ルイス・コール×長谷川白紙 フジロックで実現した夢のブレインフィーダー対談

 
ジェームス・ブラウンと2人のリズム/ビート観

−以前、ルイスさんと長谷川さんにインタビューしたとき、お二人ともジェームス・ブラウンについて語っていたかと思います。どのようなところに影響を受けているのか、改めてお伺いできますか。

ルイス:彼の音楽の魅力について説明したいけど、これはマジックとしか言いようがない。彼の音楽を聴いた瞬間に、とても美しい、特別な感情が沸き起こってくる。多くのアーティストが彼を真似したいと思っている。彼は多くの音楽にとってのオリジナルだよ。曲そのものも演奏もすべてがマッチしていて、ただただ美しい。宇宙に存在する特別な何かが、彼の音楽から生まれ出てきた。もちろん、彼と演奏している人も素晴らしいね。そうだな……魔法を聴いているような感覚かな。




ルイス・コール、フジロック'23のライブ写真(Photo by Masanori Naruse)

長谷川:なんか、今のルイスの話を聞いていて面白いなと思ったのは、やっぱりジェームス・ブラウンってオリジナルなんですよね。わたしが最初にジェームス・ブラウンに出会ったのは、ブレイクス(ブレイクビーツを軸としたベースミュージック)なんですよ。SoundCloudにブレイクコアとかをアップしている人たちがこぞって使っている音、そのオリジナルを作った人っていうところからジェームス・ブラウンに出会った。わたしが最近になってジェームス・ブラウンを取り上げようと思ったのは、こんなにいっぱいサンプリングされているのに、こんなにオリジナルが参照されないまま使用されることがある音楽家って他にいるのだろうか?と思ったからなんです。インターネット上でブレイクビーツが広くダウンロードされるようになってからは、ジェームス・ブラウンが何者なのかを知らずにサンプルを有効活用している人もたくさんいると思うんですね。そういった意味で、ジェームス・ブラウンは世界で一番透明なミュージシャンではないかと思うんです。これだけたくさんサンプリングされて影響を与えているんだったら、ビートとかグルーヴっていうものにおける規範がそこに確実にあるはずだと思ってて。現代において、私たちはそこを見つめ直すべきではないかと思っています。

ルイス:サンプリングされたブレイクコアやドラムンベースなんかを聴いても、オリジナルを聴いた時の、あの気持ちはどうしても感じられない。僕にとって、やっぱり彼だけがオリジナルなんだ。

−今のルイスさんの話は、まさしくルイスさんのドラムのあり方を言い表しているような気もしますね。シンプルだからこその良さ、みたいな。リズム自体がシンプルゆえに響くものがあるというか。

長谷川:すごくそうだと思います。




長谷川白紙、フジロック'23のライブ写真(Photo by Kazma Kobayashi)

−その一方で、長谷川さんは音源制作の際、複雑なビートをシンセの手弾きで弾いていると聞きます。ビートへのこだわりについて教えていただけますか。

長谷川:そうですね。例えば、今回の「口の花火」について語るのであれば、伝えるのがとても難しい感覚なのですが、「パルスのクリアさ」みたいな。なんていうか、カウントのしやすさ。音楽を聴いていて、1.2.3.4…2.2.3.4…ってカウントできる、その「しやすさ」っていう単位が私の中にあって。それを時間の中でコントロールしていく中で、カウントがノイズのように聞こえてしまってできないところでやるのか。または、逆にリズムのパターンが整理されていて、基本化されたリズムがカウントとして自分の中で分かりやすく露出している段階をどうコントロールするか。つまり、カウントしづらくするのか、しやすくするのか。その両方向のエネルギーの使い道みたいなものをずっと考えています。

Translated by Emi Aoki, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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