ジェイコブ・コリアーが語る「メロディとは?」 観客とともに歌う理由、自分を信じる力

 
メロディと作曲、「スパークする」感覚

―これまでいろんな音楽を聴いてきたから、自分の中にたくさんのメロディが入っているという話でしたが、それでいうと過去に聴いてきたものに似てしまう怖さもあるのでは?

ジェイコブ:たしかに。でも、それは音楽を作るプロセスの一部だと思う。例えば、子供が言葉を覚えるプロセスと同じだよ。家族や友達の会話の真似をして音を覚えているでしょ。周りに溢れる音を聴いて、自分の表現に昇華させることは良いことだと思う。僕も以前は、他のアーティストの曲をよくアレンジしてきたけど、それは自分にとって良い勉強になった。ある意味で守られた環境の中で、いろんな音と関わることができるからね。

―なるほど。あなたは最初、カバー動画を通じて知られるようになったわけですしね。当時、自分のオリジナルのメロディを発表することに関して、怖さのようなものがあったのでしょうか?

ジェイコブ:そうだね。自分のスキルを磨くベストな方法って、すでに確立されたアーティストの周囲にいることだと思っていて。だからアレンジをしていたっていうこともあると思う。実は、曲のアレンジって作曲とそれほど違いはないんだ。作曲はメロディに関して即興をするけど、アレンジでも曲の周りに関して即興をすることができる。つまり、守られた環境で自分の軌道を掴んでいくことができるんだ。僕はここ2年くらい、アレンジのスキルを作曲スキルに活用しようとしてきた。今はその新しい方法での作曲に没頭している。とても楽しいよ。だって、僕のパレットにはたくさんの色があるから。たくさんの色を持っている分、ふさわしいものを忠実に表現できるようになったんだ。

―今までやってきたアレンジなどで得たものが、メロディを書くことにも生かされていると。

ジェイコブ:そうそう。




Photo by Mitsuru Nishimura

―メロディにアレンジが生かされているっていうのは、どういうことですか? 僕の中のイメージだと、あなたのアレンジはクレイジーかつ自由で、どう捉えるべきかわからないような部分もある。そのアレンジが、どうメロディを作ることに繋がるのでしょうか?

ジェイコブ:誰かの曲をアレンジするのと作曲するのはたいして違わない。でも、作曲はプロセスを分ける必要がある。言葉を書いてメロディを作って、ベーシックなハーモニーができたらアレンジをする。よし遊ぶぞっていう感じかな。僕にとってアレンジは一番好きな部分で、作曲は一番ワクワクする部分と言ってもいいかもしれない。どんな曲ができるかはまるで予測できないよね。もしかしたらクレイジーなリズムやハーモニー、面白いサウンドが生まれるかもしれない。摩擦が起こるスポットを見つけていく感覚だ。それを見つけたらスパークさせる。その火花を曲にしていくんだ。その感覚を掴む一番簡単な方法は、今までやったことないことをすることだと思ってる。アレンジは色々とやってきたけど、まだ作曲の経験は多くないから、その実験的なプロセスはとても新鮮なんだ。

―最初に、メロディは科学や数学じゃないという話をしてましたが、火花ということは、どちらかというと自然(Nature)に近いものなのでしょうか。

ジェイコブ:そうだね。音楽はいつだって、今この瞬間に起こっている。過去でも未来でもなく今なんだ。曲を聴くことだって同じようで毎回違うよね。さっき言った「スパークさせる」っていうのは身体的なことを意味するんだけど、そのプロセスで大事なことは、今に集中して自分に意識的になること。外からやってくるものを受け入れて、自分の中で作り変えるんだ。あとは自分を信じること。もしかしたら不可能かもしれないっていうギリギリのレベルにハードルを設定して、自分に「できる」って言い聞かせるんだ。そんなふうに今までやってきた。僕はいつも「これをやってみたらどうなるんだろう?」ってチャレンジを楽しんでいるんだ。それを楽しめる限りは、うまくいくと思っているよ。

Translated by Kyoko Maruyama, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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