TOOBOEが語る、ボカロ文化と和製ポップスのミクスチャー、求められる「現場力」の強化

TOOBOE(Photo by ゆうと。)

音楽クリエイターjohnのソロプロジェクト「TOOBOE」。johnはボカロPとしても活躍し、ネットシーンとJ-POPを行き来しながら、作詞・作曲・編曲・歌唱・イラスト・映像など、さまざまなクリエイティブを自ら手がけてきた。昨年4月に発表したメジャーデビュー曲「心臓」は自身最速でYouTube再生回数1000万回を突破、 同年11月にリリースした「錠剤」はTVアニメ『チェンソーマン』第4話のエンディングテーマとして起用され注目を集めた。彼の音楽には、どこかノスタルジーを感じさせる不思議な「味」がある。配信限定でリリースされたシングル「浪漫」の話を切り口に、その背景に迫ってみた。

【動画を見る】TOOBOE「浪漫」ミュージックビデオ

—アニメ化される1年くらい前にRolling Stone Japanの誌面で「チェンソーマン」の特集を掲載して、その時に藤本タツキ先生と担当編集の林士平さんのインタビューをしたんです。その後アニメを見て、TOOBOEさんのエンディング曲(「錠剤」)が作品の世界観を一番理解しているなと自分は感じました。

ありがとうございます。僕も原作が大好きですし、原作解像度では誰にも負けたくないって想いもあって、自分の持っているサウンド感も出しつつ原作愛をめっちゃ詰め込んだ一曲です。





—SNSを見てると、林さんとは一緒にゴハンしたり連絡を取り合ったりしているそうですが、お二人が波長が合うのもなんとなくわかる気がします。

林さんは話が面白いんです。たまにご飯に行ったりしてますね。他にもPEOPLE 1のDeuくん、syudouくんらを交えて、みんなで遊んだりもしました。

—syudouさんにもインタビューしたことがあるので、今回こうしてjohnさんに話が聞けるのを楽しみにしてました。まずは東名阪のワンマンツアー(「美味しい血液」)を無事に完遂して、手応えはどうですか?

今回、東名合わせてざっくり1300人ぐらいのオーディエンスの顔を見たんですけど、そんなことは人生でまず経験しないじゃないですか。しかもネットで活動してるとずっとお客さんの顔が見えなくて、本当に自分の音楽を聴いてる人がいるのか分からないまま活動が進むんですけど、たくさんのお客さんの顔を見れたので、そういう意味ではやっとお礼参りができたなっていう感覚ですね。



—今回のツアーと去年の初ワンマンライブ「解禁」を比較して、自分の中で成長を感じた部分はどこですか?

去年の5月にやった「解禁」とは、明らかにしゃべる量が変わったなと思いました。それはラジオに出たり、文化放送で自分の番組(『TOOBOEのわるあがき』)がはじまったり、ライブ経験を積んだりしたおかげでもありますし、今回はTOOBOEの事務所チームとバンドメンバーのみんなで集まって、TOOBOEってそもそも何なんだ?ってところから話し合ったんですよ。例えばアイドル的なノリなのか、バンド的なノリなのかっていろいろ話し合った結果、簡単に言うと陰キャ的な感じなのかなと。陰陽どちらかっていうと、陰の人たちにとって希望になるような人間を目指すことをテーマに構築しました。去年のライブでは、例えば武道館公演とかを見据えてはいなかったんですけど、今回のツアーはその原型となるようなライブを作れたかなって感じています。

—いわゆるアマチュアバンドだと、お客さんが全然いない時からライブをやり続けて、その積み重ねでリリースしていくっていう段階があると思いますが、TOOBOEの場合は先にネットを通じて曲が広がって、多くの人に周知した後にお客さんの前でライブをするわけじゃないですか。普通のバンドとはプロセスが全く違いますよね。だからこそ他とは違う強みもあるんじゃないですか?

でも僕はどちらかっていうと、ライブハウスで着実に名前が売れてCD等の全国流通で曲が広がってメジャーに行く、っていう形態を見て育ってる世代なので、長期で見ると結局そっちの方が強いと思ってしまうんですよ。現場力も高いし、ファンダムをしっかり作れてるところもある。一方ネットシンガーは、急にライブをやっても200人ぐらいのキャパでワンマンをはじめられたりする。来る人はみんな自分のことが大好きで、正直どんなライブをしてもよかったって言ってくれるとは思うんですけど、それがある種僕の弱点になると思っていて。なので現場力をつけることを目指して頑張ってます。

—現場力っていうのは、ライブ演奏およびライブパフォーマンスってことですか?

そうですね。今回のワンマンで特に目指したのが、音源通りに歌わないってことでした。その現場でしか見られないものを意識して、例えばあえてメロに添って歌わないとか、遊びを多く取り入れたんです。そもそもTOOBOEはコロナ禍で声出しができなくなってからライブ活動がはじまってるようなものなので、今回声出しも初めてだったし、地方でお客さんとローカルな話をしたのも初めてで。

—空間を通してオーディエンスとコミュニケーションするっていう点において、声出しやコール&レスポンスが可能になってくると、現場力が一気に試されますよね。

声出しできないライブって、僕らがいいなと思って組んだセトリとか演出が正しいかって実はよくわからなくて。バーン!って登場した時もシーンとしてるし、アンコールもシーンとしてるんですけど、今回のライブでは、次はあの曲やりますとか言うと、うわー!って盛り上がってくれる感じがあって。自分たちの作った構成は合ってたんだってやっと思えたライブでした。

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