SKY-HI×SOIL社長が語る、BMSG POSSEがジャズフェスに出演することの意義

 
ラブシュプの魅力、2年連続出演に向けた意気込み

—昨年は先述のコラボ以外にも、SKY-HIさんとセルジオ・メンデスの共演に、SOILが「Love Supreme」を演奏したりと、フェスならではのハイライトが目白押しでした。ラブシュプへの印象についても聞かせてください。

SKY-HI:さっきも「会場の抜けがいい」という話をしましたけど、動線の良さ、緑の多さ、座れる場所が多いのもそうだし、「居心地が良い」っていう言葉がすごく似合うような感じがしました。

気になる出演者はたくさんいるんだけど、「急いで移動しなきゃ!」っていうよりは、移動している道中もサウンドチェックとか、ステージ間にあるDJブースから音がずっと流れていて。興奮の絶頂っていうよりは、気持ちいいところにずっと漂っていられるような感じの2日間でした。

社長:やっぱり会場の、あの大自然じゃないですか、秩父の山の中で、空気のうまさと場所のパワーみたいなものがありますよね。なおかつ、無料で楽しめるゾーンもあって。ジャズフェスというものの懐の深さをちゃんと表現した空間だと思います。(お客さんの)年齢層も広かったと思うし。

SKY-HI:うん、家族で過ごしやすい場所ですよね。


Photo by Tamami Yanase 

—「懐の深さ」といえば、オーセンティックなジャズの意匠も尊重しつつ、多様なジャンルを横断する自由な好奇心が、ラインナップにも反映されているようにも感じました。

社長:まさに。それは本家のLove Supremeも大切にしてきたことですよね。「フォーマットとしてのジャズ」みたいな解釈もある一方で、歴史と共に音楽が発展していく過程で、ジャズを母体にいろんなダンスミュージックが生まれていったわけですよね。そういうジャズの歴史へのリスペクトが根底にありつつ、「そんな堅苦しいものじゃないんだよ」っていうメッセージ性も感じますし、且つジャズのステレオタイプな概念からも決して外れてるわけではない。絶妙なラインナップですよね。

SKY-HI:その話でいうと、お客さんとして会場を回ってるときは敷居も低いし気持ちがいいんですけど、いざプレイヤーとして上がるとなったら、ハードルの高さもやっぱりあって。出番の15分前まではすごく楽しいんですけど、いざ「出るぞ」ってなると、のしかかってくるプレッシャーみたいなのが結構ありました。

社長:すげぇわかる。だって、グラスパーがいるんだよ、横に(笑)。

SKY-HI:環境がいいだけに、出演者も他のアーティストのライブが観やすいんですよね。他のフェスとかだとセンシティブになるところを、ラブシュプでは結構ラフにいっぱい観れたので。その代わり、質の高いライブをずっと観ている状態で、そのあと自分がステージに上がるというのは、ちょっと異常な緊張感がありました。


Photo by Tamami Yanase 

—2年連続の出演となる今年のラブシュプでは、SOILがレジデンシャル・バンドを務め、SKY-HIさんとBMSG POSSEが大々的にフィーチャーされています。お二人が「フェスの顔」となった感もありますが、そういったポジションを任されることについて、どのように受け止めていますか?

社長:ホスト・バンドっていうオファーをいただいたのはめっちゃ嬉しいです。しかも、2日間とも任されるという。この話でよく例に出すのが、ザ・ルーツがそういうポジションでやってらっしゃるじゃないですか。憧れてたんですよね(笑)。

SKY-HI:ははは(笑)。

社長:『ブロック・パーティー』というドキュメンタリー映画で、ザ・ルーツがずっと演奏しているところに、ニューヨークのラッパーたちが次々と出てくるんですけど、イメージはそれですよね。こういうご指名をいただけるのは本当に嬉しいです。



—SKY-HIさんはいかがでしょう?

SKY-HI:「やったー」って気楽に喜べる気持ちと、「どうすっぺかなー」っていう気持ちの両方ですね。でも、SOIL先輩とそういう形で一緒にやらせてもらえるので、甘えられる気持ちもあります(笑)。

—「どうすっぺかなー」っていう気持ちもあるんですか。

SKY-HI:ありますね、お客さんがいい意味で混ざってるので。ふらっと訪れた家族連れの方もいれば、ずっとジャズが好きな方、自分より遥かに年季の入った音楽ファンもたくさんいらっしゃるので。そういう方々に失礼がないようにしたいっていう気持ちがプレッシャーにもなりますね。


昨年のラブシュプを振り返るアフタームービー

—SKY-HIさんはここ一年でも本当に幅広いフェスに出演されてますよね。POP YOURSなどのヒップホップフェスから、ラブシュプにODD BRICKといった海外アーティストがトリを務めるフェスまで。まさしく「八面六臂」で様々な現場に出演しながら、国内外のシーンやオーディエンスを繋ぐハブとしての役割を果たしてきたようにも思います。その点についてはいかがでしょうか?

SKY-HI:ハブというよりは、「やりたいようにやってたらこうなった」っていうのもデカいですね(笑)。たしかにラッパーの中でも、いろんなジャンルや国籍の方とコラボレーションしてきた数が異常に多いタイプではあると思います。SOIL先輩の前でいうのはおこがましいですけど。

社長:いえいえ。

SKY-HI:でもそれって、いろんなものが好きでいろんな場所にいたら、それこそ「キメラ」みたいになっていたところもあって。使命感もなければ野望もなく、純粋に好きっていう気持ちでずっとやってきたので。とはいえ、責任は感じますけどね。

遊びに行く分には、誰のライブを観るのも自由じゃないですか。グラスパーのビルボードライブもそうだし、メジャー・レイザーやディアンジェロが日本に来たときも、ジャスティン・ティンバーレイクを観るためにベガスに行ったのも楽しかった。ただ、自分がその末席を汚させていただくとなったら、愛情の分の責任はやっぱり感じます。

—それこそSOILも、海外のフェスやジャズシーンで名を馳せつつ、国内でも様々なジャンルのミュージシャンと積極的にコラボを重ねるなど「越境」を実践されてきたように思います。そんな社長は、SKY-HIさんとBMSGの快進撃をどのように見ていますか?

社長:僕が日高社長を絶対的に信頼しているのは、ルーツがストリートにあるっていうのが大きくて。メジャーの風土で活躍しつつも、渋谷の小箱に足を運び、そこで音を聴いてる。僕もずっと渋谷の小箱でレギュラーDJをやってたりするんですけど、そういうカルチャーに根っこがあって、アンテナを張っていて、ストリートで鳴っている音楽が体に染み付いている人がメジャーに行って、それをSKY-HIっていうフィルターを通して表現をしているところがすごいなと。格好だけじゃなくて実力がちゃんと伴っている。だって、この人すげぇもん(笑)。スタジオで一緒に音を出してると、本当にそう感じる。

SKY-HI:ありがとうございます(笑)。

社長:で、そんな日高くんが責任をもって下の世代を育てる、カルチャーを繋いでいこうとしてるなっていうのが伝わってきますよね。僕も実際に、BE:FIRSTのオーディションの様子とかTVでずっと見てましたし。それで実際に今、彼らがステージに上がるようになり、責任を背負ってやってるのが、出てくる音からも伝わるので。これからもやらなきゃいけないことがたくさんあると思うけど、本当に目が離せないですよね。我々がその一部として、お力になれるというのはすごく幸せなことです。

 
 
 
 

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