食品まつりが語るダンス・ミュージックとやすらぎ感、道の駅とアジフライへの愛情

 
アジフライとイージーリスニング

―「Hoshikuzu Tenboudai」って曲も結構インパクトがあるタイトルだと思うんですけど、それが実在の道の駅というか、パーキングエリア的なところにある展望台だというお話をあるインタビューで読んで、かなり衝撃を受けました。展望台の名前がエモすぎると思って。

食品まつり:そうなんですよ。いいんですよね、名前が。道の駅からちょっと行ったところに山というかちょっとしたハイキングコースがあって、その先に「星屑展望台」っていうのがあって。そのときは昼間だったんで星はぜんぜん見えなかったんですけど、星屑展望台って名前はいいなと思っていろいろ想像して。

―他にも具体的な経験からくるタイトルがあるのかなと。一見すると、「道の駅」や「ギャラリーカフェ」、「フードコート」みたいに、地方都市だったらどこでもありそうなキーワードが並んでいますが、そこに食品さんなりの経験が埋め込まれているのかなって思うんです。タイトルに選ぶ言葉には、実体験が反映されたりしますか。

食品まつり:しますね。今回はほんとうに、行った場所っていう感じです。つくりだす前、去年の前半くらいによく行っていた場所。一番最初の緊急事態宣言になったあとはライブもあまりなくなって、家のまわりをうろうろしていたことも反映されています。フードコート行ったり、あとは……自分はアジフライが好きで。Twitterでもアジフライのことばっかりつぶやいちゃってるんですけど。アジフライに出会ったのも家から自転車で20分くらいのところにあるパーキングエリアで。パーキングエリアに(高速道路からではなく)裏から入れるところがあるんです。「裏からパーキングエリアに入れるんだ」っていうのに感動して、中に入って食べたアジフライもおいしかった。


―食品さんの作品は、いわゆるダンスミュージックやエレクトロニックミュージックの持つ質感とは一線を画する部分があって。でもそこから受ける印象とか雰囲気には親しみやすさを覚えるんです。そういうところは、食品さんの経験と作品との結びつきからうまれているのかなと思います。

食品まつり:やっぱり、楽しいこと、自分がほんとうにいいなと思えることしか……誰でもそうなのかもしれないですけど、無理してなにか違うものになろうということができなくて。これがいいよな、って思ったことをそのままやるというか。実際にやるときには、そこに自分の解釈を加えていくんですけど。自分の欲求に忠実に行きたいというのはあるかもしれないです。

―最近、XLR8Rで公開されたミックスにかなり衝撃を受けて。植松伸夫やゆずが登場するのもおもしろいんですが、チルアウト喫茶店というアーティスト名の「アコースティック・ジャズ」という曲が入っていて。これはなんというか、BGM用のイージーリスニングということでいいんですかね?

食品まつり:完全にそうですね。完全にBGM用のやつで。去年、アジフライ感を自分なりに考えていて、「これってなんなのかな」って考えたら、旅番組とかで流れてそう、みたいな。(笑)「これからアジフライを紹介します!」っていうときに番組のバックで流れてそうなものがヤバいなと思って。一時期はそういうものばっかり聴いていて。今回はそういうテーマ(最近聴いていたもの)のミックスだったので、アジフライ感を入れてみた、っていう。自分のなかではアジフライ感をイメージして選んだんですよね。ああいう旅番組とかで流れている感じの世界観とか、どこどこの道の駅からご紹介します、みたいな情報番組のバックで流れているような謎のギターインストとか。ああいうものがアジフライとかいろんな経験と結びついて、それで選曲にあれが入ってるんです。

―いっしょに入っているゴンチチなんかもイージーリスニング的文脈でも聴けますよね。

食品まつり:そうですよね。(音楽として)おもしろい感じもありつつ、さらっと聴ける。去年はそういう音楽を聴き漁っていました。本当に、いっさいのポジティブとかネガティブとかいう感情を吹き飛ばして、ただほんわかさせられるみたいな。危ないなと思いつつも。あとボサノヴァもヤバいなって。ライトなボサノヴァが最近好きで。ただ「たんたんたたん……」ってのが流れているみたいな。そういうのも今回のアルバム制作に影響受けてます。ギターでああいう癒やし感もいれたいなと。



―最後に、ベタかつお答えしづらい質問かもしれないんですが、今回のアルバムで一番思い入れがあったり、象徴的だなと思える曲ってありますか。

食品まつり:一曲にしぼるのが難しいのですが、中でも「Michi no eki」は楽しさと切なさ、いろんな感情が混じっている感じで。アルバムのなかでは異質な感じではあるんですけど。ちょっとシリアスなところもあって。いろんな感情が入っている。

―なにか今後の目標や予定があれば。

食品まつり:tobira recordsっていう、hakobuneさんていうドローンミュージックをやってる方のレコード屋が兵庫県加西市にあって。同じビルにVoidっていうギャラリーがあるんです。そこで9月から個展をやる予定です。今回の『Yasuragi Land』をイメージした、僕の描いた絵手紙と写真を展示しようかなと。そこに架空の道の駅を実際につくろうかという計画もたてていて。それで完全に今回のアルバムを補完するものにしたい。加西市は兵庫のかなりの山奥のめちゃくちゃ田舎なところで、そこにギャラリーがぽつんとあって。今回のアルバムのイメージにぴったりな個展になるんじゃないかと思います。野菜を売ろうとかオリジナルせんべいをつくろうとか、いろいろアイデアがあるんです。




食品まつり a.k.a foodman
『Yasuragi Land』
CD:2021年7月9日リリース
LP:2021年8月20日リリース
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814

 
 
 
 

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