藤井 風、MFS、なとり…日本発バイラルヒットから広がるグローバル進出の可能性

 
YOASOBIの海外人気からたどり着いた「仮説」

新たな日本発の楽曲が海外に広がっていった2022年。その中でも、YOASOBIの「夜に駆ける」は、2021年から2年連続で「海外で最も聴かれた国内アーティストの楽曲ランキング」TOP3にランクインするという強さを見せている。YOASOBIの楽曲の中でも、「怪物」と「祝福」は海外で強い人気を誇る日本のアニメ関連の楽曲だが、そうではない「夜に駆ける」がこれだけの期間、海外で支持され続けているのは画期的なことだ。YOASOBIのリスナーのシェアを見ると、日本は4割で海外が6割。海外で一番多いのはインドネシア、次いでアメリカ。フィリピンと台湾がそれに次ぐ。

「YOASOBIはミュージックビデオがアニメーションで作られることが多く、初期はアーティスト写真もイラストでした。そういった部分で、海外に一定数いる日本のポップカルチャー好きへの訴求力が高いのだと思っています」(芦澤氏)



海外でのYOASOBI人気を深掘りしていく中で、ひとつの仮説にたどり着いたと芦澤氏は続ける。

「日本人からするとシティポップ、アニメ、ローファイヒップホップは一見バラバラのカテゴリーに見えますが、海外から見るとすべて同じ地平にあるのではないかと思いました。例えば、レイニッチが日本のどの楽曲をカバーしているかというと、『真夜中のドア』、YOASOBI、LiSA、なとり等。彼女にとっては全部が日本のクールなポップカルチャーなんだと思います。シティポップのリリックビデオやユーザーによるプレイリストのカバーのアートワークに日本のアニメーションが使用される割合はとても高く、また遡れば80年代に放送されていたアニメ『シティーハンター』にシティポップの楽曲が多く使用される等、アニメとシティポップはその頃から交わっていました。例えば海外で人気の高いNujabesの楽曲が投稿されている動画にはアニメーションが使用されているケースが多い。それはNujabesがアニメ『サムライチャンプルー』のサントラを手掛けていたことともリンクしているのかもしれませんが、ローファイヒップホップとアニメの親和性も高いんです」(芦澤氏)



サウンドにどこか哀愁味があり、アニメとの親和性が高い──海外からすると新鮮に響く日本の楽曲を代表する存在としてYOASOBIが支持されているという。

「例えば“Hyperpop”という言葉はもともとSpotifyのプレイリスト名から生まれた言葉です。言葉が生まれたことによって、『この音楽は新しいムーブメントなんだ』と定義づけされ一気に盛り上がりました。シティポップとアニメとローファイヒップホップを繋ぐ、“J-POP”に変わる日本のポップカルチャーを括る新しいワードを生み出すことができれば、今は点になっている現象が面で捉えられ、K-POPのような一体となった盛り上がりが生まれる日がいつか来るのではないかと期待しています」(芦澤氏)



2022年は日本語曲である「死ぬのがいいわ」や「BOW」や「Overdose」のグローバルヒット、そしてYOASOBIの海外での支持がキープされ、日本の楽曲の火が沸々と燃え始めている状態。それが一斉に燃え広がったら、日本のポップカルチャーは一気に強い存在感を持つかもしれない、ということだ。

従来の海外デビューというと、洋楽を意識した音作りをするケースも珍しくなかったわけだが、その価値観も変わった。

「『死ぬのがいいわ』は日本語の曲で、藤井 風も日本語のアーティスト名。昔のロジックからしたら、『これでは海外デビューできない』という話になっていたと思いますが、もうそういう時代ではない。ストリーミングサービスで曲を配信する=世界に対して発信しているということ。その感覚で日本発の世界に届く音楽をSpotifyとして発信していけたらいいなと思っています」(芦澤氏)

2022年に起きた事例を経て、2023年はさらに日本発のグローバルなヒットが生まれる可能性がある。どこにいたとしても、世界中のリスナーと繋がり、グローバルな存在になり得るのだ。

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