WurtSが語る、フィジカル重視の理由、「ライブ」というメディアで表現したいこと

「ネット」と「現場」のハイブリッド

―WurtSという存在が出てきた当初は、「研究家」「マーケティング研究」「トレンドを読んで」みたいな、どちらかというと理屈っぽさが目立った印象があるんですけど――でもそれはインタビューでしゃべることが、たまたまそっちの側面が強く出ていただけかもれなくて――本能をすごく大事にしている人なんじゃないかと思うんですね。

WurtS:はい、そうですね(笑)。ライブをしていなかった頃は、どこまで自分を変わったアーティストみたいに印象付けられるかという考えがありつつ、やっぱり目立った言葉がどんどんメディアに出ていく気はしてました。でも今はもう本当に、やりたいことをやっているというか。今、僕の中では、ライブがメディアになっているので。

―コロナ禍だとTikTokやYouTubeのようなプラットフォームとか、こういったウェブ記事で発信することが大事だったけど、2023年の今はライブこそがメディアであると。

WurtS:何十公演とやっていると、ライブが一番みんなに見せられる場所なので。他のアーティストさんを見ていると、同じ時期にネットから出てきた中でも、ライブアーティストとして打ち出すか、それともそのまま突き進んでいくか、そこがひとつの分岐点だなと思います。別にどっちがいい/悪いはないと思うんですけれども、コロナ禍があけてライブが増えていった中で、どっちで生きていくかというのはあるなと。

―WurtSさんには、そのまま突き進んでネットで完結しよう、という考えが一切なかったですか?

WurtS:WurtSを始めたときから、周りのスタッフさんに「ライブをしたい」ということをずっと言っていたんです。自分の中でネットアーティストという意識はなかったので。なので、スムーズにライブの方へ行きましたね。

―コロナ前だと、ライブハウスで鍛えて、少しずつ会場を大きくして、とかがミュージシャンにとって当たり前のルートだったけど、WurtSさんと同じようにコロナ禍にネットから出てきた人気アーティストたちの中には、いきなり大きなステージに立って、しっかりいいライブをする人もいるじゃないですか。なんでそんなことができるのだろう、と思って。

WurtS:でもそこは自分の中でも課題だなと思っています。それこそ[Alexandros]さんも、キャリアが全然違いますけど、ずっとライブをやってきたからこそ叶わない部分が存在しているなと思います。パワーが違うというか。出ている音とか、音量とか、そういうものじゃなく、持っているパワーみたいなものにライブで培われたものがあるなと感じます。僕みたいに最初がインターネットだった人には、そこの部分で足りていない部分がある。でもそれは、今自分が持ってるネットの力をうまく組み込んで補えたらいいなと思っています。完璧にライブアーティストにはなれないなという気持ちもあるんですけども、新しい形を作れたらなって。最近はTikTokなどにもライブ映像を上げているんですけど、ライブ会場を撮ることによって、お客さんが盛り上がっている中でWurtSがどうライブをしているのかをネットで伝えられる。そういったハイブリッドな感じは、新しい見せ方だなと思ってます。

―ネットから出てきたからこそ作れる、「ネット」と「現場」のハイブリッドを今は模索していると。最新EP『BACK』で「BACK」をリード曲にしたことは、これまでの話と無関係ではないと思うのですが、どういった想いからでしたか?

WurtS:「BACK」を作るにあたって一番大事にしていたのは、アコギとか、ライブで使っている楽器を大切にしたいということでした。やっぱりそれはライブを経験して、ライブで一番魅力が出せる曲を作りたいと思ったからで。『WurtS LIVEHOUSE TOUR I』をやっている最中にすごく思ったのは、ノレる曲はあるけど、しっとりした空気でみんなが何もせずに聴いてくれる時間を作れる曲がWurtSにはないなと。そういう曲を作りたいというところから「BACK」の全体的な雰囲気を作っていきました。僕の中でライブを想定した作り方は初めてでしたね。打ち込みだとアコギがアクセントの1つになってしまうんですけども、ライブだとずっとアコギを弾けるので、アコギを入れたいっていうのもすごくありました。



―それでオアシスを彷彿とさせる曲を――。

WurtS:オアシスっぽいですねえ(笑)。僕自身、オアシスがすごく好きで。オアシスのすごさって、ライブでみんなが歌ってるところで。「分かってないよ」みたいに跳ねながら歌うんじゃなくて、「エモーショナルな歌」みたいなものに憧れて作りました。

―それこそ「Don’t Look Back in Anger」みたいに、エモーショナルに合唱するイメージ。

WurtS:はい、まさにそうですね(笑)。「BACK」には結構思い入れがあって。『WurtS LIVEHOUSE TOUR II』でこの曲をやろうと思っているんですけど、今回のライブでWurtSを見て「よかったな」と思って、また次のライブでこの曲を聴いたときに前のことを思い出して「成長してるな」と思えるような、「前向きな振り返り」みたいなことを「BACK」とか“巻き戻れ”という言葉にしました。ずっとネットの中で得てきた思い出が多かったんですけれども、今はライブを通して一緒に思い出を作っている実感があるんですよね。曲作りにおいても、今までは自分の内側を書くことが多かったんですけれども、対面ライブをし始めてからは、お客さんを見ながら作ることが多くなりました。なので自分だけじゃなくて「みんなの歌」になっているなと。そういったこともWurtSが大きくなっているなという実感につながります。

―そういった変化があると、歌詞を書くときに言葉の選び方も変わってきますよね。

WurtS:そうですね。「BACK」に関しては、みんながいろんな思いを詰め込んで「自分の曲だ」と思えるように、できるだけ抽象的な感じにしようという意識がありました。それこそ“巻き戻れ”という言葉も、いろんなシーンで使う言葉だと思いますし。最初はたとえば失恋を思い浮かべながら聴いてもらってもいいんですけど、ライブで聴くとまた違った捉え方ができるんじゃないかなと思います。みんなと一緒にこの曲を育てていきたいという気持ちがありますね。

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