シンガーズハイが語る、矛盾点から生まれる人間臭さ バンドで目指す意外な目標

ーバンドメンバーの皆さんそれぞれに今作の中で思い入れのある楽曲についてお話しをお聞きしたいです。

りゅーいち:「飛んで日にいる夏の俺」という曲は結構思い入れ深いですね。この曲は前からライブで良くやっていたんですけど、それを今回レコーディングすることになって。いざレコーディングでクリックを聞きながら叩いてみると、ライブでよく叩いていたのに全然上手く叩けなくなってしまって。そしたら内山くんから「クリックなしでやっちゃえば?」っていう提案をもらって、勢い任せにレコーディングしてみたんです。むしろクリックを聞かないで叩いた方がBPMの変化があっても面白いんじゃないかなと思って。

ーパンチインはせず、1発録りみたいな形でレコーディングしたんですか?

りゅーいち:そうですね。結果、音源に疾走感が出ていてライブ音源とはまた違うけど、ライブ感を感じる曲になったかなと思います。

みつ:特に思い入れがある曲は、5曲目の「あいつ」かもしれないですね。この曲はうっちーの楽曲の中で、4年前に僕が初めて聴いたものになるんです。それに初めて僕が弾いた曲でもあるので、思い入れは強いです。「あいつ」はうっちーの前のバンドで音源があったから、この曲のベースをどうやって自分の音にして、シンガーズハイの曲にしていくかっていう部分は色々と考えました。結果、自分なりに表現できたんじゃないかなと思います。

たいが:「Kid」は、最初に内山くんからスリーピースで作ったデモが送られてきた段階で、僕の方でリフを何パターンか考えていたんです。そしたら内山くんから曲の雰囲気に合わせた仮のリフがポンって送られてきて、聴いてみたら僕が考えていたフレーズと全く一緒のものがあったんですよ。「もうこれしかなくね。やっぱそうなるよね」みたいな感じで意思疎通ができたというか。しっかり曲を理解して良いものができたっていう達成感がありましたね。

内山:僕は常に曲を作り続けていると、常に少し自分ができないことをできるようになってみようという挑戦をしてみたくなるんです。そういう意味では、1番新しく作った「Soft」はすごく好きですね。今まで循環コードが好きで割と同じコードを繰り返していたんですけど、この曲では「ここはちょっと外してセブンスのコードを入れてみよう」みたいに変化を持たせることができるようになりました。コーラスワークに関しても、上と下で入れるタイミング、逆に消えるタイミングとかは、自分がやったことない新しいことをしたなと思います。歌詞に関しても、今まではこういうものを作ってみようってイメージを固めた上で作ることが多かったんですけど、「Soft」はあまりそういうことは意識せずに、そのままの自分らしさを出せればいいなと思って書きましたね。

ー内山さんの自分らしさという部分は、「Soft」の歌詞のどういったところに表れていると感じますか?

内山:歌詞の中で自己嫌悪に近いところがあったり。あとサビで「雪解け」とか季節を感じさせる言葉を入れているんですけど、季節の歌で描かれるものって綺麗な情景が多いと思うんです。でも実際は雪が降った後は、色んな人に雪が踏み潰されて泥がついて黒く濁った色になってしまう。自分が起きた頃には綺麗じゃなくて雪が道でぐちゃぐちゃになっている。「Soft」では、そういうリアルで汚いところを描いているので、理想ばかりを歌っていないところは自分らしいなと思いました。

ーありのままの自分を表現したいという思いは歌詞を書く際に常に頭の中にあるものなんですか?

内山:割とどの楽曲にもそういう思いは入っていると思いますね。人間って年を取れば取るほど色んな人との出会いや色んな経験をすることで、考え方が改まったり、少し許せるものが増えたりすると思うんです。歌詞では、自分の思っていることをそのまま書いているつもりではあるんですけど、少しずつ自分の変化が感じ取れたりするんじゃないかなとも思っていますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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