ザ・ローリング・ストーンズが語る、新作『Hackney Diamonds』知られざる制作秘話

 
タイトルの意味、未来への挑戦

アルバム制作の過程で最も大変な作業の一つが、タイトルの選定だ。「山ほどアイディアを出したが、これといったタイトルが出てこなかった。もう我慢の限界だった」とミックは強い口調で振り返る。そんな時、ミックの友人で画家・彫刻家のマーク・クインが「Hackney diamonds」とタイトルを付けた一連の写真を見せてくれた。「ハックニー(Hackney)は、ロンドンにある地区の名前だ。土曜の夜に盛り上がった勢いで車のフロントガラスを叩き割ると、ガラスの破片が地面に飛び散ってキラキラ輝いて見えるだろう。それが“ハックニー・ダイヤモンズ(Hackney diamonds)”さ。ロニーとキースにアイディアを送ると、キースから“いいね、これで行こう”ということになった。“ああ、やっと決まったよ”という感じだった」と振り返るミックの声には、当時の安堵の気持ちが籠もっていた。

最終的に『Hackney Diamonds』には、全12曲が収録された。誰が証言するかによって数字は前後するが、バンドは23曲から29曲をレコーディングしたという。つまり次のアルバムを作ろうと思えば、素材はいくらでもあるということだ。ミックによると、彼らの中で温めている曲の中には、社会的なメッセージを込めた作品もあるという。「全てはストーンズの音楽という世界観の中にある」とミックは言う。「俺たちの中でも整理できている訳ではない。未発表曲の中には、(サウンドやスタイルが)ストーンズらしからぬものもある」とミックは明かす。アンドリューは、眠っている数々の楽曲にいつか光を当てたいと望んでいる。「俺にとってはバットマンのようなヒーローさ。ストーンズがまたトレードマークの舌を出す時に、俺も関われたら最高だ」とアンドリューは言う。

ミックは今回のニューアルバムが、過去の作品では見せなかったバンドの姿を、どのように表現してくれると期待しているのだろうか? 「このアルバムこそ、“今”の俺たちを表現した“ザ・ストーンズ”さ」とミックは言う。「“今年”のストーンズと言ってもいいかもしれない。最高の作品になってくれることを願いながら作った。“まあまあ”の出来にはしたくなかった。俺の望みは叶ったと思う」。

「このアルバムには、チャーリー・ワッツとストーンズの歴史へのトリビュートという側面がある。それから、俺たちに残された未来への挑戦という意味も込められている」とキースは語る。とはいえ、レコーディングのプロセスが曖昧だったためか、キースは今なお作品の解釈を続けている。バンドが前に新曲を出してからかなりの時間が経っており、キースはいつも新鮮な気持ちで臨めるという。「俺は一番の新参者さ」とキースは笑う。「だんだんと慣れていくんだ。“ストーンズの新しいアルバムが出たぞ”という感じで、初めて聴いてみたが、まだ評価を決めかねているのさ」。

それでもキースは、ツアー中に曲が成長していくのを楽しみにしている。「誰かにアクシデントが起きない限り、来年はツアーに出ていても不思議ではない」。

最終的にキースは、ストーンズが今なおロックンロールを続けられている理由を理解した。何がモチベーションになっているか問われたキースは「他の誰ができるって言うのさ?」と答えた。「ストーンズにできないことは、他の誰にもできないのさ」。

From Rolling Stone US.




ザ・ローリング・ストーンズ
『Hackney Diamonds』
2023年10月20日(金)リリース
国内盤全4形態で発売
ボーナス・トラック1曲収録/英文解説翻訳付/歌詞対訳付/SHM-CD仕様
予約:https://umj.lnk.to/RS_HackneyDiamonds

①CD(デジパック仕様)
②CD(ジュエルケース仕様)
③CD+ブルーレイ
④1LP(直輸入仕様/限定盤)

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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