ニルヴァーナ『In Utero』30周年 チェロ奏者が初めて明かす参加の経緯、制作の舞台裏

知られざるレコーディング秘話

—シェイリーさんは、「All Apologies」と「Dumb」を最初に聴いた一握りの人間ということですね。そのときの感想を覚えていますか? それとも、ご自身の演奏に集中していた?

シェイリー:「Dumb」を聴いている最中にカートが入ってきたのを覚えています。彼のほうを見て「とっても素敵な曲ですね」と言いました。変なことを言う女だな、と思われたかもしれませんが、「ありがとう」と答えてくれました。

—「All Apologies」のレコーディングはどうでしたか?

シェイリー:「All Apologies」に関しては、面白いエピソードがあって。スティーヴは、どうにかしてチェロを使わせないようにしようと、あの手この手でカートを説得していたんです……。変でしょう? この曲でチェロは使わないほうがいい、と何度も言っていました。それを聞いて私は「ふん、あなたはマルチトラックレコーダーがあるからいいわよね。私がレコーディングしたチェロの音をいつでもカットできるんだから」と心の中で嫌味を言ったのを覚えています。でも、最終的にカートと私の意見が通ったので、「All Apologies」でもチェロを弾くことになりました。それも、ぶっつけ本番で。曲を聴いたのは1回だけでしたが、いくつかアイデアがあったので、即興で弾きはじめました。最終的には、バンドと一緒にジャムったときのテイクが採用されたと思います。その後、カートが唸り声のようなチェロの重低音を気に入り、「しばらくの間、それを続けて」と言われたので、カートの演奏に合わせて弾きました。でも、一部でノイズのような音も入れています。チェロでそういう音を出すのが好きなんです。曲の終わりに聴こえる、何かがきしむような高音は、私のチェロの音です。




—シェイリーさんのチェロの音は、左チャンネルからずっと聴こえてきます。それもアドリブだったんですね。

シェイリー:たぶん、3回くらいしか通しで演奏しなかったと思います。いまとなっては、申し訳ない気持ちでいっぱいです。もう少し、時間をかければよかった……きれいな音が出せるように、もう少し努力すればよかった、と。聴いてみるとかなり荒削りですから。

—「All Apologies」と「Dumb」のほかに、「Marigold」という曲でもチェロを弾いています。ニルヴァーナの歴史においても重要な作品ですね。デイヴ・グロールが書いたこの曲は、「Heart-Shaped Box」のB面曲としてリリースされたのですから。

シェイリー:そうですね。「Marigold」のレコーディングのときにデイヴがスタジオに来ました。ちょうどその場に私がいたので、「チェロ入れてみない?」という流れになったのだと思います。


Translated by Shoko Natori

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