スーダン・アーカイヴスが語るバイオリンを手にした理由、黒人として音楽を作る意味【フジロック出演】

スーダン・アーカイヴス(Photo by Obidi Nzeribe)

名門Stones Throwが送り出す新世代のアイコン、スーダン・アーカイヴス(Sudan Archives)が7月28日〜30日に開催される「FUJI ROCK FESTIVAL '23」に初登場。シンガーソングライター/ビートメーカー/バイオリン奏者というマルチな顔を持ち、2022年の最新アルバム『Natural Brown Prom Queen』で大きく飛躍。最近では米ローリングストーン誌が発表した、音楽産業の刷新をリードする25組「Future 25」にNewJeansと並んで選出された。そんな彼女が語るクリエイティブへの信念とは?


音楽の未来を垣間見たければ、LAにあるスーダン・アーカイヴスの所有する地下スタジオを訪れるべきだ。「他人のスタジオで作業する自分の姿は、全く想像できない」とスーダンは言う。オンライン・インタビューの画面の向こうで、彼女はリビングルームのソファに座り、煙をくゆらせている。「私の家に来たら、この犬を撫でてあげて。もし彼女が嫌がるようなら、その人はこの家にはいられない」と言うスーダンの隣には、「ジュンコ」という名の犬がおとなしく座っている。「私と付き合うなら、マリファナの煙や、私の家族や友人たちやペットにも慣れてもらわなきゃいけない。私のやり方に合わない人は、出て行ってもらって構わない」と彼女は言う。

スーダン・アーカイヴスの飛躍のきっかけとなった、ポップ、R&B、ヒップホップをフィーチャーした『Natural Brown Prom Queen』は、彼女曰く自分がリラックスできる自然な雰囲気を醸し出している。一方でデビューアルバム『Athena』(2019年)に関しては、いわゆる産みの苦しみを経験したという。「“何でこのスタジオで作業しなければならないんだろう”と、居心地が悪かった」と現在29歳のスーダンは振り返る。「『Natural Brown Prom Queen』は、私の地下スタジオで作った。おっぱい丸出しでマリファナをくわえながら、自分の価値観を自然に表現するアフリカの女性になりきって作業できた」



米オハイオ州シンシナティ生まれのスーダン・アーカイヴス(本名ブリトニー・パークス)は、10歳の頃から始めたバイオリンに熱中した。楽器は、バロック・バイオリン・ショップから借りていたという。「可愛いおばあちゃんの家といった雰囲気の店構えだったけれども、中へ入ると床がきしむような感じだった」と彼女は振り返る。4年生の時に入った学校のオーケストラで、バイオリンの弾き方を学んだ。ところが2年後に転校した先にはオーケストラがなく、正式なレッスンを受けられなくなってしまう。しかしそれが幸いして、楽曲を耳コピするやり方が身についた。

当時彼女は、教会で聖歌隊の伴奏も始めた。「私がバイオリンを弾くことは知られていたので、“まともな音を出すのに数年かかるかもしれないけれども、来て弾いていいよ”と言われた。50人か100人程度の“とても小さな”教会だった」と彼女は言う。聖歌隊にバイオリンの伴奏を付ける教会など、ほとんど見かけない。スーダンにとっても、他にはないユニークな環境で演奏する初めての体験だった。ここから彼女独自の音楽キャリアがスタートした。

Translated by Smokva Tokyo

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