性のパートを入れたがっていたのでしょうか。

エイミー:ユニークすぎたから。当時は、女性がロックに参加するということがあまり一般的ではなくて、そういうバンドはすごく少なかった。特に、ヘヴィミュージックだったっていうのもあったし、そういった音楽と女性っていうコンビネーションは普通じゃなかったの。それで、メインストリームに食い込むにはどうしたらいいかと考え始めたとき、レーベルはそこを不安に感じたんだろうね。それって多くの人たちが犯してしまう過ちだと思う。人々にとって馴染みのあるものに縛られなくてもいいのに。私自身が好きなアーティストはみんな、他の何かと同じに聴こえないような人たちばかりだった。自分らしいサウンドを持ったアーティストばかり。何か既にあるものに続こうとか、ナンバーワンになった人たちが何をやってるとかに関係なく活動しているバンドが私は好きだから。ポーティスヘッドもそうだし。だから、あの時はレーベルに強く立ち向かった。彼らが私たちに望んでいたのは、男性ボーカリストをバンドに加え、全ての曲にその人を参加させることだった。だから私たちは、そんなことするくらいなら帰る!って言って、目を潤ませながらアーカンソーに戻ったってわけ。あれにはかなり打ちのめされたね。そして数週間後に彼らから電話があって、「もし一曲だけゲストボーカルを入れてくれたらそれでいい」と言われた。映画『デアデビル』に曲を提供するクールなチャンスもあるし、一曲だけゲスト・ボーカルを入れてくれたら妥協するって。それで、私たちのアルバムには他にも沢山のクールな曲があったし、一曲だけならということでゲストボーカルを入れることにした。

―バンド内でも、男性ボーカルを入れることについて意見の対立はあったんですか?

エイミー:私が一番熱心に反対していたのは確か(笑)。でも、ちょっとした話し合いはあったけど、3人が大きく対立するってことはなかった。




―デモバージョンにはギターソロが入っていることにも驚きました。これはどういった経緯でなくなったのでしょうか?

エイミー:ギターソロは、ブリッジがない時にやるものなの(笑)。だから、デモの時点ではまだブリッジがなかったからあのギターソロを入れてたというわけ。で、ラップを入れる話が出てあの隙間が埋まった。「Bring Me To Life」のクールなところは、2つのブリッジがあるところだと思う。男性と女性の行き来から始まって、エヴァネッセンスではお馴染みの大きなブリッジが来る。そこがすごくユニークだと思うし、新しいひねりが加わって、まるで映画を見ているような展開になるところが私は好き。

―当時のニューメタルのトレンドにおいてはギターソロが避けられていたかと思います。あなたは、今このギターソロが入ったバージョンを改めて聴いてみてどのような感想を持ちますか?

エイミー:正直、あのギターソロを弾いたギタリストとはもう19年くらい話をしてないのよね(笑)。だから、彼のギターソロを聴いて良い気持ちがしたわけではなかった。私にとってはそれほどエキサイティングなギターソロではなくて(笑)。

Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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