Aile The Shotaが語る、愛とエゴの「境界線」、J-POPへの真摯な想い

なぜ「愛」を音楽で表現するのか?

―実は今日の取材で、なぜAile The Shotaは「愛」の深いところまでを音楽で表現するのか、というのをひとつテーマにしたいなと思っていたんです。7月2日に『Aile The Shota –1st Oneman Tour “Prologue”-』初日を観させてもらって、そこでもAile The Shotaは愛とは何かを深く追求し、それをステージで表現しようとしているアーテイストなんだということを強く感じて。ポップミュージックで表現できる器を越えた深い哲学を、舞台上で表現することに挑戦しているようにも見えたんですよね。

ワンマンは、自分の音楽および自分のことを好きでいてくれる人しかいない空間で、影響力がブーストしている状態じゃないですか。だから僕が言ったことが正解になっちゃう可能性もあるし、それは危険だし、誤解もされちゃいけない。そこで何を言えるのか、何を言ったらいいのか、ということがものすごく重たかったですね。だからものすごく緊張もしました。自分の音楽をもっと大きいところで鳴らしたい、もっとJ-POPシーンの先頭で、と思うと……愛を語ることって、誰かを傷つけることがないと思うんですよね。緊迫したマインドでもそういった言葉が出てくるのは、やっぱり自分の中で大事にしているものなんだなとも思いました。

―MCでは愛にまつわる想いがいろんな角度から語られていたし、「I LOVE YOU, ALL」というシンプルな言葉を何度も発していたし、Shotaさんとオーディエンスやゲストのあいだでも愛の応酬がめちゃくちゃ濃く生まれていた空間だったと思うんですよね。

なんで愛をあんなに思うんだろう、っていうのは自分でも不思議なんですけど。すごくつらかった時代があったタイプでもないというか――別につらいことが一個もなかったわけじゃないですけど、愛に関して大きな傷があって、というタイプでもなくて。だから逆に、ニュースとかを見て「なんでこの人はこうなったんだろう」って考えちゃうのはありますね。どういう思考でそこに至るのか、みたいなことを考えてきた時間は長くて、もしかしたらそれは愛を歌うときに厚みとして出ているのかもしれないです。一番日常で考えているのがこれだからだと思う。

―日常的に愛について考える、というのはアーティストになる前からありました?

うん、それこそ命とかを考えるタイプで。小学生の頃から「死にたくない」というマインドが強くて、一回きりの人生を後悔したくないというところから、徐々に「愛」にフォーカスがいって言葉を紡ぐようになったのかなと思います。

―死にたくない、と強く思うのはなぜなんでしょうね。

なんでだろう? 無になるのが怖くて。「Like This feat. Nenashi」とかまさにそのことなんですけど。未だに消えないですね。どうしようもなく不安になって眠れないこともたまにあるので。想像できない不安というか。宇宙とかに抱くものと同じですけど。だから自殺とかのニュースを見ているとすごくセンシティブになるし。そこで「愛があれば」とか思うようになってからだと思いますね。それをやっぱり伝えたいよなあって。

―そこからさらに愛はエゴにもなる、というところにまで焦点をあてて表現するのがShotaさんの深さだとも思うんです。その考えを持つようになったのはいつ頃からだと実感してますか。

エゴが見えたのは、Aile The Shotaになってからですね。それまでは30人とかの前でライブをやっていたので、「俺の仲間がめっちゃアガってくれて嬉しい」みたいな中で音楽をやり続けていて、マイナスなリアクションが返ってきたことが一回もなくて。望んでないリアクションというものに出会ったのが『THE FIRST』に出てからで、ものすごい量のポジティブが入ってくると同時に、ネガティブも入ってくるようになって。自分の名前が大きくなったからこそ受けたエゴもあるし、エゴを受けたことで僕が持っているエゴに気づくこともありました。そこから私生活でも「この感情はラブのつもりだけどエゴだよな」と思うようになった気がします。

—ライブを観ながら思ったのは、Shotaさんは今の時代における愛やエゴのあるべき形のひとつを体現してくれている存在だということで。今は「他者への尊重」をどう実践していくべきなのかをみんなで模索しているような時代だと思っていて。愛とエゴの境界線をみんなが模索する中で、愛だと思っているものがエゴにひっくり返る怖さを直視することとか、自分のエゴだと思うものこそ愛を持って相手と接しないといけないこととか、日々感じている難しさへのヒントをくれるようだと思ったんですよね。

僕は「これが答えです」ということを示すタイプの表現者でもないので、「一緒に考えましょう」というのが多分、正解なんだと思ってますね。僕も正解が何かを全然わからずに歌っているので、全部鵜呑みにしてほしくもないし。「No Frontier」もそうですけど、僕はこう思ってるから一緒に考えよう、みたいなところなのかな。



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