リトル・シムズ来日公演、怒涛のラップと荘厳なサウンドで畳み掛ける「粋」な舞台

格調高いだけではないステージング

ハイライトは“101FM”だった。ステージから降りフロア前方を横断し、会場はこの日一番の熱狂に。“How Did You Get Here”での「熱唱」と形容したくなるような感情の機微を表現した豊かなラップに涙し、「女性同士、あなたが輝くのを見たい」と歌う“Woman”に共感し、最後は“Venom”で怒涛の70分間が閉幕。特にラストの“Venom”では、その凄まじい高速ラップに観客が唖然としたのは言うまでもないだろう。シムズのラップは一言一言がきちんと分離しており、それゆえに非常に律されたきびきびした発音として入ってきた。ラップするパートと感情を乗せて歌うパートをはっきりと分けているため、ラップがエモーションに引っ張られ崩れていくことがない。恐らく、その点もシムズの楽曲に格調高さを加えている。

しかし、格調高いだけではないのだ。コール&レスポンスで観客とコミュニケーションをとり、常に笑顔をこぼしながら優しい表情でショウを進めていた姿からは、絶妙なバランスの取り方を感じた。恐らく、この駆け引きの塩梅と根底に漂う色っぽさは、日本語の概念で言うところの“粋”にも近い。シムズは、“粋”だ。そしてそれは、今のヒップホップになかなか見ることのできない稀有なものだ。私たち日本人が嫉妬してしまうくらいに“粋”な舞台に、終演後深い溜息をつき、忘我するしかなかった。

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Photo by Tamiym Cader




ODD BRICK FESTIVAL 2022
日時:2022年9月23日(金・祝)
開場:10:00am / 開演11:00am
会場:赤レンガ地区野外特設会場
詳細:https://oddbrickfes.com/


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