ヘイルストームが語る、希望の道筋「ツアーこそが自分のいるべき場所」

人生における「聖域」とメンタル・ヘルスの問題

ー『Back From The Dead』では死者の復活、贖罪、教会の尖塔などキリスト教的なイメージがしばしば描かれていますが、宗教は“救済”になるものでしょうか?

リジー:それは人によるんじゃないかな。私はキリスト教の家庭に育った。大人になって教会には行かなくなってしまったけど、その文化がバックボーンにあるのよ。ロックという“悪魔の音楽”であっても、聖書にある表現を使ったりしている。自分はオリジナルなソングライターでありたいけど、文化に根付いたフレーズを引用することでリスナーと価値観を共有することも有効だと考えている。それにロック・コンサートと教会の礼拝のセレモニーの様式やオーディエンスの熱狂には共通するものがあるしね。

ジョー:人々が教会に行くのは、説明出来ない未知に対する答えや希望を求めている部分があるんだ。俺たちにとって、それに相当するのが音楽だ。音楽が答えであり、希望なんだ。人生において、そういう聖域は必要だよ。

リジー:2年ぐらい前、鬱状態だったことがあった。そのときジョーが「近所で友達がライブをやるんだ。見に行こう」と誘ってくれた。正直そんな気分じゃなかったけど何度も言われて、根負けして行くことにした。目の前の黒雲がスッと消えていくのを感じたわ。音楽に包まれて、安らぎを感じた。

ーリジーが提唱する“#RaiseYourHornsキャンペーン”について教えて下さい。

リジー:2018年からSNSで#RaiseYourHornsキャンペーンを立ち上げて、メンタル・ヘルスで悩んでいる人たちが1人で抱え込むのでなく、連帯することが出来るようにした。問題の解決にならなくとも、同じように考えている人がいると判れば、気が楽になるからね。アルバムのラスト曲「Raise Your Horns」は、そんな彼らに捧げた曲なのよ。タイトルだけだと“悪魔の角をした拳を突き上げろ!”というメタル・ナンバーだと思うかも知れないけど、ボーカルとピアノだけのバラードだったりする。

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ジョー:コロナ禍から学ぶことがあったとしたら、人間同士の繋がりの重要性だろう。我々は1人では生きていくことが出来ない。“社会的動物”としてお互いを支え合って、進んでいくんだ。そのことを再認識することで、他人に対しても寛容になれたんじゃないかな。そしてバンドとして再びステージに立つことで、見に来てくれるオーディエンスへの想いを新たにしたよ。

ー12月16日にリリースされた『Back From The Dead』デラックス盤にはシングル「Mine」を含む7曲が追加収録されますが、それらはアルバムと同じセッションで書かれたものですか?それとも新曲でしょうか?

ジョー:主に『Back From The Dead』の初期セッションで書いたものだよ。まだアルバムを作ることは決まっていなくて、ただ集まっていろんなタイプの曲を書いていた。あるとき「Back From The Dead」のリフとコード進行をプロデューサーのスコット・スティーヴンズが持ってきたんだ。これだ!と思って、新たに曲を書いていった。だからアルバムの曲はそれ以降に書いたものだった。「Bombshell」は例外で、かなり最初の方に書いたものだったけどね。初期セッションの曲にも良いものがたくさんあったけど、『Back From The Dead』の流れにしっくりハマらなかったんだ。ちょっとギャグっぽかったり、逆に深刻でシリアスだったりね。今回デラックス・エディションを出すにあたって、それらをボーナスとして追加収録することにした。バンドの異なった表情を垣間見ることが出来て、きっと楽しんでもらえるよ。

リジー:追加収録曲は“みにくいアヒルの子”みたいなものよ。毛色が違っても、可愛い子供であることは変わりがないわ。「マイン」はもう何年も前に書いた曲だけど、発表するタイミングを逃していた。この機会で聴いてもらえるのが嬉しいわ。

ジョー:「Mine」は『Vicious / ヴィシャス』(2018年)を完成させた後に書いたんだ。いつもアルバムを完成させた後、クールダウンするためにスタジオでアイディアを書いたり、ジャムをやったりする。そんなときに生まれた曲だよ。アルバム本編とは異なることをやってみようと、シンセっぽいフレーズを書いたんだ。1980年代っぽい、ミュージック・ビデオにデヴィッド・ハッセルホフが出てきそうな曲だ(笑)。




ジョー・ホッティンジャー(Gt)(Photo by Jason Stoltzfus)

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