多様化と更なる充実が進む、UKブラックミュージックの今

UKラップの多様化と充実の証明

マージナルな存在と言えば、UKラップの世界では女性は依然として少数派。だが、最近は注目のラッパーとして女性の名前が挙がり始めているのは、UKラップの多様化と充実の証明だ。

昨年「Rumors」がヴァイラルし、ヘディ・ワンの全英1位アルバム『エドナ』にも参加したアイヴォリアン・ドールは、女性ドリルMCの先駆者としてさらなる飛躍が期待される存在。

Ivorian Doll - Rumours (Official Music Video)



そして、幼い頃のあだ名はミッシー・エリオットだった(!)という最高のエピソードを持つエニーは、その名に恥じないクールかつスキルフルなフロウで、あらゆる容姿の黒人女性の美しさを称揚する「Peng Black Girl」が白眉。ジョルジャ・スミスが惚れ込み、自ら希望してこの曲のリミックスに飛び乗ったのも無理はない。

ENNY - Peng Black Girls (feat. Amia Brave)



ENNY ft. Jorja Smith - Peng Black Girls Remix | A COLORS SHOW



ポップの世界でも、やはり注目はブラックのニューカマーたちだ。昨年の新人賞をほぼ総なめにしたセレステは、遂にデビューアルバム『Not Your Muse』(全英1位)を上梓。オーセンティックなソウル/R&Bを絶妙にモダナイズしたサウンドと、往年のソウルシンガーのようにブルージーな歌声は、「次のアデル」もしくは「次のエイミー・ワインハウス」として多大な期待を寄せられるのも当然だろう。2010年代のイギリスが生んだ世界的ポップスターはアデル、エド・シーラン、デュア・リパと白人や東欧系だったが、将来的にセレステはその流れを変える存在になるかもしれない。

Celeste - Not Your Muse



そして、アーロ・パークスの『Collapsed in Sunbeams』(全英3位)は、モダンなR&Bサウンドに乗せて10代の抑圧された感情を表現しているという意味では、フランク・オーシャンとビリー・アイリッシュの間にあるどこか。紛れもない傑作だ。

Arlo Parks - Collapsed In Sunbeams



2020年末から2021年3月までをざっと振り返っただけでも、これだけの注目すべき作品とアーティストが揃っている。2010年代後半からの着実な積み重ねを背景に、イギリスのブラックコミュニティからは今後も多様な傑作が生み出されることだろう。

Edited by The Sign Magazine

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