BLOODEST SAXOPHONEが壊した自分達の価値観、クリスタル・トーマスと共作を語る

BLOODEST SAXOPHONE feat. CRYSTAL THOMAS

“ブラサキ”ことBLOODEST SAXOPHONEが、アメリカ・ルイジアナを拠点に活動する女性ブルースシンガー、クリスタル・トーマスと共演したニューアルバム『GOOD MORNING』(BLOODEST SAXOPHONE feat. CRYSTAL THOMAS)を2023年 7月21日に発売した。

日本屈指のジャンプ・ブルースバンドとして海外でも活動を続けてきた彼らにとってクリスタルは、BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIES『I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU』への参加、「フジロックフェスティバル’19」での共演等を通じて今や盟友ともいえる存在なのだろう。完成したアルバムのスマート且つ濃密な楽曲たちを聴くと、いかに互いを理解・尊重して共演しているかがよくわかる。

その根底にはブルース、ジャズ、R&Bといった黒人音楽があることは間違いないが、今作では「Undercover Of The Night」(ザ・ローリング・ストーンズ)「I'm Not In Love」(10cc)を取り上げるなど、固定概念に囚われない自由な発想でのカバーにも驚かされる。そしてその関係性はオリジナル曲「GOOD MORNING」として見事に昇華されていると言えるだろう。今作のプロデュースを務めたテナーサックス奏者でバンドリーダー、甲田 “ヤングコーン” 伸太郎に『GOOD MORNING』のテーマ、楽曲の制作過程、今後の展望など、たっぷりと語っていただいた。



関連記事:「ジャズの世界は狭すぎるし、アメリカは根本的に間違ってる」シオ・クローカーがそう語る真意とは?

―『GOOD MORNING』はBLOODEST SAXOPHONE(以下、ブラサキ)2度目となるアメリカ、テキサス州オースティンでの録音作品ですが、こうやって海外レコーディングをして、ライブもしてくるっていうバンドは最近はあまりいないですよね。

今はあまり聞かないですよね。前はそういうステータスもあったし、じつは海外で録った方が安いなんていう話を聞いたりした時代もありました。

―今回、日暮泰文さんと髙地明さん(共にPヴァイン・レコードを創設し日本にブルースを広めた重鎮)がバックアップしているそうですが、制作の始まりはお2人からの提案だったわけですか?

お二人から去年の(その年の)正月にメールをいただいたんです。既に「イーストサイド・キングス・フェスティバル」への出演は決まっていたんですけど、「せっかく行くならもう1回クリスタルと組んでアルバムを作りましょう」ということになって、彼女の地元のルイジアナにも行って、普段活動している黒人クラブで一緒にライブもやることになったんです。クリスタルとは、彼女が来日したり僕らがアメリカに行ったり、一緒に香港に行ってライブをしたり頻繁に活動を共にしていたんですけど、コロナでそれが無くなって。それで今回、久しぶりに再会してライブとレコーディングをしたんですけど、断絶していた時間とかはまったく感じずに、わりとすぐに感覚が掴めましたね。

―ずっと関係は続いていたことからスムーズに実現したんですね。リモートでのやり取りなどもしていたんですか?

レコーディングが決まってからは、カバーについては音源を送って、オリジナル曲は議題に上がる曲が多かったので、ブラサキでスタジオに入ってデモ音源を作ってどんどん投げました。そしたら、曲が決定する前から早速歌詞を書いてきちゃって。まだ決定じゃないって言ってるのに(笑)。

―(笑)。それだけクリスタルにとってもブラサキとの共演はやり甲斐があるんでしょうね。候補曲はどれぐらいあったんですか。

僕自身は今回、300曲ぐらい作っているんです。そのうち15曲ぐらいのデモ音源を作ってクリスタルに送りました。そこから最終的に書き下ろし2曲と昔の曲を引っ張り出してアルバムに収録しています。

―伸太郎さんがプロデュースと謳っていますが、もともとそれに近い作り方をしてきたのではないかと思います。これまでとの違いってどんなところにあるのでしょうか。

「ブラサキってこうだよね」って自分たちで勝手に決めている部分をぶっ壊すというのが、僕がプロデューサーとして一番最初にやったことです。今まではジャンプブルースとか、ジャズでもまだ大衆のものだった時代のジャズっていうルーツの部分を大基本として作って行くことを決めていたんですけど、今回に関してはその根底の部分も考え直しました。ブラサキとクリスタルが組むのであれば、どの程度までアイデンティティの幅を広げられるかっていうことから考えて、「必要とあれば全部ぶっ壊そう」みたいな気持ちがありました。それと、ブラサキは前回まではメンバーがもっと多かったんですけど、今は少数精鋭になった状態で以前より柔軟性があるので、そこを最大限に活かしました。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE