ザ・ローリング・ストーンズが語る、新作『Hackney Diamonds』知られざる制作秘話

 
スティーヴィー・ワンダーとレディー・ガガの貢献

レコーディングには、ゲストも招いている。バンドの旧友でストーンズと並んで伝説的な存在のスティーヴィー・ワンダーは、ゴスペル調の「Sweet Sounds of Heaven」に独特の雰囲気を吹き込んだ。自分の指にスティーヴィー・ワンダーのタトゥーを入れているアンドリューは、1972年にストーンズと一緒にツアーを回ったスティーヴィーこそが、「Sweet Sounds of Heaven」にフィットすると確信していた。「ファンの一人として、スティーヴィー・ワンダーがストーンズの曲に参加しているのを目にするなんて、どんなにクールなことかわかるかい?」とアンドリューは得意げに言う。



レコーディング前にスティーヴィーとストーンズのメンバーは、昔話に花を咲かせた。スティーヴィーは、ストーンズとのツアーで盛り上がったエネルギーそのままにスタジオ入りし、「Superstition」をレコーディングしたことを明かした。それから全員で「Satisfaction」をジャズ・バージョンやレゲエ・バージョンでセッションした後で、本番に入った。スティーヴィーは「〜Heaven」で、グランド・ピアノ、フェンダー・ローズ・ピアノ、モーグ・ベースを弾いている。ストーンズはスティーヴィーのベースラインを、『Sticky Fingers』の「I Got the Blues」を彷彿させる熱狂のホーンセクションに置き換えた。

「僕が参加した曲には、人々が集まってリズムに乗って歓喜するような雰囲気が必要だと感じた」とスティーヴィーは言う。さらにスティーヴィーは、チャーリー・ワッツに捧げたこの曲にとても感動したという。「僕にとっては“グッバイ”ではなく、“ハロー”という気持ちだ」。

「スタジオでのスティーヴィーを見て、とにかく感動した」とロンは言う。「シンセサイザー、モーグ、クラビネット、グランド・ピアノを操りながら醸し出すスティーヴィーの楽しい雰囲気は、バンド全体に大いなるインスピレーションを与えてくれた」。

「スティーヴィーが弾くゴスペルは曲を活き活きとさせ、作品をレベルアップしてくれた」とミックは言う。「俺たちはただ“ワォ”と感動するだけだった」。


(左から)レディー・ガガ、アンドリュー・ワット、スティーヴィー・ワンダー(Photo by CHRIS POLK/VARIETY/PENSKE MEDIA/GETTY IMAGES; JEFF KRAVITZ/FILMMAGIC; LESTER COHEN/GETTY IMAGES)

レディー・ガガは、スティーヴィーとバンドがレコーディングしていたスタジオへ、ちょっと挨拶に立ち寄りたいとミックに連絡してきた。「彼女はスタジオへ入ってくると、膝を抱えて床に座り込んだ」とミックは振り返る。ちょうどバンドは、アルバムに収録する「Sweet Sounds of Heaven」のセッションの最中だった。「誰かが彼女にマイクを渡すと、彼女は曲に合わせてハミングし始めた」。

ガガによる即興だったが、ミックは気に入った。「彼女は床に座ったまま、曲を聴いてすぐに歌い始めた」とロンは証言する。ミックが「立って一緒にやろう。ちゃんとしたコーラスに仕上げてみないか」と提案し、皆が顔を突き合わせて一緒に歌った。「彼女の多才さに驚いた」とスティーヴィーは言う。「実にソウルフルな歌声に感動した」。

スティーヴィーのソロパートをきっかけに、全員が再びコーラスを繰り返した。最高の雰囲気だった。「いつでも優しく微笑んでいたチャーリー(・ワッツ)を偲んで、皆が再び集まって歌えるのは最高だ」とスティーヴィーは言う。「彼らのノリの良いビートは健在だった」。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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