ハリー・スタイルズが「21世紀最初のロックスター」になった15の理由

6.
期せずしてパンデミック時代の
アンセムとなった「Watermelon Sugar」

計らずも時代を象徴するアンセムを作ってしまうこと――それが優れたポップスターの条件のひとつだとすれば、ハリー・スタイルズはそれを満たしている。2019年にリリースされた2ndアルバム『Fine Line』に収録されている「Watermelon Sugar」は、2019年のリリース後に一度チャート外へと落ちているものの、2020年5月にシングルカットされ、同年8月には全米チャート1位にまで上り詰めた。

この曲がヒットした理由のひとつが、シングルカットと同時に公開されたミュージックビデオ。「このビデオを“触れること”に捧げる――2020年5月18日」というメッセージから始まる映像には、スタイルズがビーチで大勢の男女と濃密に触れ合う様子が収められている。

Harry Styles - Watermelon Sugar (Official Video)


2020年5月と言えば、世界的にソーシャルディスタンスが推奨され、他者と触れ合えることの大切さを人々が改めて噛み締めていた時期。だからこそ、性的な暗喩がリリックに散りばめられ、「これ無しで生きていけるかわからない」と歌われる「Watermelon Sugar」は、そのビデオの話題性に後押しされる形で、パンデミックという時代を象徴するアンセムのひとつになったのだ(ビデオの撮影自体はアメリカでソーシャルディスタンスが推奨される前の2020年1月に行われている)。


7.
BTS、シザ、リゾ、そしてフリートウッド・マックの
スティーヴィー・ニックスもスタイルズに夢中

2021年11月にロサンゼルスで行われたハリー・スタイルズのライブには、BTSのJ-HOPE、ジミン、V、ジョングク、そしてリゾやシザが姿を見せて話題となった。有名アーティストにもファンが多いスタイルズだが、一番のビッグネームのファンと言えばフリートウッド・マックのスティーヴィー・ニックスだろう。

ニックスはスタイルズの『Fine Lines』について、ツイッターで「よくやったね、ハリー。これがあなたの『Rumors』よ」と称賛の言葉を送っている。

ニックスの称賛ツイート


『Rumors』は1977年にリリースされたフリートウッド・マックの代表作にして、今も数多くのアーティストに影響を与え続けている歴史的名盤。2020年にTikTokでヴァイラルしたことをきっかけに再び全米チャートにランクインし、2023年1月現在も全米トップ40に入り続けている。累計売上枚数は4000万枚以上。ニックスがそんな自身のモンスターアルバムと『Fine Lines』を並べ称するのは、スタイルズに対する最大限の賛辞だと言っていい。

Fleetwood Mac - Rumours


Harry Styles - Fine Lines


また、スタイルズと彼の母親がフリートウッド・マックのライブに来たとき、ニックスは大ヒット曲「Landslide」を歌う前にこのようなMCをしている。

「この曲を私の小さなミューズ、ハリー・スタイルズに捧げたいと思います。彼は今日お母さんと一緒に来ているの。アンっていうのよ。お母さん、ハリーを立派に育てましたわね。彼は本当にジェントルマンですよ。優しくて、才能があって、ああ、本当に私はメロメロ。みんなもそうでしょ。この曲をあなたに捧げます」


8.
ソロ転向直後のスタイルズが
映画に端役で出演したことの意義

ハリー・スタイルズはワン・ダイレクション解散翌年の2017年、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』に出演している。彼に与えられたのはアレックスという名の英国兵役で、決してポップスターに相応しいメインキャストでの出演ではなかった。

映画『ダンケルク』本予告


だが、そのキャスティングを受け入れたスタイルズの選択を、音楽評論家の田中宗一郎はジョン・レノンを引き合いに出して称賛している。田中はPOP LIFE: The Podcastで以下のように話している。

「たとえ本人が求めていなくても、ポップスターが映画に出るとなれば周りがその名声に見合った配役をお膳立てしてしまうもの。でもハリーには、そこから切り離されたい、等身大の自分でいたい、という衝動があったということですよね。キャリアの変節点に戦争映画に端役で出るというのは、奇しくもジョン・レノンがやったことと同じです(『ジョン・レノンの 僕の戦争(原題:How I Won the War)』、1967年)。自らの肥大したパブリックイメージやアドバンテージを使わずに何が出来るのか、自分でも試してみたかったんだろうと思います」

なお、クリストファー・ノーラン監督はスタイルズをキャスティングした際、彼がどれだけ有名かを把握していなかったとAP通信に話している。

「ハリーがどれほど有名なのか、わかっていなかったんです」「私の子供が彼について話したりしていましたけど、そんなによくわかっていませんでした。だから真相は、彼が役に素晴らしくフィットしたからキャスティングしたのであり、彼は本当にその役を勝ち取ったということです」


9.
『Fine Lines』に潜む
ジョニ・ミッチェルからの影響

ハリー・スタイルズは2ndアルバム『Fine Lines』で、ダルシマーという打弦楽器を演奏している。この珍しい楽器を使うことにしたのは、スタイルズのフェイバリットアルバムであるジョニ・ミッチェル『Blue』で使われているからだ。

Joni Mitchell - Blue (Full Album) [Official Video]


しかも彼はジョニが使っていたダルシマーを製作した女性を探し出し、直々にレッスンまで受けている。『Fine Lines』でスタイルズが演奏しているダルシマーも、その女性が作ったものだという。

ハリーは2019年のRolling Stoneのカバーストーリーで、このように話している。

「大きなジョニの穴にはまっちゃったんだ」「『Blue』を通しで流しながら、ダルシマーの音だけずっと聴いていた。それから、60年代にジョニのダルシマーを組み立てた女性を探し出した」

スタイルズのソロ作における重要なコラボレーターの一人、キッド・ハープーンは、スタイルズと一緒にその女性に会いに行ったときのことをこのように回想している。

「彼女は『どうぞいらっしゃい』って言ってくれた」「それで彼女の家に行って、ハリーが『そもそも、ダルシマーってどう弾くんですか?』と訊いた。彼女は俺たちにレッスンしてくれたよ。それからボンゴを取り出して、3匹のでかいチェシャ猫よろしくニヤニヤしながらセッションしたんだ」




10.
『Fine Lines』の弦楽パートに
影響を与えたT.レックス

「ハリー・スタイルズが手がけた中でもっとも骨太かつソウルフルな楽曲が満載」とRolling Stoneで評された『Fine Lines』だが、ストリングスのパートはT.レックスの「Cosmic Dancer」を参照しているという。2019年のRolling Stoneのカバーストーリーでは、レコーディング中のスタジオで「Cosmic Dancer」を参考にしている様子が紹介されている。

「スタジオでは、彼(ハリー・スタイルズ)が弦楽器隊をチェックしていた。自分が求めるヴァイブを説明するのに、エンジニアに頼んでT.レックスの「Cosmic Dancer」を流してもらっていた。彼がガラスのこちら側で、Neveのミキサー卓に座ってミュージシャンに指示を出すのを楽しんでいるのがよくわかる。何度かリハーサルした後、インカムボタンを押してこう言った。『いいね、T.レックスっぽいよ。今まで聴いた中で最高のストリングスだ』。さらにもう一度ボタンを押して、付け加えた。『君たち最高だよ』」

T.Rex - Cosmic Dancer


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