TAKUROが語る死生観、GLAYとして後世に残したい楽曲



田家:2022年9月去年の9月に発売になりました60枚目のシングル「Only One, Only You」。これは『The Sound Of Life』と同時期に作っていた曲だった。

TAKURO:本当に同時進行でしたね。『The Sound Of Life』のレコーディングをやりながら日本に「Only One, Only You」のデータを送るとかそんな感じで。

田家:同時進行での、自分の時間の使い方とかメンタル面とかクリエイティブのある種の要素の配分だとかっていうのはあるんですか。

TAKURO:曲自体の骨格が決まれば、あとはギターフレーズの話ですね。『The Sound Of Life』に関しては、どこまでいってもプロデュース的なところじゃないですか。もう曲ができていたのでJIROに渡して、そのやり取りの中でもっとこうした方が良いという演出家としての仕事と、大好きなギタリストとしての仕事をして。それはお互い気分転換にもなるし。この曲がリリースされる4カ月後までには戦争が終わってくれたらもう俺の勝ちだってことで、俺の祈り勝ちだみたいな感じの思いでしたけど、残念ながらシンクロしてしまうような内容になりましたもんね。

田家:『The Sound Of Life』が言葉がない作り方で、その分こちらの言葉に対して思うことがたくさん増えてきたり、言葉に力が入ったりっていうバランスはあったんですか。

TAKURO:あります。「Only One, Only You」に関しては、何周期かに現れる自分の遺書的な、遺言的な、それこそ自分の子供たちはじめ、後世に残る人たちに何か迷ったときに気づけるようなヒントになるような言葉を残したいなって思いで書いています。言葉はいいですよね。100年後へのメッセージも容易にできるじゃないですか。その当時の人たちが何を思ったか後の連中が知ることができる。こんな画期的な発明は本当にないですよね。1000年だって越えられる。GLAYの曲としての体が100年後200年後どんなメディアで聞かれるかわかんないけれど、少なくとも文字で書かれたGLAYの歌詞は1000年後にも誰かに手渡せるかもしれない。その責任があるから生半可なことは書けない。ちゃんと自分が今いる時代、感じたことを後世に残したいっていう気持ちは他より強い曲ですね。

田家:夏目漱石が100年後を意識して小説を書いていたと読んだことがあるんですけど、TAKUROさんも何年後っていうのは、どの辺から思い始めたんでしょう。 最初からずっとそういう自分の作品の残り方みたいなことは頭にありました?

TAKURO:いや全然。だって「Father & Son」とか「THINK ABOUT MY DAUGHTER」とか、子供いないのに書いているもんね。やっぱり自分の親父が亡くなった38を数年後に控えていて、かつ自分が父親になったとき、こいつが50歳のとき俺はいないかもしれないなって。強力にときの流れの意味みたいのを把握したとき、意外にいられる時間は少ないかもしれないなと思って。俺がいなくても迷ったときに何か人生のヒントになるようなもの。それを時々語ることも大事だし、こうやって曲として繰り返し聞いてるうちに何かヒントになればなって。自分の父親がそれしてくれなかったので、せめて自分の子供たちにしてあげたい気持ちはあって。人間は何度も間違えるし、2000年前からそんなに大して成長してると思えない。やっぱり3歩進んで2歩下がるようなことでしょ?今ある正しいことが100年後に正しいとは限らないし、それはもう歴史が証明してくれてるから。だからこんな考えがありました、こんな事象がありましたっていうのを未来の人が受け取ってくれればいいなとは思いますけどね。

田家:コロナ禍と戦争が起きている中で、こういうバンドがこういうことを日本で歌ってました、という証しが、令和になって発売されたGLAYの作品なのかも知れません。もう1曲新曲をお聞きいただきます。ツアーのタイトルです。 「THE GHOST」。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE