女性囚人が血まみれ流産、獄中出産の悲惨な現実 米

基本的にアメリカの刑務所制度は、男性受刑囚を想定して設計されている。何よりも出産用の設備を見てみれば、このことがよく分かる。多くの場合、妊娠した女性は分娩出産の際に医療施設に搬送される。ところが、留置所や刑務所に入れられる妊婦の数は年間推定5万8000人以上。政府職員による集計が行われていないため、実際の数字はもっと多いと思われる。つまり数千人もの女性が収監中、満足な設備のない矯正施設で出産しているのだ。

Prison Policy Initiativeというシンクタンクによれば、女性の収監率は男性の倍のペースで増加しているという。1978年と比べると、州刑務所の女性受刑囚数は834%も増加し、とくに貧しい有色人種の女性が圧倒的な割合を占めている。筆者のpodcast『Lava for Good』のシーズン2「Wrongful Conviction with Maggie Freleng」では、こうした女性たちの話や収監を取り巻く状況を取り上げている――妊娠中に不適切な治療を受けたという話や、出産中におぞましい環境に置かれたという話、母子対面の機会を与えらることなく新生児を取り上げられたという話などだ。

2018年の研究によると、妊娠した女性受刑囚を担当した病院看護士のうち82.9%が、患者が拘束状態だったと回答している。場合によっては常時拘束されていたという。

非人道であること、品位を貶めることは火を見るよりも明らかだ。女性たちは出産中に拘束されるべきではないし、新生児が生まれてすぐに心の傷を負うなどあってはならない。拘束状態での分娩出産は母子ともに身体に深刻なリスクを招くし、新生児の発育にも有害な影響を残す。アメリカ産婦人科学会(ACOG)はかねてより、拘束は医師の安全な医療措置を妨げる上に「屈辱的かつ不必要」だと述べている。

幸いなことに、いくつかの取り組みや支援団体によって拘束という野蛮な行為が排除されてきた。多岐にわたる連邦刑事司法制度改革案「ファーストステップ法」が2018年に可決されたことで、妊娠中、出産中、産後の回復期の拘束が禁じられた。可決にあたってはウィンさんの存在が大きかった。だがEqual Justice InitiativeというNPO団体によると、現在収監されている22万5000人強の女性のうち、この法律の保護対象となる連邦刑務所に収監されているのはわずか15%前後にすぎない。

そこでウィンさんも州レベル、とくに南部での法制定を自らの使命とした。現在少なくとも37の州で、妊娠した受刑囚の拘束を制限する法律が可決されている。

残忍性――それと出産時の深刻な健康リスク――を別にしても、拘束という慣習は常識にも反している。武装した看守が監視に立っている中、子どもを生んでいる最中の女性に暴力の危険や逃亡の恐れがどれほどあるというのか?

拘束以外にも、刑務所制度は出産にかかせない別の側面も蔑ろにしがちだ。そのひとつが母子の絆だ。

Akiko Kato

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