フジロック×サマソニ運営対談2022 洋楽フェス復活への「試練と希望」

今年のフジらしさ、サマソニらしさ

―ここまでの話を聞いて、今年のラインナップがますます快挙に思えてきました。ここからは出演者について、まずはフジから聞かせてください。

高崎:こういうラインナップになるとは、社内でも正直予想してなかったんですよね。(開催時期が被った)裏のフェスが思った以上に多かったり、アーティスト側と動きが合わなかったりもして。それこそ、みなさんのヘッドライナー予想も見てますけど、今年はたぶん当てた人はいなかった。「だって自分たちだってわからなかったもん」っていう(笑)。でも結果的には、「フジらしいラインナップが揃ったな」っていうところに落ち着きました。

―このタイミングで、ヴァンパイア・ウィークエンドが初日ヘッドライナーで出演するのは驚きました。海外では動いてないですよね。

高崎:彼らはいろいろ経て「あ、着地した……」っていうところですね。個人的に注目してほしいのはブラッディウッド。飛び道具じゃないですけど、そういう人たちをサラッと入れて、「知らなかったでしょ?」みたいなブッキングをするのが好きで。ある意味フジらしいというか。

安藤:インドのメタルバンドですよね。聴いてみたら、アジアのお祭り感がありました(笑)。

高崎:当日は(2018年にフジ出演した)フィーバー333みたいに大雨でグチャグチャで楽しくなるか、もしくはピーカンで盛り上がるのか。いずれにせよ見届けようと思ってます。



安藤:僕はメタル担当なので、彼らやモンゴルのThe Huが気になってました。メタル以外だと、トム・ミッシュも出ますよね。ユセフ・デイズと共作したアルバム(『What Kinda Music』)をコロナ禍によく聴いてたので、ライブがどんな感じになるのか楽しみです。あとは個人的に好きなのが、3日目ヘッドライナーのホールジー。

2018年にRSJでインタビューしたとき、「2016年に初来日したときの大阪公演は、人生で一番勉強になったくらい最悪のライブだった。その日のことはしょっちゅう思い出すし、それでもっと頑張らなくちゃって思う」といった話をしていました。

安藤:あのときの大阪公演は申し訳ないことに売れてなくて。海外では勢いが出てきた頃だったので、「私、日本でこんな感じなの……?」っていうところから奮起したという話ですよね。



―日本でそういう経験をした人が、フジのヘッドライナーを務めると。

高崎:いい話じゃないですか! 本人も気合が入ってると思います。あとは彼女を筆頭に、ジャパニーズ・ブレイクファストやアーロ・パークスといった旬の女性アーティストが目立つのと、フジらしさでいえばドーズ(Dawes)。

いかにもFIELD OF HEAVENがハマりそうなジャムバンド系ですね。他にもハイエイタス・カイヨーテやジェイペグマフィア(JPEGMAFIA)、打ち込み系ならジョナス・ブルーもいる。結構いろんなジャンルのアーティストが揃えられたかなって。



―サマソニはまず、The 1975とポスト・マローンが(出演予定だったが中止となった)2020年のスーパーソニックから待ち続け、新作を携えた最高のタイミングでヘッドライナーを務めるのが感動的です。

安藤:そうなんですよね。あとはヒップホップやR&B、ダンスミュージック系が近年盛り上がるなか、リンダ・リンダズやビーバドゥービーといったロック系のアーティストが出演するのも、今後の流れを占ううえでも面白そうな気がします。マネスキンもそうですよね。久々に出てきた海外の大物ロックバンドだし、サマソニで初来日して、日本でも今後どうなっていくのか注目してほしいです。

高崎:洋楽シーンとしては、マネスキンが盛り上がらないと困るくらいの勢いですよね。僕もずっと社内でそう説明してきたので(笑)。少し昔ですけど、ザ・ダークネスがいきなりレディングのヘッドライナーを務めたときみたいな。そんなふうにロックブームが再燃してきてるなか、ヤングブラットが入ってるのもさすがです。




安藤:あとはサマソニらしいオールジャンル感というか。何でもアリだけど、違和感なく収まってるというか(笑)。

―サマソニらしさでいえば、カーリー・レイ・ジェプセンやセイレム・イリースなどのポップ系、TOMORROW X TOGETHERやCLというK-POP勢もそうですよね。

高崎:ミーガン・ジー・スタリオンもよくブッキングできたなって。

安藤:あと、今年はSONICMANIAもありますので。「サマソニ世代」という言葉があるのかわからないですけど、カサビアンやクーラ・シェイカー、あとはリバティーンズとか、その辺りが来るのも嬉しいですよね。

高崎:リバティーンズは胸熱ですね。日本に来るのは無理だと思ってたので、2015年のグラストンベリーで観ました。あのときはシークレット出演で、一本のマイクで二人が歌う光景に「ロックンロールだなー」みたいな。あと、ピート・ドハーティがバーバリーのトレンチコートを着てたんですよね。イギリスといえばトレンチコートだなーと思って……。
―買ったんですか?

高崎:はい(笑)。

安藤:すごくいいヤツ買ってるじゃないですか(笑)。



―こんなふうに海外勢の話ができるだけでも夢みたいですね。ちなみに夏フェス以降、来日公演はどうなりそうですか?

高崎:このあと朝霧JAMも復活しますし、現時点で日本のプロモーター各社が発表している公演だけでも大物揃いですので。まずはフジとサマソニが口火を切って、「来日公演が帰ってきた」という雰囲気が作れたらと思ってます。

安藤:ウチも年内は大物アーティストが中心になりそうですが、来年以降は新人や中堅まで幅広く招聘できたらと思ってます。

高崎:洋楽マーケットを盛り上げようにも、やっぱり生で見れないと難しいですよね。レコード会社の人ともそういう話になりますが、音源を聴いてからライブを観て、初めて「すごい!」と思えるというか。それこそ僕もスーパーソニックで「やっぱり違う」と思ったように、あの感覚がないと伝わらない気がしますし、それってバーチャルでは味わえないものだと思うんですよね。「これだ!」っていうのを、今年はみなさんに肌で体感してほしいです。

安藤:去年まではお客さんもルールに縛られて、様子を見ながら楽しんでくださってる感じでしたけど、今年はもっと開放的に楽しんでもらえるんじゃないかなと。

―辛い話題も多かったですが、最後に希望が感じられてよかったです。

安藤:こうやって振り返ってみると……気づいたら2歳も年を取り、何もしないうちに白髪も増えていた、みたいな(苦笑)。

高崎:空白というよりも黒歴史、そんな2年間でしたね。でも、会場に行けばきっと、「やっぱり楽しいな」っていう感覚を思い出すでしょうから。どちらのフェスにも、ぜひ足を運んでもらいたいですね。



FUJI ROCK FESTIVAL ’22
2022年7月29日(金)〜31日(日)
新潟県 苗場スキー場
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

SUMMER SONIC 2022
2022年8月20日(土)〜21日(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
公式サイト:https://www.summersonic.com/

SONICMANIA
2022年8月19日(金)幕張メッセ
公式サイト:https://www.summersonic.com/sonicmania/

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