シンガーズハイが語る、矛盾点から生まれる人間臭さ バンドで目指す意外な目標

ー今回リリースされたEP『DOG』の一曲目「Kid」はまさに怒りの感情が全面に押し出されている曲になっていますよね。先ほどの「ノールス」からのストーリーでいくと、ヒットチャートやトレンドの音楽を汲み取った上で作った曲がドンピシャで世の中に受けて、そこからの「Kid」では逆に最近の流行歌や、リスナー側の姿勢、バンドマンなどに対して皮肉と風刺を利かせていますよね。

内山:この曲に関しては、ビートと曲が先にできた段階で歌詞だけがずっと出来上がらなかったんです。どうしようかなって悩んだ結果、お酒をぐいっと飲んで酔っ払った勢いに任せて詞を書いたんですよ。歌詞は曲が割とヒップホップ調のビートなのでAメロというよりもバースに近いんですよね。音楽が好きな人ほど攻撃的になって昨今の音楽に対して批判的に言いそうなことを並べた上で、でも自分たちが好きな音楽を自由に聴きたいだけなのにマイナスなことを言ってしまうってすごくもったいないし大人気ない、だから純粋に頭を空っぽにして音楽を楽しんで欲しいって思いにサビで落ち着きましたね。



ー「Kid」を聴いた時の感想として、歌詞の中で世の中に対する反骨精神やアンチテーゼが込められている一方でサウンドとしては聴き心地の良いキャッチーな要素やノリの良いビート感、グルーヴが盛り込まれている。そういった意味でこの曲は、現代の若者にとって目新しくも心に刺さるオルタナティヴな存在なんじゃないかなと思います。

内山:嬉しいです。今の時代、TikTokとかの流れを考えると本来3、4分ある曲を30秒に短く切り取って判断をするという考え方の人が明らかに多くなってきたと思うんです。そういう意味でこの曲は誤解を招きやすい曲にはなってしまっているのかもしれないなと思います。でもとはいえ楽曲全体としてはそういう気持ちで作っているし、それを踏まえた上で今後どういう風な曲を作っていったらもっと上手に伝えられるかなって考えたりはしましたね。

ー「Kid」は時期的には最近書かれた曲なんですか?

内山:去年末頃ですね。年末のうちに書いて割とすぐレコーディングしてその1カ月後にリリースっていう形だったんで、割とトントン拍子に作って出した曲です。

ーそういった意味でも曲の鮮度というか、衝動とか本能の部分で作っている感じが音からも伝わってきますよね。音楽に対するアティテュードの部分でも、ピュアに音楽を楽しむという強いメッセージを感じました。

内山:でももうちょっと大人になりたいですよね(笑)。音楽を聴く側になった時に、こうは思うけどこういうのも良いと思うとか、こういう風なことを言いつつもその反面で全く真逆の意見を持っている自分もいるみたいな、人間ってそういう矛盾する部分を内在しているなと感じることもあって。そういう意味で、このEP『DOG』に関しては、音楽性のばらつきや曲ごとでの歌詞の矛盾点が含まれているので、僕らの人間臭さが出ているんじゃないかなと思っています。

ー今作の中で具体的にはどういったところに歌詞の矛盾点が表れているんですか?

内山:「Kid」で「愛とか恋とか歌っちゃって しょうもない男に抱かれたようなテキトーな歌詞に浮かれちゃって」って言っている割には「飛んで火にいる夏の俺」では、夏だとか海だとかの勢いに任せて楽しんじゃっている男女を描いていたり。とは言いつつも「飛んで火にいる夏の俺」でも最後は、たかが男女のあれこれに振り回されて馬鹿じゃないって落とすことでうまく落ち着けているのかなとは思っています。

Rolling Stone Japan 編集部

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