絶対に見過ごせない「4枚の重要アルバム」2021年10月~12月期リリース編

アデル 2022年2月8日、英ブリットアワードにて(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年12月25日発売号の誌面に掲載された2021年4thクォーターを象徴するアルバム4選の記事。

カニエとドレイクに続き、2020年代最初のニュースター=リル・ナズ・Xのアルバムが送り出されるなど、2021年後半は一気にビッグリリースが続いた。そして2021年の締めくくりには、この数年ずっとグラミーに寵愛を受け続けてきたアデルとシルク・ソニックが相次いでアルバムをリリース。どちらかと言えば、オーセンティックな二作品が相次いだことも、混乱が続く社会からの無言の要請だったのかもしれない。では、そんな2021年4thクォーターの中から絶対に見過ごしたくない4枚のアルバムを紹介しよう。

1. Adele / 30



発売からわずか3日で2021年にもっとも売れたアルバムに躍り出たアデルの新作『30』は、彼女がこのまま「アダルトオリエンテッドなバラッドの女王」の道を邁進するだけではないことを告げている。

盟友グレッグ・カースティンとそのほとんどを作り上げたアルバム前半は、比較的に手堅い出来。周知の通りこれは離婚をテーマにしたアルバムだが、別れの痛みや幼い息子への罪悪感がリッチなサウンドと圧倒的な歌唱力で情感たっぷりに表現されている。本作はまさにアデルが得意とする――ピッチフォークが言うところの「共感爆弾(empathy bombs)」の連続であり、誰もが彼女のストーリーを自分のものとして感じ、その世界に酔いしれることになるだろう。

ただ、本作で何より目を引くのは起用しているプロデューサーの人選だ。チャイルディッシュ・ガンビーノとの仕事をはじめ、近年は数多くの劇伴を手掛けるルドウィック・ゴランソン、ソーやリトル・シムズなどの仕事で知られるインフロー、そしてアラマバ・シェイクス『サウンド&カラー』のエンジニアとして名を上げたショーン・エヴェレットなど、保守本流と目されているアデルにしてはかなり挑戦的なのである(マックス・マーティンとシェルバックという泣く子も黙るポッププロデューサーたちも参加しているが、見事にアルバムの完成度に水を差している)。

そのプロデューサー陣の選球眼と全体の配置のバランスは見事というほかない。特にインフローのデッドで乾いたソウルサウンドが聴ける後半の3曲は白眉だ。クラシックなポップの伝統へと接続した安心安定のアデル節は守りながらも、時流を汲み取った刺激的な冒険にも少しばかり手を染める。『30』はそんな今の彼女にとって理想的なバランスで作られた作品だ。

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