女性囚人が血まみれ流産、獄中出産の悲惨な現実 米

2011年、ヴェロニカ・タフトさんは妊娠3月でニューヨーク州ビンガムトンのブルーム郡留置所に収監された。なんとも胸がつまされる話だが、タフトさんは収監される1月ほど前に、収監中に子どもが生まれる時は必ず病院に連れていくと言い含められていたそうだ。タフトさんは出産中も出産後も、拘束された状態だった。

だがタフトさんいわく、最悪なのは出産後だった。息子に会えるのはたった2回、それも10分間だけだった。「車いすに足首と手首を拘束された状態で新生児集中治療室へ行き、息子と面会しました」と本人。息子はその後母親から引き離され、養護施設に送られた。タフトさんの信頼できる知人が息子の世話を申し出ていたにもかかわらず。

タフトさんは2016年に有罪判決を撤回された。だが、現在も息子を取り戻すべく戦っている。

一般的に、新生児と母親の絆が形成されるには産後数日から数週間かかる。赤ん坊が一番身近な人間と心を通い合わせる、子どもの発育には非常に尊い時期だ。このときに新生児が長期的な心理的影響を受け、大人になるまで尾を引くケースもある。多くの刑務所では、母親が赤ん坊と一緒にいられるのはせいぜい1~3日間。その後母親は施設に戻され、赤ん坊は親戚に引き取られるか、養護施設に送られる。

ある研究によると、刑務所内の保育所で育てられて早いうちから母親と触れ合った子どもより、幼少期に収監された母親から引き離された子どものほうが不安症や鬱になりやすいことが判明した。大事な時期を母子が一緒に過ごせるよう、刑務所内で保育所を運営している州は10にも満たない。

2021年7月、ミズーリ州は「ヘルシースタート法」を制定して新たな歴史の1ページを開いた。この法律により、絆を形成する重要な時期に収監中の親と新生児を離別させるトラウマ的な行為に終止符が打たれた。さらにこの法律では、出産前・出産後の母親が地域に根差した代替施設で治療を受けられるようになった。

いくつかの措置が講じられたおかげで変化が起きたものの、あまりにも多くの女性たちがいまだに出産前後、出産中に非人道的な扱いを受けている。変化を起こすのに手を貸したければ、様々な選択肢がある。ウィンさんのRestoreHERやThe Rebecca Project For Justice、アメリカ自由人権協会、Avocasy and Research on Reproductive Wellness of Incarcerated Peopleなど、変化を起こそうとロビー活動を行っている支援団体を応援する、あるいは提携を結ぶのもひとつの手だ。州議員に直談判して大義に加わり、妊娠中の女性受刑囚と新生児を保護する法律の可決を要求するのもありだろう。

どんな母親も、安全かつ健康的に出産する権利がある。どんな赤ん坊も、人間らしい扱いを受けてしかるべきだ。社会が人間の基本的ニーズを無視するなど、あってはならない。アメリカの刑務所制度は、妊娠中の女性受刑者に関する政策を見直すべきだ。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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