SIRUPが振り返るフジロック 戦争・差別・インボイス反対を掲げたMCの真意

SIRUP、フジロック'23でのライブ写真(Photo by Leo Youlagi)

2021年のフジロックでは初出演にしてGREEN STAGEに立つという、国内R&Bアーティストでは異例の快挙を果たしたSIRUP。2年ぶりの出演となった今回は、3日目にRED MARQUEEへ登場。入場規制がかかるほどの満員御礼のなか、同ステージを念頭に置いた「踊らせにいく」パフォーマンスに加えて、戦争・差別・インボイス反対を掲げたMCでも大いに沸かせた。洗練されたサウンドで知られるSIRUPは、海外のトップアーティストがそうであるように、社会的メッセージを堂々と発信するスタンスでも支持を集めている。

さらに、SIRUPはいち観客としても2度目のフジロックを満喫し、そこからいろんなことを学んだという。そこで今回は、著書『世界と私のAtоZ』も話題のライターで、SIRUPの活動をサポートしてきた竹田ダニエルによるインタビューを実施。苗場から帰路につく車内で、一緒にフジロックを振り返ってもらった。(構成:上田奈津美)

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竹田:フジロックお疲れ様でした!

SIRUP:お疲れ様でした!

竹田:まず、終わってみての感想をお願いします。

SIRUP:2021年の粛々とした空気の中でステートメントを出したりだとか、賛否両論がある中のフジロック初出場からちょっと空気も変わった今年は、自分としてもそれまでに蓄積してきたチーム力も含めて爆発させたいなというテンションと、新しい空気のフジロックを楽しもうと考えていたので、それを十分出せたし、オーディエンスともシェアできたんじゃないかなと思います。言い方を変えると、本来のSIRUPをちゃんと観てもらえたんじゃないかなと。



竹田:2度目のフジロック出演にあたって、「こういうメッセージを伝えたい」みたいなことは考えていた?

SIRUP:やっぱり前回フジロックに出たことを踏まえて、SIRUPとしての音楽以外の側面、社会的な側面へのメッセージみたいなところをちゃんと言えたらと思っていて。「戦争反対」とか「差別をなくしたい」っていうこと、そういったことがなくなればもっとこういう場を楽しめるというのを伝えられた。まずは第一に、やっぱりフジロックっていう空間、あんな遠いところまでみんな来てくれてありがとうって思うし、来てくれるみんなのことや、ああいった現場を俺は守りたいって思う。それと、自分の制作チームにもフリーランスとして活動している人がたくさんいるので、フリーランスの人が生きづらい世の中になるようなインボイス制度もなくしたいっていう主張は、MCで絶対しようと思っていました。


竹田:個人的にも、フジロックは特殊な現場だと思っていて。というのも、アーティスト自身もフェス期間中に観客として楽しめるところ。海外アーティストを含め、自分の観たいアーティストを観られる機会にもなっている。2021年はすべて日本のアーティストでしたが、今年は海外のアーティストも大勢出演しているし、海外からの観客もすごく多い印象を受けました。オーディエンスの反応についてどう思いましたか。

SIRUP:日本人の観客の方でSIRUPの単独ライブには来たことがない人も、フジロックで観てくれている感覚も改めてあったんですけど、やっぱり海外の観客が真ん中の方でめちゃくちゃ楽しそうに踊っている様子を見て、自分もなんかこう、楽しかったというか。自分が今、こうしてダンスミュージックをやってる意義を改めて感じましたね。



竹田:セットリストもファンクな曲だったり踊れる曲が多くて、SIRUPの一番有名な曲「LOOP」しか知らない人にとっては意外なセットだったかもしれないし、ファンにとっては「SIRUPは踊らせにくるアーティストだから」っていうこともしっかり感じられた。フルバンドで、演出にもすごくこだわっていましたよね。

SIRUP:RED MARQUEEではLEDスクリーンが使えるということで、今回は映像にもしっかり力を入れました。武道館ライブ(昨年11月)の時にも使った過去の映像とか、新しく作ったものとかを持ってきて、フルバンドでパフォーマンスしました。弦(ストリングス)も録音したものをツアーからそのまま持ってきたり。集大成に近いセットにしつつ、踊らせにいきたかった。そこはやっぱり、RED MARQUEEに出るというのが念頭にあったという感じですね。

竹田:RED MARQUEEは「踊らせにいく」っていうイメージ?

SIRUP:そうですね。屋内のステージで、ディスコ的な雰囲気をイメージしやすいし、そういう雰囲気を作れたらいいなと思って。



竹田:たしかに。オーディエンスが各々、自由に踊ってるのもフジロックらしさかなと思うんですよね。2021年のGREEN STAGEでは全体的にゆったりと楽しむ感じだったのに比べて、今回はクラブのノリに近いような感じもあれば、ちょっとゆったりした曲もあって、幅広く楽しめる感じになりましたよね。

SIRUP:なりました!

Text by Natsumi Ueda, Photo by Leo Youlagi

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