BLOODEST SAXOPHONEが壊した自分達の価値観、クリスタル・トーマスと共作を語る

―“アイデンティティの幅を広げる”というのはすごく興味深いところです。CDのライナーノーツにも、黒人クラブに日本人として殴り込む心境が綴られていますよね。ブラサキは結成して25年間、ブルース、ジャズといった黒人音楽への憧れからスタートしていると思うんですけど、今はどう思って自分たちの音楽と向き合っているんですか。

昔は、黒人音楽っていうところに支配されていたような感じはあるんですけど、最近は「困ったときにこれを引っ張ってくればなんとかなる」っていう気持ちにだんだんなってきましたね。どれだけぶっ壊してもその匂いは残ってると思うし、それを敢えて排除しようっていうことはないんです。黒人クラブでライブをやったときにも、やっぱりちゃんと身についてるなって思ったし、それを自分たちのカラーとして昇華できているという自負はあります。古い音楽が持つノスタルジー、独特の心地良さへの憧れも当然あるんですけど、その古い音楽の何をチョイスするのかっていうのがセンスだと思うので。そういう中で頭の中にいる過去の自分を総動員して、「この曲に何を持ってくるのか、足りないものは何か」っていうのを考えてます。



―今作を聴くと、日本人らしさと黒人音楽の良さが融合しているのが今のブラサキなのかなって思いました。

そうだと思います。日本って戦後の海外から入ってきた音楽がダイレクトに歌謡曲になって行ったような流れがあると思うんですけど、そういう和のテイストって僕自身にも強くあると思うんです。うちのメンバーもみんなそうですし、それが独特のカラーに出来ていると思います。スイスのブルースフェスに出たときに、リハーサルをしていたら白人のお兄ちゃんが「あんたたち日本人でしょ? ブルースなんかできるの?」って言うんです。僕は「OK、OK、観ててね」って、そいつをノックアウトするつもりで演奏して大喝采でした。もちろんクリスタルが一緒だったっていうのもありますけど、ブラサキはそういうところでも通用するバンドになっている自信はあります。

―今作の表題曲「GOOD MORNING」は、日本人独特の情緒も感じる素晴らしい曲で、まさにブラサキとクリスタルだからこそできた曲じゃないでしょうか。

ありがとうございます。アルバムの曲を並べた中で、僕が欲しいと思っていた曲がなかったんです。それが、「ブラサキとクリスタルが組んでグラミー賞を獲るならどんな曲か」尚且つ「フェスで気持ち良くなる曲」という2つの条件を満たすことだったんです。「GOOD MORNING」は元々サビの部分だけあって、試行錯誤しては捨てていたんですけど、僕が10数年前に作った未発表曲のAメロをくっつけてみたら、「これはいけるぞ」って一気にまとまって。「GOOD MORNING」ってタイトルを付けたデモをクリスタルに送ったらすぐに歌詞を付けてくれて魂が宿った感じです。

―すごく綺麗な旋律の曲ですけど、ストリングスの後にカウントが入る冒頭は、夜明けのようなイメージですか。

元々レコーディングしたのはカウントの後からだったんですけど、「ストリングスを入れたいよね」みたいな話はメンバー間で言っていたんです。最後に録音漏れがないかチェックしていたときに、ベースのMasaが「本当にストリングス入れちゃっていいですか?」って、自宅で全部ストリングス・アレンジを録音して送ってきたんですよ。

―一発録りにこだわっているイメージでしたけど、かなり柔軟なんですね。

確かに、前は一発で録って、みんなで音の塊としてガーンっとくるのがカッコイイんだっていうのがあったので、後で足すっていうこと自体不可能だったんですよ。ただ、それは完成度という意味ではリスクもあるので、今回は必要な曲は全部重ねて録りました。Masaがストリングスも足したのも、「こいつ、やるな!」って思いました(笑)。もちろん、一発録りのカッコよさもわかっているんですけど、より多くの人に広めるにはどうするかっていうことは、今回自分の中で変わって行った部分からもしれないですね。自分のサックスソロも、後でダビングした曲もあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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