マカロニえんぴつ・はっとりが振り返る10年間、王道と違和感のある音楽を作る理由

―ちなみに「俺だけに歌っている」と思わせてくれたバンドって誰ですか?

エレファントカシマシはすごく大きいです。「はじまりは今」とか「悲しみの果て」とか、エレカシの曲はほとんどがそうですね。絶望から立ち上がらせてくれる。高校生の頃は一丁前に失恋とかしていたので、傷心したときなんかはRADWIMPSの「me me she」とか「05410-(ん)」とか「25コ目の染色体」とか、野田さんの書く詞には本当に救われた。女々しさすらも細かいディティールで描くじゃないですか。どうしてこんなにも寂しいのかを、こっちが恥ずかしくなるくらい細かく描いてくれるから、自分のパーソナルに引っかかたんですね。そこで気づいたのは、歌詞の内容は細かくした方が普遍的になるということ。細部まで描いた方が色んな人に響くんだと。その逆だと思っている人も多いと思うし、僕もそう思っていたんですよ。あまり断定しないで間口の広い表現をした方が入り口は広がると、普通は思うじゃないですか?

―「あの子と行った下北沢のヴィレヴァン」じゃなくて「あの子と行った雑貨屋さん」みたいな。

そう。でも実際は、その反対だった。自分のパーソナルな面を描くからこそ、みんなのパーソナルにも混じり合う。それを教えてもらったのが野田さんの歌詞でしたね。あとは、洋楽で言ったらシカゴの「Hard to Say I’m Sorry」とか。

―あー、最高ですよね。

何を言ってるのかは分からないんだけど、とてつもなく良いことを言ってるぞ、と思ったんですよ。浄化してくれるというか、切ないメロディの中に希望が見える。「Hard to Say I’m Sorry」のようなメロディを書くのが、僕の永遠のテーマなんです。あとは、くるりにもGO!GO!7188にも救われたし、ジャパハリネットも大好きだったなぁ。もちろんユニコーンもそうだし、アジカンとか、その他多くのロックにすごく救われましたね。

―2000年代初頭ってバンドがすごく活気付いていたじゃないですか。今の音楽シーンはどう見えています?

SUPERCAR、くるり、GRAPEVINE、NUMBER GIRLとか、オルタナティブなロックサウンドがシーンを席巻していた90年代終わりから2000年代初め。あの辺のロックシーンが大好きだった自分からすると、現在の状況は寂しいですよ。今はヒップホップが人気じゃないですか。僕もヒップホップをカッコいいと思っていて、ぜひ自分のスタイルに取り込みたいなと思うアプローチばかりなんです。

―バンドの方はどうです?

それに引き換え、面白いことをやろうとしてるロックバンドがそこまでいないのかなと思う。だからと言って「ロックの可能性を若い子にも教えてあげよう」とお節介でやっているのではなくて。これだけ面白いことができるはずなのにな、という思いがあるんですよね。

Rolling Stone Japan 編集部

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