中川五郎が語る、フォーク・ソングとの出会いからコロナ禍までを描いた自叙伝

一台のリヤカーが立ち向かう / 中川五郎

田家:村松俊秀さんというお名前が出ていましたね。

中川:横須賀の駅前でたった1人で歌ったり、反戦運動をしていたリヤカーを引いていた友だちがいて、彼の行動に僕はすごく感銘を受けた。村松さんだけではなくて、日本中、世界中にたった1人で何かを始めてやっている人がいる。それは現在でも過去でも、これから先であってもそういう人が出てきて、その1人の動きによって世の中が変わっていくんじゃないかなという思いを抱いて作った歌なんですよね。

田家:英語のナレーションはどなたなんですか?

中川:このアルバムは沢知恵さんがプロデュースしてくださったんですけども、ナレーションと言ったら変ですが、1955年にアメリカでバス・ボイコット運動をして公民権運動の母と呼ばれるローザ・パークスの有名な言葉を沢さんが英語で言ってくれているんです。

田家:さっき話に出た私の歌、私歌ということとはちょっと違う歌の作り方になっていますもんね。

中川:そうですね。1950年代、60年代のアメリカのフォーク・ソングに学んで、自分の歌を作ろうとずっと奮闘してきた中で自分なりの独自のフォークが初めて作れたかなと思ったのがこの「一台のリヤカーが立ち向かう」なんです。それで到達と言ったら変だけど、アメリカのフォーク精神を吸収しながら日本の僕が自分なりの歌を作ろうとしているその位置にようやく辿り着けたかなという手応えを感じました。

田家:2017年の2枚組のアルバム『どうぞ裸になって下さい』はそういう到達点のアルバムでもあります。今日お聴きいただく最後の曲は「風に吹かれ続けている」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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