XLミドルトン、モダンファンクの伝道師が語るLAシーンの熱気と日本勢へのリスペクト

注目する新進ラッパー、日本のモダンファンク

―昨年リリースしたアルバム『Chrome Springs Eternal』はインスト作品ですが、あなたのディスコグラフィの中ではソロでのインスト作品はそう多くはないですよね。

XL:なかったからこそ、『Chrome Springs Eternal』を出したかったんだ。ずっとインストのアルバム、ビートシーンであるような「ビートテープ」を出したいといつも思っていたんだ。僕のアーカイブには、『Chrome Springs Eternal』をあと数作品出すのに十分なトラックが保管されているよ。だから、今のところこれが唯一のインストゥルメンタルアルバムだけど、今後もリリースし続けるつもりだね。



―DJ・フレッシュ(DJ.Fresh)との制作も行っていますが、彼との出会いについて教えてください。

XL:彼との出会いは、彼が僕の曲をサンプリングしてくれたのがきっかけだったね。繋がりを持てる素晴らしい機会だと感じたし、一緒にアルバム『The Fonk Vibes』を出せて本当に良かった。DJ・フレッシュがカレンシーと出した『The Tonite Show with Curren$y」のプロジェクトで、「Funny Money」を共同プロデュースしたりもしたよ。

―最新作はザッキー・フォース・ファンクとのコラボアルバムですが、彼との出会いのきっかけはなんでしたか?

XL:一緒にモーファンク・レコーズを始めたエディ・ファンクスターを通じて彼と知り合ったんだ。エディとのコラボ曲を作っていた頃に、エディとマイク・ガオがプロデュースした「Don't Fake The Funk」という曲を聴いたのがきっかけだね。それでエディにザッキーを誘おうと言って、名曲「Press Play」が完成したんだ。

―ザッキー・フォース・ファンクとのアルバムのコンセプトや、どういうものを目指した作品なのかを教えてください。

XL:ずっとザッキー・フォース・ファンクのフルアルバムをプロデュースしたいと思っていたんだ。彼のアルバムには、複数のプロデューサーが参加していた。プロジェクト全体を一人のプロデューサーが担当するというのは「昔ながらのやり方」だと思われるかもしれないけど、僕のプロデュースだけでザッキーのアルバムを作ることが、オーディエンスが聴きたがっているものだと感じたんだ。反響はとても大きかったから、これが最後のコラボレーションアルバムにならないと確信しているよ。

―ザッキー・フォース・ファンクのどんなところが好きですか?

XL:彼は自分のやり方で音楽をやっている。いつも「ラップの仕方も、ビートの作り方も、歌い方もわからないけど、オリジナルのスタイルは持っている」と言っているんだ。彼が「Don't Fake The Funk」と言っていることは、そういうことだと思う。彼は自分の感性を人に共有することを全く恐れない。彼の話を聞くと、彼がラップしているのか、歌っているのか、それともこれまでにやったことのない他の第三のことをしているのかわからなくなるくらいだよ。



―モーファンク・レコーズに長く所属しているモニークアについては、どんなところに惹かれましたか?

XL:モニークアと僕はLAの同じ地域、パサデナの出身なんだ。この街にはそこで育たなければ知らないことが沢山あって、僕たちには共通点があったんだよね。一緒に仕事をし始めた時がちょうど僕がブギー・ファンクについて本格的に勉強していた頃だったんだけど、彼女の声はそのサウンドに対する僕のビジョンを実現するのに最適だと思ったんだ。僕の制作にインスピレーションを与えた音楽は、彼女が聴いて育った音楽でもあるんだよね。だから、とても自然に制作してこれているよ。

―最近のラッパーでプロデュースしてみたいラッパーはいますか?

XL:ドレッティ・フランクス(Dretti Franks)というテキサス出身のアーティストが最高だね。彼は間違いなく、南部と西海岸の90年代ラップスタイルを継承していると思う。アキーム・アリ(Akeem Ali)とかもピンプな雰囲気を持っていて格好良い。

オクラホマ州タルサでは新しいアーティストの動きが活発で、最前線にいるのはダイヤル・トーン(Dial Tone)とステフ・サイモン(Steph Simon)かな。次にヒップホップファンが新しいラップの才能を探して注目し始めるのはタルサかもしれないと感じているよ。

―以前Milk Talkのリミックスを制作していたり、今度リリースするコンピレーションにもMilk Talkの曲を収録していますよね。Milk Talkのどういった部分に惹かれましたか?

XL:彼らのやることは全て楽しい風変わりさがある。でも、常に非常にうまく制作されているから、馬鹿げているように見えることがないんだよね。Milk Talkの二人は何百キロも離れて住んでいるんだけど、彼らの音楽を聴いていると、そんなことは決して分からないくらい最高な仕上がりの音楽を制作しているね。

―あなたがSpotifyでキュレーションしているモダンファンクのプレイリストにCHAIの「PARA PARA」が入っていて驚きました。

XL:友人でDJ仲間のチャンテック(Chungtech)がその曲を教えてくれたんだ。最高にモダンなファンク&モダンなシティポップチューンだと思うよ。

―今気になっている日本のアーティストはほかにいますか?

XL:G.RINAやKzyboost、MALIYAも本当にヤバい。脇田もなりも素晴らしいね。




―今回来日にあわせてIITIGHTと共に日本のプロデューサーのビートに乗ったEPを制作しましたが、T-GROOVEさんのことは以前から好きだったとインタビューで読みました。今回一緒に制作してみていかがでしたか?

XL:そうなんだ。IITIGHTと一緒に「The II Tight EP」というプロジェクトをリリースするよ。これは、日本の色々なプロデューサーのビートで僕がラップするものなんだ。僕はずっとT-GROOVEとコラボレーションしたいと思っていたんだけど、彼は僕と同じようにモダンなディスコやファンクを沢山やっているから、僕たちの最初のコラボレーションがヒップホップになったのはびっくりだったね。それが音楽の面白さで、作品がどうなるかすごく楽しみだよ。

―久々の来日ですが、楽しみにしていることはありますか?

XL:2019年以来日本に行っていないから、本当に久しぶりだよ! 何年も会っていなかった日本のみんなと一緒に楽しめることが本当に楽しみだし、ライブでパフォーマンスできることが楽しみだね。それと、レコードを掘るのが本当に楽しみ!

僕はパートナーのカイスターと一緒に「東京ラブソング」というパーティーを毎月LAでやっていて、そこではシティポップとモダンな日本のファンク&ソウルだけをプレイしているんだ。そこでプレイできるような宝物を持ち帰っていきたいと思っているよ。

―今後のリリース予定について、言える範囲で教えてください。

XL:ダンスミュージックでは、ソウル・クラップ・レコーズ(Soul Clap Records)から出る『XL Middleton Presents: New Directions in Funk Vol​.​1』というタイトルのコンピレーションをキュレーションしたところだね。モダンなファンクの世界とダンスミュージック、ハウスミュージックのコラボになってるいよ。音楽的に言えば、モダンファンクとハウスはすでに「従兄弟」だと思うから、これらのジャンルがさらに融合することを期待しているよ。

それとは別に、次のモニークアのアルバムと僕の次のソロアルバム『Tap Water II』を制作しているよ。あと、近いうちにMilk Talkの新しいリミックスと、The Jack Moves & Saucy Ladyのリミックスをリリースする予定だね。ザッキーと僕のもすぐに次のアルバムの制作に取り掛かることになっているよ。




「IITIGHT MUSIC PRESENTS XL MIDDLETON JAPAN TOUR 2023」
"EPIC NIGHT"
2023年10月27日(金)町田 CLASSIX
"STEELO NIGHT"
2023年10月28日(土)渋谷 DESEO
詳細:http://www.2tight-shibuya.jp/shopdetail/000000007893/


XL Middleton
『The II Tight EP』
※イベント会場で先行販売、各種プラットフォームでの配信は11月頃を予定

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