TOOBOEが語る、ボカロ文化と和製ポップスのミクスチャー、求められる「現場力」の強化

「心臓」前と以降で変わった歌詞の考え方

—M2の「SOSをくれよ」はタイアップ曲ではないですよね。

「浪漫」がA面曲だとしたら、B面の曲はどちらかというと、自分の最近思っていることを歌うことが多いかもしれないです。



—今回の「SOSをくれよ」も、johnさんの思っていることを歌ってるんですか?

シングルを作る時は毎回、A面の曲ができてから肩の力を抜いてB面を作るんですけど、その2曲のバランスを見つつやっていて。今回、A面は生音をふんだんに使ったゴージャスな曲になったので、B面は全部一人で完結させたんです。トラックも全部自分で作って、ギターも鳴ってはいるんですけど、単音で録音して波形を自分でDAWで張っていくっていう人間的じゃない作り方をしてて、そこに最近思っている歌詞を入れました。僕、SNSに関しては面倒くさいなと思ってるたちで、そういう感情を、使ったことない語彙で歌ってみた曲です。けっこう分かりにくい歌詞だとは思うんですけど、その分かりにくさが好きだったりします。

—馴染みのない言葉を歌詞にしていく作業って大変じゃないですか。

最初のとっかかりのフレーズが出るまでは苦戦するというか。自分発信で言いたいことって意外とあんまり多く出てこないんですよね。ボカロ文化の癖だと思うんですけど、カッコいいカタカナのフレーズとかを誰かに歌われちゃったらもうそれは使えなくなってしまう。いい単語フレーズってボカロ界隈で取り合ってるイメージがあって。そういうのを避けて、面白いフレーズが出るまでマイクに向かって、仮歌レベルでいろんなフレーズを出して、比較的いいんじゃないかなってものを採用して1行目ができるんですよ。そこからどういう風に続いたら面白いかなって感じでいつも作ってます。

—歌いながら浮かんだ言葉を磨いていくんですね。

語感重視なので、最初のガイドボーカルは日本語か英語か分からないような言葉を入れてます。なんとなくその発音に近い言葉をはめ込んでみてやってますね。あと歌詞に関しては、「心臓」前と以降で変わったと思います。恥ずかしがらないようにしようと思ったんです。こういう言い回しって臭いかしら、とかも思うんですけど、恥ずかしいなって思う言葉も頑張って歌おうと。そこをコーティングすると聴いてる人に届かないって、他人の曲を聴いていても感じます。カッコつけようとしてる曲は届かないので、恥ずかしいこともちゃんと表に出すようにしてますね。



ーギターもTOOBOEの武器の一つだと感じました。「浪漫」はカッティングの切れ味もかっこいいですが、ギターはずっと同じものを使っているんですか?

そうですね。「心臓」とか「浪漫」は、TOOBOEバンドのメッシーさん(飯田”MESHICO”直人)に弾いてもらって、メロはその都度相談するんですけど、うちで録ってるギターは同じテレキャスを使ってます。

—johnさんのエレキギターとの出会いは?

本当に普通なんですけど、学生の時、実家にあったクラシックギターを弾いたのがギタリストとしてのスタートで。ぶっとい弦からスタートしているので、エレキに行き着いた時はすげー簡単だって思いました。逆にそれがよかったのかな。当時は浜田省吾さんとか斉藤和義さんとかが好きだったので、どちらかというとアコギのジャーニー感が好きで、今も家で暇な時はアコギを弾くんですよ。ただ、今のロック文脈でいうとアコギが前に出た曲って少ないので、ポイントで使う以外ではエレキギターに頼りがちですね。

—アコギから入って、いわゆるシンガーソングライター然としたアーティストではなく、ボカロクリエイターの方に行ったんですね。

ミュージシャンとして将来どうしようか悩んでる時、YouTubeでバルーンさんの「シャルル」って曲とかを聴いて、邦ロック系の曲もボカロに存在するんだってことを知るんですよ。当時はボカロに対して、初音ミクのキラキラしたポップス、みたいなイメージを勝手に抱いていたので、すごい衝撃を受けて。ボカロで渋いロックやってる人もいるんだと思って興味を持ちはじめて、初音ミクを衝動買いしました。当時、スガシカオさんみたいにギターを背負う憧れはあったんですけど、自分で歌っていくビジョンは考えてなくて。yamaさんに「麻痺」って曲とか「ブルーマンデー」って曲を提供したタイミングで、レーベルの方に声をかけられなかったら、多分今も歌ってなかったですね。

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE