BLOODEST SAXOPHONEが壊した自分達の価値観、クリスタル・トーマスと共作を語る

―オリジナル曲では、伸太郎さん作曲クリスタル作詞の「Oh Baby」もありますが、こういう明るくて楽しい曲はライブでよく披露しますよね。バンドとしてすごく娯楽的な部分が根本にあるというか。

そうじゃないと意味ないかなって思うんですよ。「ブラックミュージックってこうじゃなきゃいけない」みたいなことは、結局一部の人にしか伝わらないので。僕は、モダンジャズ以降の、所謂ジャズって言われている音楽がどうにも眠くて好きじゃないんですよ。10代の頃は「ジャズが好き」って言うとカッコイイと思ってたんですけど、実際に聴くと寝るという(笑)。ただ、ロックに直結するようなR&Bの根っこ、イリノイ・ジャケーとかテキサス・テナーの連中の音楽を聴いて「最高じゃん! これがジャズか」って、ついに堂々と「ジャズが好きだ」って言えるようになったんです。そういう、僕がジャズを嫌いだった要素と「ブラックミュージックってこうじゃなきゃいけない」みたいな縛り、やっている方の変なこだわりみたいなものって、どこか似ているんですよね。なんか明るくないなって。テキサスでブルースをやっている連中とかも、そこまで考えてないですからね。もちろんみんな自分のスタイルはありますけど、「そこに居座る必要はないよね」って。

―「Dinah」は日本語と英語でカバーしていますね。こういう曲をやれるのがブラサキのフットワークの軽さですね。

日本語バージョンは、日暮さんからのリクエストです。僕も「Dinah」ってカバーのやり甲斐があるなって思っていて、楽器もペンも持たずにアレンジを想像して「Drum Boogie」(1941年に発表されたジャズのスタンダード)のリズムにしようと思いつきました。僕はアレンジをするときはギターでやるんですよ。サックスは単音楽器なので、コード感を知るために昔無理やり覚えて、今も曲を作ったりアレンジするのは全部ギターなんです。

―そうなんですか!? それは意外でした。

ソロとかは弾けないですけどね。「Dinah」と「Drum Boogie」を掛け合わせることを思いついたら、途中でモーツァルトとかサンダーバードが出て来ちゃったりしました。

―「蒲田行進曲」も入ってますよね。

あれはもう、ソロを吹く2秒ぐらい前に「あ! 「蒲田行進曲」だ」って思いついて吹いたんです(笑)。

―カバー曲で言うと、やっぱり気になるのがザ・ローリング・ストーンズ「Undercover Of The Night」です。ストーンズの無数にある曲からこれをカバーするのは珍しいですね。どんな発想から取り上げたんですか。

僕が洋楽を聴き始めた中2の頃に、TVKでたまたま「Undercover Of The Night」のヤバいPVを「なんだこれ!? おっかねえ~」と思って観ていたんです。唇がぶ厚い人(ミック・ジャガー)が歌っていてインパクトもすごくあって。それでストーンズにハマることはなかったんですけど、この曲はすごく好きだったんです。自分たちでやろうという発想はなかったんですけど、今回この曲とディジー・ガレスピーの「Manteca」を掛け合わせたらすごく良くなるんじゃないかなってアイデアが降ってきたんですよ。オリジナルは電子感もバリバリあって、レコーディングスタジオでかなりテイクを重ねて作り上げたんだろうなって想像するんですけど、そこをうちらがやってもしょうがないので、どうするか考えた結果、あの毒々しさを表現するために「Manteca」を持ってきたんです。そのリズムがハマったし、クリスタルもノリノリで歌ってくれたので、すごく良いものができたと思います。僕らがベーシックを録ってからクリスタルが歌い出したとき拍手が起こりましたもん。「すげえ!」って。

―「Dinah」もそうですけど、単純にカバーするのではなく、「掛け合わせよう」という発想になるんですね。

その発想の最初が、「Undercover Of The Night」と「Manteca」だったんです。これを思いついてから味をしめた感じですね(笑)。


BLOODEST SAXOPHONE feat. CRYSTAL THOMAS

Rolling Stone Japan 編集部

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