かつてのロックドラマーたちは、アリーナでの壮大なソロ演奏で伝説となった。だが昨今では、お気に入りの曲をカバーしてYouTubeやInstagramにアップロードして莫大な数のフォロワーを獲得できれば、有名になる可能性が広がる。動画が拡散するかどうかは、ドラムチョップよりも見せ方や独創性、聴く者の心をつかむコンセプトのほうが重要だ。米ローリングストーン誌が選んだ、注目すべきオンラインドラマー4人を紹介しよう。1. デデン・ノイ(Deden Noy)The Hook 見どころDIYミュージシャンは数多いるが、そこからこのYouTubeドラムの新星が登場した。彼は2021年初め、文字通りゴミから作った手製のドラムキットでプログレやメタルを正確にカバーし、たちまち時の人となった。プラスチック製のバケツとウォーターボトルから作ったスネアとタムに、金属製の鍋のふたを使ったシンバル。ベースドラムとハイハットのお手製フットベダルも見事な出来だ。
The Backstory 背景インドネシアのスマトラ島南端にあるバトゥ・ランバン村の二児の父親、本名デデン・プラマナは、パンデミック以前は地元の結婚式で演奏していた。そこへコロナウイルスが流行し、彼は今や有名となった寄せ集めドラムキットを組み立てた。本人いわく、費用はたったの7ドル前後。極めつけはシンバルに施したフェイクのロゴだ。著名メーカーPaisteとSabianに似せて「Pasti」「Gajian」と書かれたロゴは、続けて読むとインドネシア語で「何が何でも稼ぐ」という意味になる。
Key Video おすすめ動画ノイのドラムを打つ平均回数は驚くほど多い。演奏する無機質なレンガの部屋が、なおいっそう彼のスキルを際立たせる。メタリカやミューズの曲を叩く姿を見るのも楽しいが、ラッシュ「Tom Sawyer」のカバーは何度も繰り返して見たくなる1曲。ニール・パートの大仰なドラムキットがなくても、非の打ちどころのないプログレが演奏できることを証明している。
“Wow” Moment 感動の瞬間この春、ノイは願ってもないプレゼントを受け取った。中学校からの憧れだった(第一子も彼にちなんで命名)ドリーム・シアターのマイク・ポートノイの尽力で、人生初の本物のドラムキットを手に入れたのだ。「大事にします、これからも頑張ります」。ポートノイとSabianから贈られたシンバルを抱きしめて、ノイはInstagramでポートノイに宛ててこう書いた。