ドリル・ミュージックの牽引役が語る、18歳から25歳になって感じた「変化」とは?

シカゴのスラム街を出てビバリーヒルズへ

ー今の生活の中で、18歳のハーボが見たら一番驚くことは何でしょう?

父親になったことだね。すべてが子供中心で、息子を膝の上に座らせてインタビューに応じなきゃいけないとかね。自分がこんな風になるなんて思いもしなかった――あるいはLAに住んでいることかな。昔はよく曲の中でLAについてラップしたもんだ。「ああそうさ、俺はビバリーヒルズの住人じゃない、贅沢三昧の生活とはまるで無縁」ってね。俺はスラム街にいたから、いくつものトラウマを抱えて、毎日暴力だのくだらないことと関わらなきゃならなかった。今はそういうことはない。ベル・エアに住んで、毎日ビバリーヒルズで暮らしてる。正直、今も慣れるのに苦労してるけどね。



ーベル・エアの住民とは交流していますか?

実は近所の人とはほとんど顔を合わせていないんだ。いつも明け方3~4時にスタジオから家に戻って、そのあとは野暮用を済ませたり、ミーティングに行ったり。いつも動き回っている。家に帰るのは身体を充電するときだけ。本当クレイジーな人生だよ、正直自分の時間もありゃしない。外に出て、近所の街角に立って、警察に絡まれるのにうんざりしたらスタジオに行く、という生活とは180度がらりと変わったみたいだ。

ーお子さんの話が出ましたが、おそらく自分が経験してきたような、子供には経験させたくないことからお子さんを守っていくことでしょう。逆に、自分とは違う環境で育っているお子さんに、自分の生い立ちから学んでほしい教訓はありますか?

世の中の厳しさだね。暴力やネガティブなことに関わらなくてよくなった分、息子たちには世の中の残酷さや暴力を教えてやらなきゃいけない。子供たちが直に経験する必要はないさ。ただ、自分の前に立ちはだかるものを子供たちが理解できるよう、教えてやらないといけない。それには自分で経験して学べと放り出すよりも、どう戦えばいいかを教えてやるべきだろうね。

ー駆け出しのころは明らかにドリルと密着していましたが、自分のスタイルを様々なタイプの作品に変換してきましたね。数あるビートの中で、今目指しているビートは何ですか?

とくに今はインストゥルメンタルにハマっている。たくさんの音が詰まっているようなビートが好きなんだ。とくにこれ、というビートを求めてスタジオに入ることはしない。決まったテーマを念頭にスタジオに入るわけじゃないんだ。たいていは作品から影響を受ける。作品からイメージがわいて、(最終的な)曲のテーマが決まるんだ。「この手のビートじゃなきゃ」とか「こういう曲を作らなきゃ」と言ってスタジオに入ったりはしないんだよ。ひたすら山のようにビートを聴くだけさ。歌詞からインスピレーションを得て、それがとっかかりになる。あとは自然に出てくるんだ。レコーディングのそういうところが好きなんだ。決して無理強いしない。ブースに入って、流れに任せる。

Translated by Akiko Kato

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