Kenta Dedachiが語る、スケアリー・ポケッツとの制作、LAの大学生活で見つけた「歌うべきこと」

「血」というワードが出てきた理由

—今回のような制作過程で音源制作をするのは初めてですか?

Kenta:海外でレコーディングしたことはあったんですけど、最初のプロダクションから完成まで、自分がリードして決めていったのは初めてです。今まではサウンドプロデューサーからミュージシャンを選ぶところまで、例えばディレクターの方やKOSENさんがこの人がいいかもって提案してくれていたんですけど、今回は自分でニックを選んで、そしてニックとコミュニケーションしてセッションの準備をしました。僕も大学を卒業して、これからは自分でやりたい人と音楽をつくっていくことにすごく意味があると思っているし、今回そういうふうに作れたことに手ごたえを感じました。

KOSEN:まさにKentaサウンドになりましたね。

—では、最初に思い描いていたイメージ通りのものが完成したんでしょうか。

Kenta:そうですね。イメージ以上にいいものができたんですけど、僕が最初に作ったデモから全然ブレてない。ライアンがソロを弾いてくれたり、リズムも生の音が入って、新たな命が加わった感じがします。

—これまでの作品にあるような、ポップで柔らかい曲もKentaさんの魅力かもしれないけど、こういうちょっと乾いた曲もKentaさんの一面なんだなと思いました。

Kenta:今の“僕”ですよね。例えば、インディーズの時に出した『Rocket Science』(2019年)ってアルバムは、アメリカに行く前に書いた曲も入ってるし、「行くぞー!」みたいな、大学1、2年生のハッピーな感じが出てる。今は自分が成長したこともあると思うんですけど、世界を見た時に、ただ“いいもの”だけじゃなくて、ダークな部分もたくさん見えるし、アメリカに行った後にコロナ禍になって、その間にいろんなことを感じたんですよね。「Hunger for Blood」は18歳の時には書けなかったと思います。



—音楽を表現することは、今のKentaさんにとってどんな意味を持っていますか?

Kenta:“RAW”ってテーマで作り始めてから、ただみんなが聴いて心地よい曲を作るんじゃなくて、意味のある曲を歌いたいなと思ったんです。誰かを救う曲を作りたいし、自分が聴いていても救われる曲を作りたい。それは昔からある想いなんですけど、今はもっと強くなってる感じがします。ポップ・アーティストを目指したいと思ってるけど、自分の“RAW”の部分を忘れずに。ただ、そういう曲を作るのって苦しいんですよね。自分のことも知らないといけない。心に傷を負ってる人の気持ちにどうやって寄り添えるかを考えて書いた曲が「Hunger for Blood」なんですけど、書きながら自分がつらくなる時もあって、プロセスは重く感じられたりもしました。でも落ちこんでる時に、その気持ちを代弁してくれるような曲を聴くと救われた気持ちになるじゃないですか。音楽とかアートにはそういう力があると思うので、この曲がそういう作品になってくれたらいいなと思います。

—日々ノートに曲のアイデアになりそうなことを書いているそうですが、そこには日々Kentaさんが感じたことや思ったことも綴られているんでしょうか?

Kenta:常々思っている気持ちを書き記すようにしていますね。それがある時、歌詞になることもある。やっぱり書き記す作業は大事ですよね。ペンでノートに書くって、スペシャルな感じがします。

—人に何かを伝えるためには、自分のことを知らなければならない。

Kenta:大事なことですよね。自分がハッピーじゃないと、他人のことをハッピーにできない感じがする。この曲を作る時、“傷を負う”ってどういうことなのかを考えていたら、「blood」ってワードが出てきたんです。傷ついてる時、僕はすごく落ち込んじゃうタイプなんです。誰かに何か言われたりして、それが悪気のない言葉だったとしても傷ついて、幸せな気持ちが抜けていく。ある意味、(幸せが)吸われていく感じがする。この曲ではヴァンパイアが血を吸い取るようなイメージをだぶらせました。人って、血がないと生きられないじゃないですか。血が流れているから僕たちは幸せな気持ちにもなるわけで。

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