Kenta Dedachiが語る、スケアリー・ポケッツとの制作、LAの大学生活で見つけた「歌うべきこと」

Kenta Dedachi

シンガーソングライター、Kenta Dedachiの新境地を切り拓く新曲「Hunger for Blood」。YouTube上で様々な名曲をファンクカバーしてきた米LAのバンド、スケアリー・ポケッツのメンバーが録音に参加し、Kentaならではの繊細なトップラインに加え、バンドサウンドの豊かな表現によって、洗練さとスケール感がよりパワーアップしている。2018年夏、LAの大学で音楽を学ぶために渡米留学したKentaにとって、コロナ禍と大学卒業を経て、新たな章のはじまりを告げる一曲になったと言えるだろう。今回のインタビューには、KentaのプロデューサーでもあるKOSENも同席してくれた。



—2022年にリリースしたメジャー1stアルバムの『Midnight Sun』は、コロナ禍で日本滞在中に制作・レコーディングした作品ですが、今回のシングルはLAで作り上げた曲なんですよね。大学卒業のタイミングも重なって、Kentaさんにとって特別な一曲になったのかなと思いますが、周りの環境が作品に与えた影響もあるんでしょうか?

Kenta:大学って最初の1年間はすごく楽しいけど、3、4年生になると将来のことを真剣に考える時期になって、ちょっとシリアスになってくるんですよね。「Hunger for Blood」を書いたのは大学4年生の最終学期で。『Midnight Sun』を出した後にアメリカに戻って書いたんですけど、この曲を書いてる時、これからも音楽をやることは決めていたものの、少しの不安はあって。でもSNSでは失恋ソングを部屋で歌うのが流行っていて、悩んでることや傷ついてる時の気持ちを、そのまま歌うアーティストがTikTokの僕のフィードに多く出てくる。そんなことを友達と話していたら、生々しいことを歌うのもアリだなと思えてきて、この曲ができました。“生=RAW”って言ってもいろんな生があると思うんですよね。生の楽器でハッピーな曲もあると思うし。でも僕はハッピーな曲より、自分の芯にある、例えば痛みや傷に触れてくれる曲を書きたいと思ったんです。



—レコーディングは卒業後にしたんですか?

Kenta:レコーディングは卒業後ですね。留学ビザが切れるまでの2カ月間を、僕とKOSENさんとマネージャーさんで合宿してレコーディングしました。

—KOSENさんは、曲を作るパートナーとしてKentaさんのヴィジョンをどう捉えていましたか?

KOSEN:今回は、Kentaくんに100%近いものができたらいいなと思っていました。Kentaくんが作ったデモを基本大事にして。『Midnight Sun』の時は、アレンジ面でも細かくアドバイスすることもあったんですけど、今回はKenta Dedachiそのものをどうやって活かすかを第一に考えて、歌詞やアレンジの話をたくさんしましたね。

—楽曲に参加してくれたスケアリー・ポケッツは前から好きなバンドだったとか。彼らがレコーディング・ブースにいるのを見て、夢のような光景だったとVlogでも話してましたよね。

Kenta:スケアリー・ポケッツって、僕の中で“LAのバンド”ってイメージがあったんですよね。LAのライブハウスに行ったら会える人、LAのスタジオで楽しそうに音楽やってる人、みたいなイメージのグループだったんです。もちろん僕の友達もみんな大好きだし。今回レコーディングに参加してくれたニック・キャンベルは僕が大学1年生の頃、友人が一緒にレコーディングしたことがあって、僕もいつかやりたいなって思ってたんですよね。しかもスケアリー・ポケッツのエンジニアでもあるケイレブ・パーカーは僕の大学の先輩で、大学の説明会みたいな場で話したことがあるんです。あとからスケアリー・ポケッツのエンジニアもやってると聞いて、彼ともいつかできたらなと思っていて。最初はInstagramでニックにDMしたんですけど、すぐ返してくれて、ミュージシャンの相談をしたら彼のコネクションで集めてくれました。おかげでコミュニケーションもスムーズで、すごくいいセンスの持ち主ばかりで、最高でしたね。



—DMでオファーしたんですか?

Kenta:はい。実際に何曲か聴いてもらい“RAW”というテーマの説明をして、「、1月から2月にかけてレコーディングしたいんだけど、その時期って空いてますか?」って感じで。そしたら「Sure man!」って返事が(笑)。楽しい人ですね。バンドメンバーの人たちも、KOSENさんと歳が近いのかな。

KOSEN:俺とはたぶん世代一緒だよね。「12歳の時、何聴いてた?」って話してたんだけど、レディオへッドやレッチリも好きだったけど、ミーターズも好きだったとか。そういう感覚も共有できるし、音楽的に信頼できるというか。

—レコーディングにあたって彼らに何かリクエストはしましたか?

Kenta:演奏のニュアンスとかを伝えて、こういう音にしたいってレファランスを送ったりしました。レコーディング当日はケイレブに、「ちょっと錆びたギターの弦の感じで弾きたい」って説明をしたら、「だったらラバーギターじゃない?」って。ラバーギターっていうギターが今LAで流行ってると聞いて。ブリッジがゴムになってて、ガットギターとスティールストリングのアコギの中間みたいな音なんですけど、ギタリストのライアン・ラーマンにはそれで弾いてもらったり。スタジオでいろいろアイデアを出しながら決まっていった感じはありますね。ほんといいヴァイブスで音楽を作ることができました。

KOSEN:レコーディング初日のスタジオが、元々パンク小屋だったんですよ。

Kenta:あー、そうでした! エコパークの近くにある普通の住宅街にポツンとあって。昔はパンクロックをガンガンやってたみたい。そこをスタジオに変えたらしくて。

—ライブハウスだったってこと?

KOSEN:そうなんですよ。住宅街のこんな小さいところでパンクを鳴らしてたなんて、信じられない。LAのスタジオは、行くとこ行くとこみんな個性的でしたね。

Kenta:DIYですよね。そこにあった卓も普通の卓じゃなくて、アナログとデジタルを混ぜた、なんかのプロトタイプみたいなやつで。

KOSEN:あんな卓は見たことないですね。

Kenta:エンジニアの人も、これどうやってやるの?みたいな感じで。

KOSEN:みんな個性があるよね。人だけじゃなくて、場所も。

—ドラムの鳴りもすごくいいなと思いました。

Kenta:ケイレブ・パーカーは録る音にこだわる人で、マイクの位置を何回も変えたりして、すごく凝ってました。そういうのもよかったですね。

KOSEN:ニックに、「こういう感じの曲だから、こういうスネアの音が欲しいんだけど」って事前に伝えたら、ガレージロックっぽい音を鳴らす人がスタジオに来てくれて、それが曲にバチッとハマったんです。LAには“自分の音”を持った人がたくさんいて、それがないと生きていけないんじゃないかなって感じました。

Kenta:スケアリー・ポケッツっていうバンドもプロジェクトというか、毎回同じメンバーじゃないんですよね。曲によってベーシストが変わったりする。KOSENさんが言ったみたいに、「この人はこれが得意」みたいなものが明確にあって、ミュージシャン同士のネットワークもあるから、「この曲やるときはこの人に頼もう」ってできるんだと思います。それはいいですよね。

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