J-POPの歴史「1996年と97年、フジロック誕生、新しい存在や流れの台頭」

全部だきしめて / 吉田拓郎とLOVE2 ALL STARS

吉田拓郎とLOVE2 ALL STARS「全部だきしめて」。97年11月に出たアルバム『みんな大好き』に入っておりました。LOVE2 ALL STARSというのは、96年10月にスタートしたフジテレビの音楽バラエティ『LOVE LOVE あいしてる』のバンドですね。その主題歌でした。

アルバム『Long time no see』が95年に出ました。拓郎さんが50歳になる前、50代をどう迎えるかっていうのが、この世代の90年代の大きなテーマだったんですね。拓郎さんは95年にバハマでレコーディングしました。コンパス・ポイント・スタジオ。ジャクソン・ブラウンのバンドのセクションというメンバーと一緒にやりたい。ドラム、Russ Kunkel、ベースLee Sklar、キーボードCraig Doerge、ギターDavid Lindley。亡くなった人がたくさん出てきましたが、1軒家を貸し切って、そういう人たちと一緒にレコーディングしたアルバムが『Long time no see』。その中に「永遠の嘘をついてくれ」という中島みゆきさんの歌が入ってたんで、それをかけようかなと思ったんですが、こっちにしちゃいました。

50代になった拓郎さんが、今までやったことのないことをやりたいっていうことで、テレビのレギュラーを持ったんですね。それが『LOVE LOVE あいしてる』だった。その相手になったのが、デビュー前のこの人たちでありました。去年のアルバム『ah-面白かった』にも参加してましたね。拓郎さんの人生の中で一番大きな影響を与えた2人と言っていいかもしれませんね。特に人生の後半は、そういう存在だったんではないでしょうか? KinKi Kidsデビュー曲「硝子の少年」。

硝子の少年 / KinKi Kids

1997年7月発売、KinKi Kidsのデビュー曲「硝子の少年」。作詞・松本隆、作曲・山下達郎。97年年間チャート2位でしたね。1位は何かというと安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」ですね。

96年10月に始まった『LOVE LOVE あいしてる』は、KinKi Kidsはデビュー前だったんですね。拓郎さんは、俺は若い奴は嫌いだって言ってて、KinKi Kidsともなかなか打ち解けられないんではないかという時期がありました。『LOVE LOVE あいしてる』のスタジオ、始まってしばらくは、当時のフォーライフレコードの担当者、今毎日放送にいる原田さんと一緒に立会いに見に行ってました。拓郎さんは辞表を懐に入れて収録に臨んでおりました。

この頃と今違うことにデビューまでの時間をちゃんとかけてる。そして曲を、いろんな曲の中から選んでるっていうことがあるんじゃないでしょうかね。TikTokでバズったからデビューさせるみたいなことじゃなかった。次におかけするアーティストもそんな例でしょうね。92年から3年間修業期間があった。95年にデビューして、97年の1月に主演映画を撮ったんですね。『月とキャベツ』。いい映画でした。彼も主演しておりました。その中の曲がロングヒットしたんですね。次の曲はその曲ですね。

『月とキャベツ』の前に、96年9月にシングル『セロリ』を発売して、それが97年5月にSMAPがカバーした。で、山崎まさよしという名前がいろんな形で広まるようになった。90年代にデビューした人たちの息が長いのは、そういうデビューのいろんな知恵が詰まってるっていうことがあるんじゃないでしょうか。この曲も、そういう時間をかけて作られた曲です。「One more time, One more chance」。

Rolling Stone Japan 編集部

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