ザ・ローリング・ストーンズが語る、新作『Hackney Diamonds』知られざる制作秘話

 
ビル・ワイマン、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョンも共演

『Hackney Diamonds』には、バンドの膨大な曲のストックの中から、チャーリー・ワッツも参加して2019年頃にレコーディングした「Mess It Up」と「Live by the Sword」を選んで収録した。「俺たちは非常にたくさんの曲のネタをストックしている。そこから1枚のアルバムを作るために選び出すだけでも至難の業さ」とキースは言う。プロデューサーのアンドリュー・ワットが、「Live by the Sword」にビル・ワイマンを起用しないかと提案した。そこで早速、ミックがビルへ電話した。「今でも弾いているかい? チャーリーが叩いた曲を一緒にやらないか」との誘いを、90年代初頭にバンドを離れたベーシストは、快諾した。「本当にワクワクした」とロンは、『Some Girls』当時のラインナップの復活を喜んだ。「ストーンズならではのリズムセクションだから、他の曲とは一味違うんだ」とミックも言う。

「ミックが連絡してきて、チャーリーのドラムをフィーチャーしたニューアルバム用の曲で弾いてくれって言うんだ。もちろんOKしたよ」とビルは、ローリングストーン誌の取材に答えている。「天国のチャーリーと一緒に演奏できるなんて、素晴らしい体験だった。本当に大切な友人を失って、あらためて寂しさを感じる」。

「ミックと一緒にベースとドラムのパートだけを抜き出してチェックしてみたが、とてもエモーショナルで、あの感動は決して忘れられない」とアンドリューは言う。「チャーリーのストレートなドラムとビルの強烈なスイングのおかげで、アルバムの中で最も“60年代らしい”曲に仕上がった」。

ビルのカメオ参加を除き、その他のレコーディング作業はキース、ロン、アンドリューの3人を中心に進められた。プロデューサーのアンドリューによると、長年バンドでベースを担当してきたダリル・ジョーンズは別のツアーに参加するため、レコーディング・セッションに参加できない時期もあったという。そこに現れたのは、バンドの古くからの友人で、たまたまベースが上手な人物だった。ミックの思い付きでスタジオに誘われたバンドの旧友だが、アンドリューとは、ロサンゼルスの別プロジェクトで既に仕事をした経験があった。その伝説の人物こそ、ポール・マッカートニーだった。「ポールと一緒に歌ったことはあるが、彼の演奏で歌った経験はなかった」とミックは言う。「『Depending on You』のようなバラード曲がいいか、それとも別の曲がいいか」と迷うミックに対してアンドリューは、「パンクな曲『Bite My Head Off』をやってみてもらいましょう」と提案した。ポールは、自分に何のプレッシャーもなくバンドとして演奏できることを、とても楽しんでいるようだったという。事実「ポールは、まるで長年一緒にやってきた仲間のようにバンドに馴染んで、本当に楽しそうだった。とてもしっくり来たよ」とミックは証言した。

ポールはロンに「一緒にスタジオに入る日が来るなんて、信じられない」と言って喜んだ。「ローリング・ストーンズと共演するという夢が叶ったよ。そして、僕が紹介したアンドリューをプロデューサーとして採用してもらったのも素晴らしい」と語るポールは、まるでおもちゃ屋に連れて行ってもらった子どものようだったという。ロンが明かしたところによると、ポールとはもう一曲共演していて、また別の機会にリリースされる予定だという。

エルトン・ジョンは歌に参加することなく、まるでセッション・プレーヤーの如く「Get Close」と「Live by the Sword」の2曲でブギウギ・ピアノを披露した。ジョンがそれほど積極的に参加してくれるとは期待していなかったため、ミックも驚いた。エルトンは、心から楽しんでいた。「元々セッション・ミュージシャンだったエルトンは、ピアノを弾くのが大好きだ」とアンドリューは証言する。「誰もがローリング・ストーンズのファンなのさ。ポールと同じく、エルトンもまた“俺はローリング・ストーンズと共演したんだぞ”と鼻高々だった」。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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