ハリー・スタイルズが「21世紀最初のロックスター」になった15の理由

11.
ファンが10代の女性中心であることを
スタイルズが躊躇なく誇る理由

元ワン・ダイレクションなのだから当然だが、当初スタイルズのファンは10代の女性が中心だった。そのことでアーティストとしてシリアスに捉えてもらえないことも少なくなかったが、彼は自分のファン層を恥じたことは一度もない。2017年のRolling Stoneのカバーストーリーでは、最初はアイドル人気が高かったビートルズの女性ファンを引き合いに出し、若い女性の先見の明とセンスの良さを称えている。

「ポップミュージック――これはポピュラーの略だよね?――を好きな若い女性が30歳のヒップスター野郎より音楽の趣味が悪いって誰が言える?」「若い女性たちはビートルズが好きだった。彼女たちがちゃんとしていなかったって言える? 彼女たちが理解していなかったと?」「10代の女性ファンたち――彼女たちは噓をつかない。もし君のことが好きだったら、そこにいるんだ。彼女たちは過剰にクールに振舞おうとはしない。君のことが好きだったら、ちゃんとそれを伝えてくれる。それって素晴らしいよね」


12.
「As It Was」のメガヒット以降
変化が見られるスタイルズのファン層

当初は10代の女性ファンが中心だったハリー・スタイルズのファン層だが、「As It Was」のメガヒット以降、変化が見られるようになったという。スタイルズは2022年のRolling Stoneのカバーストーリーで以下のように話している。

「『As It Was』は、いままでの楽曲の中でいちばん男性の反応が多い楽曲かもしれない」「変な発言に聞こえるかもしれない。だって、男性ファンを獲得することを狙っていたわけじゃないから。でも、気づいたんだ」

Harry Styles - As It Was (Official Video)


また、このカバーストーリーでは、スタイルズのファン層の変化を象徴するエピソードとして、このような話も紹介されている。

「『Late Night Talking』が大音量で流れるブルックリンのバーでは、男性が『認めるよ、俺はハリー・スタイルズが好きだ』と明かした。まるで、あるがままの自分を受け入れる過激な告白であるかのように」

Harry Styles - Late Night Talking (Official Video)



13.
初めて夢中になった音楽はエルヴィス・プレスリー

ハリー・スタイルズが初めて夢中になった音楽はエルヴィス・プレスリーだったという。Rolling Stoneのインタビューで、スタイルズはこのように幼い頃を回想している。

「初めて聴いた音楽はエルヴィス・プレスリーだった。小さい頃、よくカラオケでエルヴィスを歌ったよ。祖父母がいつもエルヴィスを聴いていたから。祖父のためにカセットのA面に僕が歌うエルヴィスの曲を録音して、B面にエミネムを録音した。そしたらなんと、間違えてうっかりエミネムのほうをかけちゃったことがある」

そんなスタイルズにとって、バズ・ラーマン監督によるエルヴィス・プレスリーの伝記映画『エルヴィス』に出演するのは念願だったに違いない。だが、スタイルズはギリギリのところでオーディションに落選。エルヴィス役の座はオースティン・バトラーが射止めた。最終的にスタイルズを起用しなかった理由について、ラーマンはこのように説明している。

「(ハリー・スタイルズがエルヴィスの)スーツに身を包んで、踏み出すしかない、というところまで来てたんだよ。ハリー・スタイルズは素晴らしい精神の持ち主で、彼については素晴らしいことしか言いようがない」「彼とも何かをやりたいと思うけど、本当の問題は彼がハリー・スタイルズだっていうことなんだ。彼は既にアイコンだからね」


14.
70年代ロックだけではなく
現行のインディロックにも深い造詣

ハリー・スタイルズが70年代のロックだけでなく、現行のインディロックにも造詣が深いのは、ツアーのオープニングアクトの人選からも伺える。

デビューアルバムのツアーでは、ケイシー・マスグレイヴスやメイベルと並び、ムナやウォーペイントを起用。そして2019年9月から始まり、現在も続いているLove On Tourは、ミツキ、アーロ・パークス、ウルフ・アリス、ブラッド・オレンジ、ガブリエルズ、コフィなどという非の打ち所がない人選である。2023年2月から始まるヨーロッパツアーのオープニングアクトは、「2022年最大の英国インディの新人」となったウェット・レッグ。スタイルズはわざわざカバーを披露するほどウェット・レッグのことがお気に入りだ。

Harry Styles - Wet Dream (Wet Leg cover) in the Live Lounge


ちなみに、スタイルズのバンドでドラマーを務めるサラ・ジョーンズは元ニュー・ヤング・ポニー・クラブ/ホット・チップのメンバー。こうして名前を挙げていくだけでも、スタイルズのインディロックに対する知識と愛情の深さを理解できるだろう。




15.
最新作は「東京スタイルのシティ・ポップ」

Rolling Stoneは「2022年の年間ベストアルバムTOP100」で、『Harry’s House』収録曲である「Music For A Sushi Restaurant」を「東京スタイルのシティ・ポップ」と評している。そもそも『Harry’s House』というアルバムタイトルも、細野晴臣が1973年にリリースした『HOSONO HOUSE』から取られたものだ。それゆえに、『Harry’s House』には「ハリー・スタイルズ流のシティ・ポップ」という側面があると言ってもいいだろう。

Harry Styles - Music For a Sushi Restaurant (Official Video)


細野晴臣 - HOSONO HOUSE


2022年はザ・ウィークエンドやBTSのRMがシティ・ポップを取り入れた曲を発表するなど、明らかにシティ・ポップは爛熟期を迎えた。ただ、いま「シティ・ポップ」と呼ばれているムーブメントは2010年代初頭のヴェイパーウェイヴにその源流のひとつを見出だせるように、もともとはインディ/アンダーグラウンドのカルチャーと親和性が高いものだった。現代のロックスターと呼ばれ、インディロックにも造詣が深いスタイルズが、シティ・ポップを取り入れてメインストリームできっちりとヒットさせたのは、まさに彼がやるべきことをやったと言うべきかもしれない。



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