オリヴィア・ロドリゴの音楽的魅力 伝統と革新が共存するソングライターとしての凄み

オリヴィア・ロドリゴ(Photo by Stefan Kohli)


「drivers license」に込められた普遍性

ディズニーのファンにとっては、オリヴィアは『やりすぎ配信! ビザードバーク』の主演女優として既に馴染み深い存在だ。また『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』で、ディズニーチャンネルの2006年のクラシック作をベースにしたミュージカルの制作に臨む女子高生を演じたことは、より多くの人に知られているに違いない。彼女は「始まりの予感」のようなオールディーズをリメイクする一方で、ロード(“私はまだ動けずにいる 信号が緑に変わっている間も”)やテイラー・スウィフト(“胸が高鳴るような夢の中が自分の居場所だと感じるのかしら”)の影響を露わにした、「All I Want」や「Out of the Old」等のオリジナル曲も書いている。



『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』にまつわる奇妙さは筆舌に尽くし難い(タイトルからして不可解だ)。オリヴィアは同作で共演したジョシュア・バセットと別の女優との三角関係にあることが噂されていたが、2人は劇中でザック・エフロンとヴァネッサ・ハジェンスが演じたカップルに扮しており、現実の恋のもつれを指した架空の曲を歌いつつ、一方で互いのことを歌った現実に基づいた曲を書いていることになる。バセットはまるで、(テイラーの楽曲)「Mr. Perfectly Fine」を実写化したかのような存在だ。彼は女優のサブリナ・カーペンターとの関係が噂されており、「drivers license」に出てくる「ブロンドの女の子」とは彼女のことだと言われている(“彼女はあなたよりずっと年上 / 彼女は私に欠けているものを全部持ってる”– それは同曲において彼女が脆さを露わにする瞬間のように感じられる)。オリヴィアが「drivers license」をリリースした後、ジョシュアは「Lie Lie Lie」という反撃ともとれる曲を発表しており、サブリナは“そういう意味じゃないよね / ブロンドっていうのは単なるライムのはず”という模範的アンサーを含んだ「Skin」を公開した。




一連の流れはまるでボルヘスのフィクション作品のようだ。チョーサーの『カンタベリー物語』では、彼は自身の物語を語ることで巡礼に加わろうとし、自ら考案したキャラクターに自堕落な詩人と揶揄されてしまうが、オリヴィアたちの関係はそのティーンポップ版のようなものだ。つまり、彼女は1380年代から続く慣習に倣っていることになる。ラクエル・ウェルチはあらゆる世紀において「80年代は最高の10年間」だと主張したが、彼女は正しかったということだ。

現在では3人が互いの曲を褒め合うようになっており、ジョシュアは勇敢にも自身のセクシュアリティについて公表した。「僕を攻撃した世間の人々は、僕のことなんか何も知らない」(先ごろ彼が投稿したハリー・スタイルズを賞賛する動画には、次のようなコメントが添えられていた。「これは僕なりのカミングアウトでもあるってこと」)

だがオリヴィアのファンの大半と同様に、筆者がこれらの曲の真の意味を理解したのは、曲そのものにハマってしばらく経ってからだった。彼女がこれほどの成功を収めたのは、リスナーが曲の中に自分自身の姿を見いだしているからだろう。彼女のアイドルであるスウィフトと同様に、オリヴィアはディティールに徹底的にこだわる。元カレと一緒に“『glee/グリー』の再放送を観てる”というラインに、どれほどの人が共感したことだろう(彼女は実際には『glee』を観たことがないと主張しているが、同番組にはビリー・アイリッシュの実兄でコラボレーターのフィネアスが出演しており、ロドリゴのような優れたソングライターがそのことを把握していないとは考えにくい)。

Translated by Masaaki Yoshida

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