オリヴィア・ロドリゴの音楽的魅力 伝統と革新が共存するソングライターとしての凄み

オリヴィア・ロドリゴ(Photo by Stefan Kohli)


「deja vu」とビリー・ジョエルの関係

ポップの伝統に則っているという部分も、彼女とテイラーの共通点だ。(カーリー・サイモンの楽曲)「You’re So Vain」の魅力を知り尽くしたかのような彼女のサウンドには、タルムードの学者たちが「申命記」について研究するのと同じ熱量を感じ取ることができる。元カレとビリー・ジョエルを聴いた思い出(曲は「Uptown Girl」)を懐かしみ、彼と今一緒にビリー・ジョエルを聴いているであろう女性に嫉妬する「deja vu」は見事な出来だ。彼女からのラブコールに応え、いずれはビリーが「deja vu」をカバーする日が来るかもしれない。




デビー・ギブソンは80年代に、ビリー・ジョエルこそが最大のインスピレーションだと何度も語っていた。理由は定かではないが、彼はあらゆる世代のティーンポップの若きシンガーソングライターに訴える何かを持っているようだ。ビリー・ジョエルの曲中に出てくる女性のように、オリヴィアは何気なく相手を傷つけ、血が流れる様子を見て微笑んでいるのかもしれない。“彼女のピアノを弾けばいい でも彼女は知らない / あなたにビリー・ジョエルを教えたのが私だってことを”というフレーズは、彼女が隠し持った刃の鋭さを物語っている。

そのリファレンスが完璧だと感じるのは、「Uptown Girl」がヴィンテージ感を意図的に狙った80年代の曲だからだ。ビリー・ジョエルが描こうとしたのは、60年代のソウルやドゥーワップを聴いていた10代の頃に過ごしたロマンティックな夜のムードだった(彼は当時本誌にこう語っている。「パーシー・スレッジの『男が女を愛する時』を知らずに大人になるなんて、僕には考えられない」)。同曲のミュージックビデオで、彼は自身の妻でありモデルのクリスティー・ブリンクリーのピンナップ写真に向かって歌いかける。離婚後、彼は「Uptown Girl」で歌っているのは他の女性だという主張を繰り返しているが、それを鵜呑みにした人はいないはずだ。音楽と思い出に心を揺さぶられるのは、多感なティーンエイジャーだけではないということだ。

満を持して発表されたアルバム『SOUR』は、長くなるであろう彼女のキャリアの始まりに過ぎない。またオリヴィアは、ポップを愛するファンにとって今がエキサイティングな時代である理由を体現する存在でもある。スタイルや従来のカテゴリーにこだわらない彼女の楽曲は、伝統と目新しさがひしめき合いながら互いを刺激している。時代を感じさせるあらゆる要素が新鮮に感じられるのは、オリヴィアが終わった何かに新しい命を吹き込む術を知っているからだろう。つまり、デジャヴは繰り返すということだ。



オリヴィア・ロドリゴ
『SOUR』
発売中
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定価¥3,300(税込)
歌詞・対訳・解説付 / 初回生産限定 / ポスター、フォト・スタンド、フォト・カード、ステッカーなど日本盤限定特典付き


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定価¥2,420(税込)
歌詞・対訳・解説付

Translated by Masaaki Yoshida

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