SawanoHiroyuki[nZk]が語るアニメ音楽への姿勢、ポルノ岡野昭仁との化学反応

ーそこから幾多数多のドラマや映画の劇伴を手掛け続けているわけですが、同時にアニメ業界でも、今回の映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ 後編』主題歌に至るまで凄まじい数の作品に携わっているじゃないですか。この状況は想定されていました?

想定していたわけではないんですけど、自分が劇伴の道へ進むきっかけとなった存在の中にジブリの久石譲さんがいたり、菅野よう子さんが手掛けられていた『攻殻機動隊』を観ていたりしたので、アニメの音楽をつくりたい気持ちは元々強かったんですよ。わりかし初期の頃はアニメの仕事がたくさんあったわけじゃなくて、2010年の『機動戦士ガンダムUC』きっかけでいろんなオファーをもらえるようになったんですけど、それ以前から「自分も久石さんや菅野さんのようにアニメ作品に関わりたいな」と思っていたんです。

ー元々、アニメは好んでよく観ていたんですか?

観ていましたよ! 僕が高校の頃に深夜アニメが流行って『ベルセルク』とか……大人向けアニメと言っていいんですかね。シリアスだったり、バイオレンスだったり、ちょっとエロいシーンもあったり、そういうアニメを「上の世代向けのアニメだな」と思いながら観ていて。『攻殻機動隊』なんてまさにそういう作品ですよね。あと、僕は大友克洋さんの監督作品もすごく好きで追いかけていました。

ー以前から菅野よう子さんの影響も受けていると仰っていましたが、彼女の音楽のどんな部分に魅了されていたんでしょう?

それこそ『攻殻機動隊』や『カウボーイビバップ』『∀ガンダム』『WOLF'S RAIN』などで菅野さんの音楽に触れてきたんですけど、それまで僕が好きで聴いていた久石さんや坂本さんや小室さんやASKAさんの音楽は、ある程度その人のカラーが見えるというか、何作品か聴くと個性や傾向などを感じたんですよ。それは劇伴作家の人たちにも言えることで。ただ、菅野さんの音楽は作品ごとに全然バラバラのジャンル感で、しかも格好良く突き詰めてあれだけクオリティの高いモノを毎回創り上げている。最初に『カウボーイビバップ』の音楽を聴いて「ジャズファンク系に強い人なんだ」と思っていたら、その後『攻殻機動隊』の音楽に触れたらエレクトロニカだったんで「なんだ、この人!」ってすごく衝撃を受けて。そんな感じであらゆる洋楽的なアプローチを臆さずアニメ作品に持ち込んでいたから「この人がアニメ全体のレベルを上げているな」と思っていたんですよね。

ー菅野よう子が音楽を担当しているアニメは間違いない。そう思わせる存在になっていきましたよね。また、今語られていた制作スタイルの影響は、澤野さんが手掛けるアニメ作品の劇伴やテーマソングからも感じ取れます。

それまでのアニメの音楽って「アニメっぽい」と感じさせるものがわりかし多かったじゃないですか。その枠組みを取っ払ってアニメやその音楽を格好良くしていってくれている人だなと感じていたので、それには物凄く影響を受けていますね。なおかつ、劇伴の中に洋楽的な歌モノもバンバン入れて、まるでコンピレーションアルバムのようなサントラを創り上げていた人なので、それで「僕も劇伴に歌モノを入れたい」と思うようになりましたし。菅野さんってその後の『マクロスF』でめちゃくちゃ大ヒットして、アイドルポップ路線の音楽でより多くのファンを獲得したと思うんですけど、僕はどちらかと言うと洋楽的なアプローチをしていた菅野さんのアニメ音楽に影響を受けて、それを追求したくて今でも続けているんです。

ー澤野さんもアニメ音楽に限らず「え、ここでそんなアプローチするの?」と驚かせるような楽曲を届けていきたい感覚は強いんですか?

自分なりにですけどね。予想できる流れだと思わせておいて、ちょっとひねくれた要素を入れたりしたい……したいというより、そういうクセかな。それは菅野さんの影響よりも、学生時代に作曲家の人のところでレッスンを受けたりしていたんですけど、その先生がひねくれていたので、もしかしたらその影響かもしれない(笑)。自分なりにポップな曲を書いて持っていくと「つまんないね。もうちょっと捻って面白いことを」って言われて。それが悔しくてなんかしらヘンな要素を入れるようになっていったんですよね。なので、今も「こういう音楽をお願いします」と言われても、あたりまえにそれをリファレンスして創るよりも「こんなことするんだ?」と感じてもらえるような捻りを入れる。それは意識的にも無意識的にもやっていると思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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