J-POPの歴史「1998年と99年、百花繚乱の90年代後半と幸せな結末」



1998年12月発売、宇多田ヒカルさんのデビュー曲「Automatic」。「これ誰?」っていう会話が全国で交わされたでしょうね。FMラジオに特化したプロモーションでした。テレビに出なかった。このリズム感ですよ。「7回目」を「な・なかいめ」って発音するだけみんなびっくりしましたからね。こんな日本語あるの?っていうリズム感。言葉の譜割。英語と日本語がミックスされたグルーヴの気持ちよさ。そして何よりもこの声の艶ですね。こんな歌聞いたことがないっていう人が、15歳だった。しかも、藤圭子の娘なのっていう駄目押しの衝撃があった。歴史を変えた歌。ラジオの歴史にも残る歌です。

夜空ノムコウ / SMAP

98年1月に発売になったSMAPの「夜空ノムコウ」。今もいい曲だなと思って聴いておりました。作詞スガシカオさん、作曲川村結花さん。先週は松田聖子さんとか安室奈美恵さんが、それまでのアイドルのイメージを変えた。ママドルっていう言葉が生まれて、結婚して出産してもずっとアイドルでいるんだ、音楽やり続けるんだという例を作った。

「夜空ノムコウ」は男性アイドルのイメージを変えました。こういうバラードのシングルを男性アイドルが歌ってヒットして、しかも内容が青春讃歌でもなければ、恋愛ポップスでもダンスミュージックでもないんですよ。「あれから僕たちは何かを信じてこれたかな」。30代ぐらいの人、今はもっと上かな、青春を回想してる歌ですからね。これをSMAPが歌って、これだけのヒットになった。新しい時代がやっぱりここにもあったんですね。

宇多田ヒカルさんはアイドルにもなりましたからね。スーパーアーティストがスーパーアイドルになった。アイドルとアーティストが一緒になっていった。もう歌が下手なアイドルは登場できなくなったっていうのが宇多田ヒカルさん以前、以降でしょうね。90年代はスタンダードの宝庫だって話を何度もしてますが、いい曲が売れた時代。この「夜空ノムコウ」は最たる1曲でしょうね。新しいアイドルの形が始まったということで言うと、こういう人たちも登場しました。99年7月発売、モーニング娘。「Loveマシーン」。

LOVEマシーン / モーニング娘。

99年9月発売モーニング娘。の「Loveマシーン」。つんく♂の作詞作曲、プロデュース。元シャ乱Qですね。今月は取材をしたことがあったり、ライブを見たことのある人の曲をかけようかなってことでお送りしてます。モーニング娘。は取材したことないんですけども、テレビの「ASAYAN」でオーディションから始めてましたからね。オンディーズの曲を5万枚売ったらデビューさせるっていうことを毎週追っかけてた。タイアップとは違うテレビとのコラボレーションで、それが面白かったので見てたんですよ。取材したことはないんですけども何となく知ってるような気にはなってましたね。シャ乱Qはライブを見てましたし、取材もしたこともありましたけども、つんく♂さんの才能がこういう形で発揮されるんだと思った例ですね。違うフィールドに出会う、違う場所をもらう、違う人たちと関わるってことで自分でも気づかなかったような才能が花開いた例なんでしょうね。

70年代にピンク・レディーがあったり、80年代におニャン子クラブがあったりしましたが、モーニング娘。はちょっと違う。リアリティって言うほど大げさじゃなくても、庶民性も含めて人懐っこいところがありましたよね。日本の未来を歌ってるわけですから。こういういろんなタイプが登場する、まさに百花繚乱の90年代後半ですね。この人も98年のデビューでした。99年10月発売になった椎名林檎さんの「本能」。

Rolling Stone Japan 編集部

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