Borisと明日の叙景が語る、ヨーロッパ・ツアーの舞台裏、ファンの熱狂

観客着用のTシャツ、歴史と自分たちが直結すること

ーなるほど。ちなみに、両バンドのライブの時、お客さんが着ていたTシャツなどは印象に残られました?

等力 結構バラバラだったかもしれない。

布 ベタなのでいうと、Sunn O)))とかAlcestとか……。

Atsuo あー、Sunn O)))は多いね。

Takeshi  Sunn O)))、Alcest、あとはenvyとか、MONOもいた。

布 あと、日本語のTシャツ着てる人が多かったですね。

Atsuo メイド服着てる人いたね。

Takeshi  そうそうそう。それで男性だったりね。

布 日本の文化好きですっていうことがわかる服装の人が多かったですね。

等力 これ微妙な話なんですけど、Burzum(※)のTシャツも3回か4回くらい見かけましたね。

Burzum:ヴァーヴ・ヴァイカーネスの個人プロジェクトであり、ブラックメタル史上、最も悪名高いバンド。ヴァーヴは急進的な国家主義者で、ノルウェー・シーンの犯罪傾向を先導(教会放火など)、同シーンの中心人物だったユーロニモスを殺害したことでも知られる。その一方で、残した作品(獄中で製作されたアルバムも)には優れたものが多く、異常に鋭い表現力とジャンル越境的な音楽性(特に電子音楽方面との接続)は後続に絶大な影響を与えた。メタルの歴史における最大の暗部の一つであり、歴史的な意義は否定できないが向き合い方が問われる存在でもある。

Takeshi  あ、いたね。

等力 結構いるんだな〜と思いながら。明日の叙景のライブ(Borisとのツアー後の)にも普通にいたり。あと、自分のツアーが終わった後、ロンドンでPanopticon(US出身のアトモスフェリック/フォーク・ブラックメタル)を観に行った時も「あっ、そのバンドのTシャツ着るんだ」「大丈夫?」みたいなのが結構いましたね。

Takeshi  まあ、でもキッズだよね。

等力 あまり考えてないというか(苦笑)

Takeshi 2年くらい前にBurzum知りましたみたいな感じで。

Atsuo そういう背景とかもう形骸化しててさ、シリアルキラーを楽しむみたいな。

Takeshi バッドテイスト的な感覚ね。

ーBurzumのTシャツは先日のkokeshi単独(6月25日、吉祥寺WARP)でも結構いたんですけど、Cannibal CorpseやCarcassのTシャツ着るのに近い感覚なのではとも思いますね。

等力 たぶんそんな感覚で着てるんだろうなとは思いますね。

Atsuo で、実際さ、海外に行ってライブとかやると、そういう音楽のヒストリーと自分たちが直結するじゃん。それでなんというか、切実なことになるんだよね。裏側にあるストーリーとか。それは実際のことだったりするから。そういう判断基準というのが生まれるよね。

等力 本当に切実な問題としてあって。僕らはライブが終わったあとみんなで写真を撮って上げてたんですけど、Burzumシャツの人が前のほうにいて。ライブ中に「あ〜、これ写真撮るときどうしようかな」みたいな(笑)。ライブ中それのことしか考えられなくなったこともありましたね。

一同 (笑)。

等力 街中でもBurzumシャツは2人見たし、普通にいて。「なるほど、いるんだな」と思いました。

Takeshi 文脈を知らない人にはどうでもいいことなんだろうけど、実際に裏側のストーリーを知ってる人間からすると、気になってしょうがないんだよね。

等力 そうですね。結構リアルに感じました。みんなも動揺してないかな?みたいな。僕らの物販を助けてくれたDog Knightsのダレンとかも、見かけるたびに「うわっ」って言ってましたね。「いるね」という報告も。そういうのに敏感な人もかなりいました。

ー良くも悪くもあまりこだわらない人もいるということですね。

布 もしかしたら、こだわってる可能性もありますね。

等力 場合によっては。でも、それで明日の叙景を観に来るのはよくわからないよ。

布 そうなると、私たちの差別はいけないことだと考えている部分が伝わってないということにはなりますね(苦笑)

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